<行き渋りの記録>小学校へ行けなくなってしまった娘が初めてひとりで立ちあがった日の話【後編まんが】
前回からの続き。
はじめて、少しだけ前を向き始めた娘と、その言葉に飛び上がりそうなほど嬉しかった私。でも、ここでまたぬか喜びしては、明日の朝ダメだったときに娘を責めてしまうと思い、言いたい言葉を飲み込んで「ねー。また明日の朝考えよう」と軽くかわします。娘が前を向いた……! 光が差した瞬間でした。
この小さい背中に、どれだけの不安を詰め込んで毎日を過ごしてきたのでしょう。お母さんが一緒に学校へ来るということが「みんなと違う」ということを誰よりも知っていたのは娘だったはず。でもそこから抜け出すことができない毎日を、どれほどの不安で乗り越えていたのでしょう。
しかし、ここで「絶対に大丈夫だよ」や「ダメだったら帰ってきなよ」など、プラスにもマイナスにもなる言葉を言ってしまえば、せっかくの娘の前向きなイメージを壊してしまう。言いたい言葉を飲み込んで、私は「行く途中にAちゃんと会うんじゃない?」なんて、いたって「普通」を演じます。
玄関をゆっくりと開けて、振り向く娘。しっかり握った肩ベルトを離すことなく、こわばった顔で「行ってきます」と言います。こぼれ落ちそうになる涙を抑えながら、いつも通り「いってらっしゃい!」と笑顔で見送る私。
春以来の玄関での見送り。入学時に「大きくなったな」と感じた娘の後ろ姿は、改めて見るとまだまだ6歳の小さな子どものものでした。
最後まで子どもを信じ続けることの大切さ
その日から、娘はひとりで学校へ行けるようになり、今は毎日楽しそうに通っています。娘の中にどんな心境の変化があったかは詳しく聞いていません。もしかしたら学校で何かあったのかもしれないし、お友達に何か言われたのかもしれません。でも、今までずっと私を手をつないで下を向いて登校していたのが、私に抱きかかえられることで、ひとりで登校する周りのお友達を客観的に見ることができ、なにか思うところがあったのでは……私はそう考えています。
いずれにせよ、「自分で立ちあがる」ことができた今回の件。娘が「ひとりで行く」と自分から言い出すまで待ち続けた日々は、本当に先が見えないくらいに辛い毎日でした。もちろん私のやり方が正しかったとは限りません。もしかしたらもっと他にも最適な方法があったのかもしれません。
けれど、自分の足で乗り越えられた娘を「信じ続ける強さ」を、私自身も教えてもらったような気がします。確実にこの一か月半、私と娘はふたりで向き合って戦うことができた。そう思っています。
余計なことを言わずに、傍で見守る。けれど時として背中を押してあげることも必要。子育ての難しさを痛感した出来事でした。
まだまだ先が長い娘の子育て、これからも一緒にいろいろ成長していきたいと思います。
脚本・渡辺多絵 作画・イチエ