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人口増加ナンバー1!福岡市が掲げる子育て支援策とは?【福岡市・高島宗一郎市長 第1回】

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人口増加数と人口増加率、市税収入の伸び率など、数々のナンバー1を誇る福岡県福岡市。人口減少が進む日本で、なぜ福岡市には多くの人が集まるのでしょうか。子育て世代が集まると保育園の待機児童問題なども出てきます。子育て支援策に力を入れている福岡市の高島宗一郎市長にお話を伺いました。
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保育園の待機児童問題と保育士不足をどう解消?

――初当選された2010年、歴代最年少の市長として注目されました。その後、2014年、2018年、2022年と4期連続当選。初当選から12年たった今、福岡市はどのように変化しましたか?

高島宗一郎市長(以下、高島市長):たくさんのことが変わりました。大きかったのは人口の増加ですね。人口増加数と人口増加率は、政令指定都市の中でナンバー1。市税収入の伸び率も政令指定都市でナンバー1となり、2013年度から2019年度には7年連続で過去最高を更新しています。「自分の住んでいる街がナンバー1」という事実は、福岡市民のみなさんにとって誇りになったのではないかと思います。天神や博多などの都心部ではビルの建替えが進み、目に見える変化が起きていますが、何よりも街の空気、雰囲気が大きく変わったのを実感しています。

――人口が増えると子どもの数も増えますよね。保育園の待機児童問題はいかがですか?

高島市長:福岡市では、毎年約1万3,000人の子どもが生まれています。就任当時は、福岡市でも保育所定員数の不足などが大きく注目されていました。

そのため、市長就任後、それまでの約4倍の予算をつけ、保育所整備のスピードを高め、約18,000人分の定員を増やしました。

その結果、福岡市の待機児童はほぼ解消し、全体で見るとある程度需要と供給のバランスが取れる状態にすることができましたが、地域ごとのニーズの偏りの解消など、きめ細かな対応にも力を入れているところです。

――保育園の整備にはお金がかかりますが、財源はどのように確保したのでしょうか?

高島市長:福岡市の財源で大きな割合を占めるのが固定資産税で、市税収入全体の3分の1を占めています。ビルやマンションの建設が進む福岡市では地価上昇率も大都市の中では最も高く、固定資産税が年々増えてきています。このような都市の成長によって得られた税収という果実を、子育て支援などに回しているのです。

こどもの医療費がひと月上限500円。「ふくおか安心ワンコイン」

――子育て世代から「ここを変えてくれてよかった」という声はありますか。

高島市長:子ども医療費の改革については多くの市民の方に喜んでいただいています。子どもはよく風邪をひくし、きょうだいがいたら家庭内で風邪がうつるなどして、それぞれの子どもを、症状に合わせて病院に連れて行かなければなりません。そうすると医療費はけっこうかかりますよね。

そこで、通院医療費の自己負担額をひと月最大で500円(1医療機関あたり)までとする「ふくおか安心ワンコイン」を実施しています(3歳未満は無料)。2021年に3歳から15歳を対象にスタートしたこの制度ですが、2023年度からは、18歳まで対象を広げることにしました。

――高校生まで対象が広がるということですね。「ふくおか安心ワンコイン」については、ママスタ編集部にも「こどもがよく体調を崩し、病院にはちょこちょこお世話になるので、ワンコインでとても助かっている。高島市長にお礼を伝えてほしい」とのメッセージが届いています。

高島市長:市民のみなさんに喜んでいただけているようで、私もとてもうれしいです。ありがとうございます。

――子育て政策として、そのほか新しい取り組みはありますか?

高島市長:もちろんです。今ご紹介した「ふくおか安心ワンコイン」の対象年齢の拡大に加えて、2023年度は子育て支援をさらに充実させます。代表的なものですと、第2子以降の保育料の無償化や、0~2歳の子どもを育てる世帯に毎月おむつをお届けする「おむつと安心定期便」などの新しい取組みがあります。

――第2子以降の保育料無償化は、働くママ、パパにはとてもありがたい取組みですね。「おむつと安心定期便」について、もう少し詳しく教えてもらえますか。

高島市長:こどもプラザなどの施設や、産後ヘルパーのような子育て支援サービスを利用すると、おむつと交換できる電子スタンプが、月に1回もらえる仕組みです。スタンプ取得時に、専門スタッフが子育ての相談に対応しますので、必要な支援につなげていくことが可能です。つまり、第三者による見守りによって、必要な家庭にいち早くサポートを届けることが目的なのです。その結果、虐待防止などにもつながる、まさに、子どもの命を守る取組みだと考えています。だから、「おむつと安心定期便」という名前なんですよ。おむつ以外にもおしりふき、ミルクなどの子育てに必要な商品を選ぶこともできます。

――保育園や幼稚園などへのサポートも子育て支援の重要なポイントだと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

高島市長:福岡市では市内の保育園や幼稚園に対して、市独自に運営費用の上乗せ補助を行っています。また、保育士さんや幼稚園の先生に対し、奨学金の返済支援(奨学金の半額、一人最大180万円を市が補助)や、家賃補助も行っています。ちなみに、家賃補助は2017年にスタートしたのですが、当時、政令市としては初の取組みでした。こうした支援を継続して行っていますので、是非積極活用いただければと思っています。

ママたちの再就職を福岡市があっせん

――子育てに関する支援はとても充実している印象ですが、育児中のママたちの就職支援も行っているそうですね。

高島市長:子育てのために仕事を離れると、なかなか再就職がしにくいという実態があります。そこで、キャリアコンサルタントによる就職相談や、ハローワークと連携し、再就職を目指す女性を対象にしたセミナーを実施するなど、働きたい方が自分の活躍できる場所を見つけられるよう、全力で応援しています。すぐにでも働きたい方、働けるかどうか不安に感じている方など、それぞれの状況にあったサポートを行いますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

――就職といえば、福岡市では都心部の再開発促進事業「天神ビッグバン」が進み、多くの企業が集積していますね。

高島市長:天神地区の更新期を迎えたビルの建替えを誘導しています。あわせて、地下鉄七隈線の延伸、地下通路の整備なども進め、街が大きく生まれ変わります。ただ建物が新しくなるだけではなく、耐震性やセキュリティの高いビルに生まれ変わることで、働く人、訪れる人が安全、安心に過ごせる街となるのです。優れた環境の街には、たくさんの企業が集まってくれるはずです。2023年にはラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」もオープンしますし、世界からの注目度がさらに高まると期待しています。

――企業が集まり雇用先が増えると、ママは助かりますね。

高島市長:新しい企業が進出してくることで、働く場所が増えることはもちろんですが、雇用条件が良くなることも期待されます。つまり、新しく進出した企業が良い条件で人材を募集すると、まわりの企業も刺激を受けますよね。人材獲得競争が起きることで、ママたちを含め、働く人にとってよりよい労働環境となっていくはずです。

【第2回】へ続く。

取材、文・長瀬由利子 編集・荻野実紀子 イラスト・マメ美

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