「夫が医者なんだけど……」とママ友から打ち明けられたらどうする?
こんにちは、斗比主閲子です。
「夫が医者なんだけど……」とママ友から打ち明けられたらどうしますか? 私は親しくしているママ友から先日打ち明けられました。
夫が医者だという妻は全国に約16万人
日本の医師数は全国で約30万人です。そのうち男性医師数は約25万人。男性医師の生涯未婚率は三分の一ぐらいですから、世の中には約16万人の夫を医師に持つ女性がいるということになります。(離婚をすることもあるでしょうから、元夫が医師だったという人もいるでしょうけどね。)
成人男性が5000万人ですから、そのうちの25万人というと200人に1人ということになります。日本の弁護士数は3万人ですから、それに比べれば医師の数は多いものの、夫が医師というのが希少であるのは確かでしょう。
なお、夫が社長の方が稀ではないかという議論もあるかもしれませんが、日本の企業数は430万社ぐらいですから、女性社長がいたり、重複はあったりしても、夫が医師である妻より、夫が社長である妻の方が確実に多いはずです。
ちなみに、夫がパイロットがどうかと言えば、これは本当に希少です。日本の民間航空機のパイロットは1万人にも満たないですからね。しかもパイロットは高齢化が進んでいるということもあり、結婚適齢期の男性パイロットと結婚するのはなかなか難しいでしょう。
選民意識か?
話が脱線しました。
では、自ら「夫が医者なんだけど……」と言ってきた私のママ友は、どういった意図があったのでしょうか。数少ない自分の立場を自慢するために私に打ち合けてきたのでしょうか。選民であることを誇示したかったのでしょうか。
そうではありません。この発言は、自分の置かれた立場の特殊さを語れる人間が少なく、苦しんでいた末の告白だったのです。
彼女とは以前に子どもの勉強について話をしていました。どこの塾に通っているとか、どんな教材がいいとか、どこの学校がいいとか、そういう情報を共有する、よくある井戸端会議です。
子どもの受験の話や英語教育などこちらからも色々話しているうちに、彼女としては私を同志と思ったようです。「夫が医者なんだけど……」に続いた言葉は「子どもにどういう教育をするべきか、夫や義理の両親からプレッシャーがあるんだけど、これって普通のことかな?」というものでした。
子どもの教育水準は親の所得層や教育階層による影響が出る
子どもの教育水準が親の所得層や教育階層によって差が出るというのはよく知られた話です。先進国のどこの国でも見られる傾向ですし、新興国は下手をすると先進国以上に差がついている。日本も例外ではなく、親が高所得・高学歴であればあるほど、子どもの教育水準というのは高くなる傾向があります。
私の住んでいる地域では校区の関係から同じ学校に通ってはいるものの、親の所得差は確実にあります。そして、子どもの教育差もちゃんとあります。言葉は悪いですが、意識の高い親を持つ子どもは色々な習い事をしていたり、義務教育の過程について早めに自宅や塾で終わらせています。
子どもの教育実態についてはアンタッチャブル
しかし、この実態については親同士の会話の中ではアンタッチャブルとなっています。PTAの集まりなどちょっと人数が多いところで、子どもの受験話は簡単には切り出せない。最近は親の意識も高まり、英語教育をどうするかというのは話題にしやすくなりましたけどね。
子どもの教育についてあまり多くを語れない理由は、それが親の所得や教育水準にリンクしてしまうことをみんな薄々気付いているからです。習い事が一つか二つだったら1~2万円です。増えれば増えるほどお金はかかる。逆に言えば、多く習い事をしている家はそれだけ家計に余裕があるということです。(節約をしてその分を教育費にかける家もあるでしょうけどね。)
ママ友とは、子どもが同じ園・学校に通っているというだけの関係性です。それが唯一にして最大の共通点で、非常に細い繋がりでしかありません。ところが、子どもの教育格差から派生して、親の所得や教育水準に違いがあることが判明すると、共通点より違う点の存在がクローズアップされてしまいます。それまでの関係にヒビが生じてしまう可能性がある。
こういうことを懸念して、彼女は自分の夫が医者であり、子どもの教育に熱心であることを語りにくかったわけです。
おわりに
私自身は公立の小学校を卒業しています。子どもの頃に親から他の家庭と比べて多額の教育費用を出してもらったことはありません。親自身は私がどのような友達と付き合うかについて口出ししたことはありませんし、私が友達になった子どもの親とは積極的に仲良くなろうとしました。
大学は旧帝大に進みました。勉強が好きだったので自然な流れでした。子どもにも勉強の面白さを伝えようと思い、日々色々なことを面白おかしく一緒に学んでいます。私の親と同様に、子どもがどんな友達を作ろうが特に介入することはありません。ただ、子どもたちが遊んでいるのを外から眺めていると、子どもの中での学習状況に差があることは分かりました。特に語彙の量に大きな差があった。
「夫が医者なんだけど……」とママ友から打ち明けられて、子どもの教育差と親の中での所得差・教育差を改めて意識させられました。
なお、自分の家の事情を語った後の彼女の顔は清々しいものでした。
文・斗比主閲子