機能満載の子ども用バッグ「デコレート」 。東日本大震災で変わった作り手の想いとは?
昨今、デザインや色、メーカーなど選びきれないくらい種類が豊富なランドセル。
「人気のアイテムは年長の夏休み前に申し込まないとゲットできない」という情報をママ友から聞いて以来、未就学児のいる筆者は戦々恐々していました。
その矢先、とある展示会でこんな商品を発見しました。
「デコレート」という、子ども用のバッグです。
『デコレートは、ファッションアイテムの一つとしてご提供させていただいているリュックですが、ランドセル代わりにデコレートを背負って学校に通っているお子さんもたくさんいらっしゃいます』
と話すのは、デコレートのメーカーである株式会社ナビリティ代表の飯田さん。詳しくお話を伺ってみました。
デコレートのコンセプトは「子どもたちをもっと自由に、子どもたちといつも一緒に」
――キッズバッグ「デコレート」はどんなコンセプトで作られているのですか?
『デコレートはファッションアイテムなので、その日の服装や気分で選ぶことができます。
子どもたちをもっと自由に、子どもたちといつも一緒に。その感覚を子どもたちの背中にも持っていきたいというのが、デコレートのコンセプトです』
通気性、レインカバー、ファスナー……子どものために付けた機能が満載
デコレートがどのようなキッズバッグか、機能の一部をご紹介します。
『背中が当たる部分にはやわらかいメッシュパネルを使っていて蒸れにくい作りになっています。子どもは驚くほど汗をかくので、通気性はとても大事です』
『デコレートにはレインカバーを内蔵しています。カバーを別にしておくと失くしてしまいがちなので、本体に縫い付けました。使わないときは収納できて、子どもでも簡単に装着できます』
『リュックの両サイドにはファスナーを取り付けてあります。中身が少ない時には閉めて小さくでき、荷物が多いときには容量をアップすることができます。A4フラットサイズのファイルも入るので、容量としてはかなり大きめです』
『時間割を入れられるクリアポケットもついています』
――いろいろ工夫が施されているので、ランドセルの代わりにもなりそうです。実際にランドセル代わりに利用している人はいるのでしょうか?
『よく「ランドセルですか?」とお問い合わせをいただくのですが、我々の認識では、これはランドセルではないんです。
ランドセルというのは、革を使い、芯を入れ、金具を使って職人たちが作るんですね。パーツの数でいっても250パーツくらいあるんですよ。それに比べてデコレートは、85パーツなんです。パーツの点数でいっても約3分の1。革・芯・金具で作られているランドセルと、布・糸・プラスティックで作られているデコレートを直接比較をすると、強度としてはやはり勝てない。だからあくまでもファッションアイテムなんです。
しかしランドセルが指定でない学校では、デコレートを背負って通われているというお客さまもたくさんいらっしゃいます。あとは塾に行くときなどにも活用されているようです』
修理の依頼は、楽しい瞬間。その理由は……
――商品を通じて、子どもたちとの繋がりを感じることはありますか?
『年間に数件、修理の依頼が来ます。それは僕らからすると楽しい瞬間でもあるんです。
理由は、届いたリュックを見て、どんな風に使っているかがわかるから。おもしろいぐらいに人によってばらばらなんです。ベルトの形がねじれていたり、ショルダーをものすごく短くして使っている子がいたり(笑)。
中から出てくるものも楽しくてしょうがないんです。ものすごい確率で出てくるのがどんぐり! あと、キレイな石。ほかには、干からびた虫や葉っぱとかね。大人からすると捨ててもいいものに思えても、子どもがそれにどういう思いを持っているかわからないので、入っていたものは全てお返ししています。
子どもたちがどんな風に使っているかが見えますし、「直してでも使いたい」と思ってもらえていると感じるので、とても嬉しい瞬間です』
東日本大震災の経験を通してできた、ブランドの目標
――子どもが背負うことを考えて作り込まれているので、子ども用の避難バッグにも活用できそうですね。
『避難バッグとしての展開は、ブランドとしての目標でもあります。
実はお恥ずかしい話ですが、以前の僕はボランティアに興味がなく、どこか他人事のような感覚があったんです。
でも東日本大震災が起きたとき、僕の中で大きく意識が変わりました。「自分にも、なにかできることがあるんじゃないかな」と思い、300個のデコレートを持って早い段階で被災地に向かい、避難所の子どもたちに配ったんです。当然、最初は「何者なんだ」と思われたんですが、カタログと名刺を渡して、「子どもたちのためにこういう物を持ってきました」と説明すると、受け取ってもらうことができました。その後何度も東北を往復しました。その経験を経て、避難グッズとしてのラインナップも作りたいという気持ちが芽生えました』
――その避難グッズとしてのデコレート、商品化に向けて今どのような取り組みをされていますか?
『試作品を作ったことがあります。素材的に燃えにくいもの、溶けにくいもの、光る素材、浮くものとかね。
ただそれに対して出てくる、原価というものが……(笑)。いまだ試行錯誤している段階です。しかしうちの商品で、子どもたちを守ってあげることができたらいいなと考えています。
何かあったときに「これを背負っていきなさい」と言えるリュックを作れる、そんなブランドになることが夢です』
子どもたちが手にするものを作っている方の想いというものは、なかなか目にしたり耳にしたりする機会はありません。飯田さんのお話のなかには、商品へのこだわりとともに、子どもたちへの想いがありました。
株式会社ナビリティは現在も、東北、熊本に対しての義援金活動を続けていらっしゃるそうです。そのような活動を続けながら、子どもたちが自由に、そして一緒にという思いで寄り添うデコレート。筆者は娘が背負える年齢になったら、持たせたいなと思います。
文・鈴木じゅん子 編集・しらたまよ