ファンとアーティストの関係からコンビ結成へ。「ケロポンズ」結成19年間に訪れた、妊娠・休業・出産とは
仕事の依頼は1年先まで埋まっている「保育会のカリスマ」と呼ばれるほどの人気ユニット「ケロポンズ」。代表作『エビカニクス』はYouTube動画再生回数3,500万回(2018年5月現在)を超えるほど、子どもから大人まで幅広い世代の心をわし掴みにしています。
2018年で結成19年を迎えるケロポンズですが、19年の間に妊娠・休業・出産などの様々な転機も訪れたといいます。「自分たちがつまらなくなったら、解散しようと決めていた」と語るお二人に、結成から現在までの道のりについて伺いました。
ファンとアーティストの関係だった二人がコンビ結成へ
――1999年に結成したケロポンズですが、お二人の出会いのキッカケを教えてください。
ケロ(増田裕子)さん:もともと私はトラや帽子店という親子向けのバンドを組んでいました。そのとき学生だったポンちゃんが友達とステージをみに来てくれたことがキッカケでした。
ポン(平田明子)さん:当時広島県の大学に通っていたのですが、トラや帽子店のステージを初めて見たとき、雷を打たれるほど感動しました。と言うのもそれまで親子コンサートって子どもを喜ばせるために来るものだと思っていたのですがトラやのコンサートは子どもははしゃいでいるし、パパは踊っているし、ママは椅子から転げ落ちるほど笑っていて、想像していたコンサートとは違い一気にファンになりました。
ケロさん:ファンといってくれるのは、嬉しいですね。その後「広島の子どもたちに見せたい!」と初めて広島でコンサートを行ってくれ、ポンちゃんが保育園や幼稚園などを駆け回って、800人の観客を自力で集めてくれたのです。
――お互いの印象はどうでしたか?
ケロさん:初めてコンサート会場で見かけたときは「あっかわいいお相撲さんがいる」と思いました(笑)。
ポンさん:初めて会ったとき、急に近づいてきて肩をバシバシ叩かれびっくりしました。
ケロさん:当時トラや帽子店のマネージャーをしてくれていた人にポンチャンがすごく似ていたのですよ。にこにこほんわかしていて、ゆるキャラみたいな(笑)。
ポンさん:こらこらさっきから色々失礼ですよ(笑)。
でもトラや帽子店は、参加している子どもだけでなく、ママやパパも全員が自然に笑って楽しんでいたのです。全世代が楽しめる、そんなコンサートを行うバンドに初めて出会いました。すごいひとだなぁという印象でした。
――その後、どのように「ケロポンズ」が結成されたのですか?
ケロさん:大学卒業後にポンちゃんは上京してきて私がソロでパネルシアター(動く貼り絵芝居)のセミナーをする時にポンちゃんに伴奏者として手伝ってもらえるようになりました。トラや帽子店が解散すると決まり、ポンちゃんにこれからは伴奏者ではなく一緒にコンビとしてやらない? と声を掛けたのです。
――ファンだった人とコンビを組むのはどんな気持ちでしたか?
ポンさん:あこがれの人と組むなんて、無理だと思いました。「私にはできないのでお手伝いにしてください」と最初は断りました。
コンビを結成してからも、最初は自信がなくて恥ずかしくて、後ろ向きになっていたのです。でもある日、コンサートをみに来てくれた知人から「恥ずかしいと思ったら、観客も恥ずかしくなるからやめた方がいいよ。」とアドバイスしてもらい、考え直し、それ以来は堂々とするように心掛けました。
ケロさん:前に出るようになってからは、この愛らしいキャラクターですぐに子どもたちの人気者になりました。ポンちゃんは踊りながら息切れしていたので、「ダイエット体操だね」などといって観客を笑わせていました。
――人前に出るのは得意だったのですか?
ポンさん:ものすごく苦手でした。できれば1日中家の中にいて、パンをこねて焼き、お尻をかきながらゴロゴロして、たまに畑仕事をして、という生活がすきなんです(笑)。逆にまっさんは、人前に出るのが好きで得意なのですよ。
ケロさん:ポンちゃんは一見、人前に出るのが苦手なように見えないですよね。なんていうか「エネルギーの塊」みたいな(笑)。でも最初はとにかくおしりが引けていましたね。
結成19年間でたった1回の「ケンカ」
――作詞作曲をするときは、二人で相談されるのですか?
ケロさん:ポンちゃんが作詞をして、私が作曲をすることもあれば逆のパターンもあります。
二人で話しながら「これいいね!」と突如できあがることもあります。ちなみに『エビカニクス』もレストランでちょっとお酒を飲みながら、生まれた曲です(笑)。
――お二人は仲が良いですよね。ケンカをしたことはありますか?
ケロさん:16年前に1回だけあります。それも仕事のことで揉めたとかではなく、信じる・信じないという男女のお付き合いの間で起こるケンカのような感じですよ。
ケンカの最中、普段は穏やかなポンちゃんが身に着けている荷物や上着などをどんどん投げ捨てていって。最終的に裸になってしまうのじゃないかと心配になったほどです(笑)。
ポンさん:感情的になってしまい、最後に持っていたウクレレを振りかぶった瞬間、まっさんに「楽器はやめて!」と言われ笑ってしまったことを覚えています。
「双子の妊娠」がケロポンズの転機へ
――19年間の間に転機はありましたか?
ポンさん:ケロポンズとして、徐々に名前が売れてきた頃、私の妊娠が分かったのです。仕事を続けたい気持ちはあったのですが、双子の妊娠や切迫流産が重なったこともあり、休業もやむを得ませんでした。
ケロさん:「妊娠を計画的にできなかったのか」など批判的なことを言われることもあり、色々な方へ謝罪して回りました。でも「大切な命を授かったのにどうして喜んでもらえないのだろう」と心の中では悔しかったですね。
――その後、ケロポンズは休業したのですか?
ケロさん:ポンちゃんは管理入院で出産後4か月まではほぼ1年間活動を休業し、その間は私ひとりでギタリストに伴奏してもらいながら活動を続けていました。
ポンさん:産後4ヶ月で復帰したのですが、出産時に血栓症になってしまい、心臓と肺を洗うために胸を切っていたので、1年くらいは歌と踊りはかなりハードでした。でもまあ、つらかったですが、過ぎてみれば子ども達も元気に育ち、あの時死なずに一緒に暮らせて、幸せだなと思っています。
居住地を長野県へ移し、シングルマザーとして子育と仕事の両立
――ポンさんは現在、長野県へ居住地を移しているそうですね。
ポンさん:ケロポンズとして13年間活動した頃、今後は仕事もだんだんヒマになるだろうと思っていたので、横浜から長野県へ引っ越しをしました。子どもにとって田舎で育つことは良い影響だろうと考え、私自身が幼少期に長野県で育ったこともあり決断したのです。
ケロさん:でもポンちゃんが長野へ引っ越した途端『エビカニクス』がユーチューブでヒットし、一気に忙しくなってしまいました……。
――長野と東京の往復で、子育てと仕事の両立は大変ではなかったのですか?
ポンさん:仕事で東京へ来たら、数日間家へは帰れないこともあったので、子どもたちには寂しい思いをさせたと思います。でも双子だったの1人ではなかったことや環境に恵まれていたこともあり、色々な人に助けてもらって今があります。
1度だけ、仕事が忙しいのと子どもが学校に行きたがらないのとが重なった時期があり、横浜に戻るべきか悩んだ時期がありました。そのとき、恩師に泣きながら電話したら「あなた子どもたちと相談したの?」と聞かれました。「私が親なのだから、私が決めなきゃいけないの」と答えたら、「何言ってるの? 3人の家族なのだから3人で決めなさい。子どもたちからきっと良い答えが聞けると思うわよ」と言われました。その後、娘たちに相談したら「仕事は大変だと思うけど、長野にいたい」と答え、「子どもたちが長野にいたいなら、このまま頑張ろう」と決断できたのです。
子どもたちにとって「ケロポンズ」二人が母親の存在
――子どもたちはママの仕事のことをどう思っていますか?
ポンさん:子どもたちの友達もケロポンズを知ってくれているので、喜んでくれていると思いますよ。
ケロさん:子どもたちとは普段から交流があるのですが、中学生になったときに「手紙」をもらったのです。
手紙には「母ちゃん(平田さん)がケロちゃんと一緒にやっていることは、とても良いことです。母ちゃんはケロポンズの仕事が向いています。色々と大変だと思いますが、ケロちゃんこれからもよろしくお願いします」と書いてあり、泣けちゃいました。
ポンさん:まっさんには、子どもたちが生まれたときから一緒に子育てしてもらっています。第二の母ですね。
取材中「ポンちゃん、まっさん」と呼び合うお二人からは、19年前のファンとアーティストの関係だった頃と変わらない尊敬と19年間で培ってきた信頼関係が感じられました。子どもたちや周りの人たちに支えられながら、ケロポンズのお二人自身が楽しいと思うことを突き進むことにより、たくさんの子どもたちやママ・パパ・保育士さんたちへ幸せを届けることができたのでしょう。
今後もどんな曲を届けてくれるのか、楽しみにしています。
取材、文・北川麻耶
19年間の歴史の中からケロポンズお二人の選りすぐりの曲が詰められたDVD「ケロポンズといっしょ みんなで楽しむ ケロポンタウン」が2018年5月30日に発売されます。
代表作『エビカニクス』から、ケロポンズのお二人が思い出深いと語る、小島よしおさんとの「こじまじまん」やくまモンの「くまモンタッチ」、ねば~る君の「糸引き納豆」など豪華ゲストが参加した映像が収録。
さらにケロポンズのお二人が病院の待ち時間や電車の中、お風呂の入浴タイムなどに親子で遊んで欲しいという思いから作られた、乳幼児でも楽しめる「あそびうた」14種類も、今回初の同時収録されています。ぜひお手にとってみてくださいね。
ケロポンズといっしょ みんなで楽しむケロポンタウン
品番:COZX-1442~3
仕様:DVD+CD(トールパッケージ)
<ケロポンタウン> たのしい♪うたのコーナー
1.どうぶつトランポリン
2.ハッピーカピバラ
3.こじまじまん ゲスト:小島よしお
4.さがしてみたもん
5.どどちゃちゃフラミンゴ
6.くまモンタッチ ゲスト:くまモン
7.かおずもう
8.うそ?ほんと?
9.糸引き納豆 ゲスト:ねば~る君
10.温泉極楽ポンチ
11.スキー ボード そりすべり ゲスト:すかんぽ
12.かっちょいい!
ゲスト:Q-TARO(電撃チョモランマ隊)
13.キャプテンカールボッサ ゲスト:福田りゅうぞう
14.地球とおどろう
15.おはようSUN!
16.エビカニクス
※CDに収録のエビカニクスはキッズバージョンを収録しています。
※付属のCDには上記映像作品の音源のみが収録されます。<ケロポンズとピーナッツバターくんのあそびROOM>
かんたん♪ミニあそびコーナー
1.石ころどっち?
2.ひこうきーん!
3.なりきりキャッチ
4.せーのでフー!
5.てんぽこちれちれ
6.だいこんあらって
7.おっこちない
8.オープンクローズ
9.ピーナッツゲーム
10.どこでさわったか
11.ジェスチャーゲーム
12.なんていってるかな?
13.えかきうた「いか」
14.えかきうた「ねずみ」