薬局は「お薬交換所」じゃない!あのフリーペーパー制作のアイセイ薬局に聞く《薬局のはなし》
どうですか、このインパクト抜群の表紙!
「頭痛」「夏バテ」「肥満症」……思わず「わかる~!」と目が吸い寄せられてしまうデザインに、誰でも一度は気になる症状。実はこれ、とある薬局が制作・配布しているフリーペーパーなんです。
斬新な表紙デザインが各所で話題のフリーペーパー『ヘルス・グラフィックマガジン』。制作・配布しているのは、全国展開する調剤薬局の「アイセイ薬局」です。
「ヘルス・グラフィックマガジン」ってどんな雑誌? 薬局がフリーペーパーを配布しているのはどうして? 知っているようで知らない「調剤薬局」とのつきあいとは?
アイセイ薬局本社にお邪魔して、気になるお話をたっぷりうかがってきました!
斬新なデザインが話題の『ヘルス・グラフィックマガジン』って?
今回お話をうかがったのは、『ヘルス・グラフィックマガジン』編集長の門田伊三男さんと、広報担当の霜 涼さん。霜さんは5歳の娘さんがいるママだそう!
――インパクトのあるビジュアルが注目されている『ヘルス・グラフィックマガジン』ですが、毎号、身近な症状にフォーカスし、わかりやすいデザインで紹介しています。いったいなぜ、このような雑誌になったのでしょうか。
門田編集長:いま、ネット上にはさまざまな医療情報が散らばっていますが、玉石混交でどれが信頼できるものなのかが分からない。ならば保健医療に携わる薬局の立場として、ちゃんと信頼性が高くて、かつ一般の皆さまにも興味を持って楽しんでもらえるような情報を提供をしようと思いました。
しかし、ドクターや専門家が発信する情報は、どうしても難解でとっつきにくい。興味のない方でも、目に留まったら見過ごせないようなものを作ろうと思ったんです。じゃあどうしたらいいのかと考えて……。たとえば絵本って、難しい言葉が分からない子どもでも楽しむことができますよね。そういうふうに、情報を我々の方で咀嚼して視覚的に伝えていこうと、「デザインで伝える」というコンセプトが決まりました。
分かりやすく伝えるために、余計な部分をギリギリまで削ぎ落としているので、元となる医療情報にはとても気を遣っています。診療ガイドラインに携わっている教授の方や、代替療法に関の第一人者などをピックアップして取材しているので、医療情報の精度・鮮度は、かなりレベルが高いのではと自負しています。
制作する我々自身も、毎号掲げるテーマについてゼロから学び、素人目線で気になることをどんどん取材していくので、読者が「知りたい」と思うことを伝えられていると思います。
薬局がフリーペーパーを配布しているワケとは?
――そもそも、なぜ薬局がフリーペーパーを制作・配布しているのでしょうか。
門田編集長:はじまりは、「薬局の利用者さまにとって、“医療情報”って分かりにくい、とっつきにくいものなんじゃないか」と思ったことです。
薬局を利用される一般の利用者さまは、病気や健康について専門的に学んできたわけではありません。学校で保健体育の授業はあっても、「三大疾病」について、あるいは予防医療について、あまり詳しくは学んでいないと思うんですね。
一方で、薬局がそういった患者さまからどういうふうに思われているか。薬局はただの「お薬交換所」と思われがちです。お医者さんが診察してくれて処方箋を出してもらったら、あとは近くの薬局にスルッと行っておしまい。調剤薬局のサービスや存在意義みたいなものが、なかなか一般の消費者レベルでは伝わっていないんですよ。もっと消費者とのつながりが欲しい、医療制度のほうを見るのではなくて、患者さまの方を向いた活動がしたいと思ったんです。
――たしかに、薬局って本当はどういうところなのか、どうやって使えばいいのか、分からない人も多いと思います。なんのためにあるんだろうと。
門田編集長:薬には期待される主作用と、あまり出てほしくない副作用というものがありますが、飲む人のコンディションや、併用している薬や食物があることで副作用のリスクが上がったりすることがあります。しかし「薬にはリスクがある」ということは見過ごされがちです。知らないうちに飲み合わせがよくないものを飲んでいたり、同じ効果の薬を二重に飲んでいたりといったこともよくあるんですね。
たとえば、お父さんが喘息の薬を飲んでいるとします。その喘息の薬は喫煙環境だと効果が下がるので、もしお父さんが喫煙者だった場合、量を増やして処方しないと効果が出ません。逆に、そのお父さんが禁煙を始めたときには、それを薬局に申告しないと、薬の量が多すぎて中毒領域に入ってしまう……というようなことがあるんです。あるいは、風邪薬として飲んだものが、普段かゆみ止めの薬として処方されていたものと主成分が同じだったりする。
薬の扱いって、実はセンシティブなんです。だから最近では薬局も「かかりつけ薬剤師」という制度をおすすめしています。いろいろな薬を複数の薬剤師に管理させるよりも、まとめて専任の薬剤師ひとりに管理させるほうが、リスクが減りますよね。
ママ目線で気になる『ヘルス・グラフィックマガジン』特集号は?
また、現在5歳の娘さんがいる広報・霜さんによれば、「かかりつけ薬剤師」は、子育て中のママさんにも安心な制度だそう。
広報・霜さん(以下霜さん):子育て中のママさんは、お子さんが飲まれる薬を非常に気にされる方が多いですね。私も娘がいて、自分が飲む薬はそれほど気にならなくても、やはり子どもが飲む物は心配になるので、かかりつけ薬剤師に管理していただけるとありがたいなと思いますね。
ここで、一児のママである霜さんに、ママ目線で気になった『ヘルス・グラフィックマガジン』の特集をうかがってみました。
――小さなお子さんがいらっしゃるとのことですが、子育て中のママにぜひ読んでほしい号、ママたちから反響があった号はありますか?
霜さん:お子さんのアトピーや乾燥肌に悩まれるご家庭は少なくないかと思いますが、私の娘も肌の乾燥がひどく、「アトピー性皮膚炎」の号などは非常に参考になりました。アトピーや乾燥肌の薬には、ステロイドが入ったものもありますよね。「ステロイド」と聞くと、怖いものだと思ってしまいがちですが、この号の「ステロイドの真実」というページで誤解を解いてもらえて、それ以降お医者さんに処方していただいた薬を安心して使えるようになりました。アンケートでも、「子どもが乾燥肌」「孫がアトピーで……」という方々からの声が多数寄せられていました。
門田編集長:「痛風」の号も「うちの夫、最近太ってきたし、尿酸値も高くなってきたし、危ないんじゃないの?」と手に取った奥さまが、「自分が読んだ後、夫にも渡して読ませました」というリアクションが多かったですね。あとはやはり頭痛や腰痛、肩こりなど、多くの人が不定愁訴として感じやすいものは反響が大きいようです。
霜さん:1月の「痛風」号に続き、3月末に「生理痛」号、4月に「じんましん」号を発行しました。「生理痛」号では、生理周期を4つの期に分けて、それぞれの期に合わせたセルフケアの方法をアドバイスしています、また、お子さまの蕁麻疹にお悩みの方もいらっしゃると思いますので、これらの号も、ぜひママさんに読んでいただきたい内容ですね。
身近な症状をフックに、明快なビジュアルで薬局利用者と健康をつなぐ『ヘルス・グラフィックマガジン』。その雑誌を作っていたのは、消費者目線の調剤薬局、アイセイ薬局でした。薬局を見る目がちょっと変わる、そんなお話をうかがうことができました。
「この症状、気になってたんだよね」という人も、「この表紙のデザインが気になる!」という人も、ぜひアイセイ薬局に足を運んで、気に入った一冊を手にしてみてくださいね。近くに店舗がない!という方は、アイセイ薬局のホームページよりpdfのダウンロードもできますよ。
アイセイ薬局 https://www.aisei.co.jp/
文・伊東杏奈