自分が癌になったら子どもにどう伝えたらいいのか?そのヒントをくれる絵本『ママのバレッタ』
がんってとても怖い病気のように感じますよね。自分ががんになったら……なんて考えたくないママたちも多いと思います。
厚生労働省によると、女性は3人に1人ががんにかかる可能性があると言われています。文部科学省もそんな社会背景を踏まえて、小学生からの「がん教育」を本格化させています。
もし、自分ががんになってしまったら、子どもたちに伝えた方がいいのか。どのように伝えたらいいのか。そのヒントをくれる絵本が子育て世代のがん患者コミュニティー「キャンサーペアレンツ」から生まれました。
ママが、がんになったら……
ママががんになり、抗がん剤の影響で、髪の毛が全部抜けてしまった……。
がんになってしまったということはもちろん、外見が変わってしまうということは、ママにとっても子どもにとっても、とてもショックなことですよね。
また、入院して行う治療も多く、治療しているママはもちろん、パパや子どもたちにも大きな困難となります。ママが入院してしまったり、退院後も体調不良により今まで通り動けなかったりすると、がんになる前と同じように家事や育児をこなせないこともあります。
筆者は三女を出産後3か月で手術し、その後すぐがんの告知を受けました。告知後さらに3回の手術と2回の放射線治療を経験しました。手術や放射線治療のあとは体調が安定しなかったり、治療の影響で眠る時間が極端に増えたりして、ほとんど何もできない日もたくさんありました。なんとか乗り越えることはできましたが、家族にとって体力的にも精神的にも大きな負担だったと思います。
子育て世代のがん患者コミュニティーから生まれた絵本『ママのバレッタ』
内閣府の世論調査によると、がんは苦しくてつらい治療をしても「死に至る病気」と考えてしまう人も多いようです。しかし、全がんの平均10年生存率は5割を越え、がんを治療しながら日常生活を送る人も増えています。
『ママのバレッタ』はがんの治療を経験した子育て世代のパパやママが企画から発行まで携わった絵本です。抗がん剤で髪が抜けてしまったママたちの経験をもとに作られたお話であるため、がんになったママたちが子どもに伝えたいことがたくさん盛り込まれています。
「がんの闘病記」というと、手術や抗がん剤の副作用で苦しんでいるところが切り抜かれがちですが、この絵本ではがんになったママと子どもの日常の生活が柔らかなタッチの絵でユーモラスに描かれています。治療中のつらいことを取り上げるのではなく、子どもと過ごす穏やかな日常を通して、ママが前向きに治療に取り組む姿が伝わってきます。
キャンサーペアレンツとは?
「キャンサーベアレンツ」は子育て世代のがん患者のコミュニティー。インターネット上での活動が主ですが、時々オフ会なども行っていて、筆者も参加しています。
主催の西口洋平さんと同じく、周囲に相談できる人や共感してもらえる人がおらず、悩んだときに出会ったのが「キャンサーペアレンツ」でした。
SNS上で悩んでいることを告白したり、他の会員の話を聞いたりすることで、闘病する仲間ができ、心強く思いました。また、その仲間たちがどうやって子どもにがんであることを伝えたのか、パパやママががんであることを子どもたちはどう受け止めたかなど、参考にさせてもらったこともあります。
今、闘病中のママへ。これから闘病するかもしれないママへ。
がんなどの重い病気になったとき、子どもに伝えるかどうか、伝えるとしたらどのように伝えるかというのはママにとってとても重く、大きな課題だと思います。
筆者ががんの告知をされたとき、子どもは5歳、2歳、4か月でした。3人ともまだ理解できないかもしれないと思う反面、誰かから「ママはがんで、死ぬかもしれない病気だ」と聞いて不安になる前にきちんと話しておくべきだとも思いました。
治療を続けていく中で、筆者のがんは生存率が高い反面、治りにくいタイプであることがわかり、子どもたちに伝えることを決めました。
ママの体の中に悪いものがあること、悪いものは他の人にはうつらないこと、毎日薬を飲まないといけないこと、また入院するかもしれないこと、入院しても必ず家に帰ってくることなどを上の子に話しました。
その後、がんで亡くなった方の報道を見ると「ママもがんなんでしょ?」と子どもたちから聞かれるようになりました。そのたびに「ママはがんだけど、長生きするからね」と伝えています。
子どもに「伝えなければよかった」と思った方は0%
キャンサーペアレンツの「がん患者のコミュニケーションに関する実態調査」によると、
子どもに「伝えなければよかった」と思った方は0%であった、という結果がでています。
筆者も伝えてよかったと思っています。しかし、伝え方が合っていたかどうかはまだわからないままです。
『ママのバレッタ』はママが子どもにがんについて伝える最初の一歩になる一冊です。闘病中のママはもちろん、家族などの身近に闘病中の人がいるママ、これからもしかしたら闘病することがあるかもしれないママも一度お子さんと一緒に読んでみてはいかがでしょうか。
一人でも多くのママの助けになることを願っています。
文・kuro81 編集・山内ウェンディ