<外資系企業の働き方>勤務地を選ばない働き方は、社員、企業側ともにメリット大!【ドーモ 川崎友和さん・第5回】
コロナ禍になり、家で仕事ができるようになった会社もたくさんあります。そんななかで、以前から「勤務地を選ばない働き方」を行っている外資企業が注目を集めています。外資系企業の日本法人ドーモ株式会社プレジデント ジャパンカントリーマネージャーの川崎友和さんに詳しくお話を伺ってみました。
「会社にきて働く」という概念を一度取り外してみる
――ドーモ株式会社では、「勤務地を選ばない働き方」を導入しているそうですね。
川崎友和さん(以下、川崎さん):外資系ではもともと、「Distributed=分散」という考え方があります。これは「勤務地を選ばない働き方」のことをいいます。アメリカは国土が広いので、同じ会社の従業員であっても実際はみんな住んでいる地域がバラバラだったりするんですよ。タイムゾーンも違うし、働く場所も違うことを前提にビジネスモデルが成り立っています。
――日本の企業でも在宅勤務を取り入れるところが増えてきた気がします。
川崎さん:日本の企業もコロナ禍で在宅勤務を取り入れるところが増えてきましたね。私どもの会社はクラウトベースで仕事ができる環境があるため、新型コロナウイルスの影響はほとんどなかったんです。オフィスがなくてもどこでも働けるというのは、通勤時間がかからない、自宅から遠い会社でも働けるなどのメリットがあります。同時に企業側からしても、広いオフィススペースなどの固定費がかからない、社員の交通費がいらない、いろんな場所から優秀な社員を集められるというメリットがあります。
毎日会社に出社することを前提に人を雇うと、「オフィスに通える人」という条件がついた人しか雇えなくなってしまう。せっかく優秀な人がいても、地方在住だから雇えないとなったらもったいないですよね。日本の場合、仕事はオフィスでやるもの、ビジネスの中心を東京っていう概念を持った方も多いかと思いますが、外資系においてその概念はありません。
雑談から新しいアイデアが生まれることもある
――イーロン・マスク氏がX(旧Twitter)社員に「本社に出社せよ」と言っているそうですが、逆に出社しないデメリットはありますか?
川崎さん:新型コロナウイルスの影響で完全に在宅勤務となり、オペレーション自体はある程度問題なくまわせている会社も多いと思います。しかし会社によっては、社員同士が顔を合わせることを重要視しているところもあります。雑談や誰かのちょっとしたアイデアから企画が始まり、収益をあげてきた会社にとっては、やはりリアルに人が集うことは重要になってくるでしょうね。
もちろん在宅勤務でも、ミーテイングの時間を決めてアイデア出しはできます。だけどアイデアって、“仕事の余白時間”で生み出されることも多いんですよね。「今、いいアイデアが浮かんだ」と思っても、オフィスにいるときのように誰かにアイデアをシェアできない。「いいアイデアが浮かんだから、みんなZoomに入ってください」と声をかけようにも、「みんなの時間を取るのは申し訳ないかな……」と考えてしまうこともあると思います。
――何か新しいことに挑戦するときは、完全リモートよりも出社して顔を合わせたほうがいい、ということですね。
川崎さん:アイデアを出して何かをつくっていかなきゃいけない。そういうミッションを帯びている人であればあるほど、フェイスtoフェイスのコミュニケーションの機会を作っていく必要があるのだと思います。
社員一人ひとりが情報開示、共有を意識することが大切
――社員それぞれが別の場所で働く場合のデメリットは、どのように解決しているのでしょうか?
川崎さん:基本的に可能な限り情報を開示していくことが大事だと考えています。たとえば重要な情報を上層部だけにとどめておくのではなく、できる限り開示する。同時に、社員一人一人も自分が何をやっているのかを他の社員に開示する。それぞれが可能な限り開示し、情報を共有することが大事です。
物理的な距離が離れれば離れるほど、繋がりは希薄化していきます。この繋がりが途切れないためにも、しっかりと情報提供、共有をすることが必要だと考えます。またその意識をそれぞれがもつことで、コミュニケーションが円滑になり、毎日顔を合わせているのと同じ、またはそれ以上にしっかりとした関係が築けるようになるのではないでしょうか。ここがうまくいけば、物理的な距離の壁を越えて、イノベーションを起こせるようになっていきます。あれこれ考えすぎるより、まずはやってみる。うまくいかないことはその都度改善していくことで、どんどん革新的に進めるようになってくるのではないでしょうか。
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取材、文・長瀬由利子 編集・荻野実紀子