小学1年生、学校に行きたがらない娘のピンチを救った効果抜群な「薬」とは?
筆者の娘は小学校1年生です。学校初日、筆者との別れ際に言った娘の一言。
「ママ、お腹が痛い」
海外に住む筆者の娘が通うのは土曜日だけの補習校です。初日は入学式後に早速授業が始まります。入学式が終わり、保護者が子どもを残して教室から出て行き始めたとき、娘はお腹が痛くなったようです。
娘の表情を見ると、お腹が痛いというより不安そうな顔、どうやら本当の病気ではなさそうです。しっかり筆者の手を握って離そうとしません。
ママが困り果てたとき、助けを求めた意外な人とは?
病気なら家に連れて帰るしかないけれど、娘は親が教室から出て行ってしまう不安でお腹が痛いと言っている様子。一体どうしたらいいだろうと、困った筆者は教室にいる担任の先生を見ました。
先生はすでに、クラスの子どもたちに囲まれて忙しそうです。とても娘のフォローができそうな様子ではありません。
他の保護者の方たちはどんどん教室からいなくなっています。
娘を励ますつもりで言葉をかけても、
「お腹が痛い」
「ママと一緒にいたい」
を繰り返すばかり。
他に助けてくれそうな人は、誰かいないか。困り果てた筆者でしたが、学校内に1人、頼れそうな人がいることを思いつきました。
「絶対すぐに戻って来るから。ちょっとだけ、待っていて」
と娘に言い残し、筆者は事務室に急ぎました。
誰でも作れる「薬」は、不安がっている娘へのおまじない
「お忙しいところすみません。ここに常備薬ありませんか」
筆者は事務の方に頼ろうと思ったのでした。その方は保護者にもよく気配りしてくれる女性で、筆者が上の学年の息子が通うクラス役員をしていたときもよく助けてくれました。
事務員の女性は、「常備薬は事務室には置いていないんですよね。どうかしたのですか」
事務室で整腸剤であるビオフェルミンでも分けてもらえれば、薬としてではなく、娘へのおまじないとなって腹痛に効くのではないかと考えた筆者。頼みの綱が切れた、と思いましたが、とりあえず事情だけ事務員の女性に説明しました。
「子どもは病気というわけではなくて、ただ子どもの不安な気持ちを和らげたいだけなんです。事務の仕事と全く関係ない個人の相談事ですみません」
そのまま教室に戻ろうとした筆者でしたが、事務の女性は
「そういうことなら、これはどうでしょうかね」
給湯室に筆者を連れて行きました。そしてカップに白湯を入れ、少しだけ砂糖を混ぜました。
「薬を溶かしてもらったって言って、娘さんにあげてみたらどうですか。あまり味がしないかもしれないけれど、ちょっと甘い子ども用の薬が溶いてあるよって感じで伝えてみたらいいかもしれないですよ」
筆者はカップを受け取ると、急いで娘が待つ教室に戻りました。
効果抜群の「薬」から人の優しさや温かさを実感
この日、娘は無事に初日の学校を終えて家に帰って来ました。
「ママ、今日1年生の教科書もらったよ。こんなにたくさん!」
帰って来るなり新しい教科書を部屋に広げ始める娘に
「お腹痛かったのは治った?」
と筆者が聞いてみたところ、ハッと娘の表情が一瞬変わりました。すでにお腹が痛かったことも忘れていたようでした。
教室にいた他の人たちは筆者と娘のやりとりに気がつかなかったのでは? と思えるくらい些細な出来事でしたが、筆者は本当に助けられました。
いつも元気に楽しく学校生活を送れるのが一番いいことですが、うまくいかないときもあるからこそ、助けてくれる人の優しさがわかるように思いました。子育てに苦労しているときほど、人の温かさを感じられるかもしれませんね。
娘の学校生活は始まったばかり。筆者自身にも励ましの「薬」が効いているような気がしました。
文・野口由美子 編集・横内みか イラスト・よしはな