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身体の性に違和感を抱き始めたのはいつ?学校で感じたギャップとは【性の多様化・第2回】

02前回からの続き。なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)の元選手で、トランスジェンダーであることを公表している3人組YouTuber「ミュータントウェーブ。」。今回は彼らの子ども時代についてお聞きします。「自分は他のお友だちとは違うかも」と感じるようになるきっかけは、どんなところにあるのでしょうか。

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ランドセルの色や制服のスカートが嫌だった

──心と身体の性の違い、違和感を感じ始めたのはどれくらいの年齢でしたか?

おおちゃん(以下、おおちゃん):僕は小学1年生のときです。

あさひさん(以下、あさひ):僕は幼少期から。姉がふたりいるのですが、女の子らしいお下がりの洋服を着るのが嫌で嫌で。

まささん(以下、まさ):僕もあさひと同じで、幼稚園に入る前の幼少期。やっぱり女の子らしい洋服を着せられるのが、すごく嫌でした。まだ小さいので自分が男か女かも意識していなかったのですが、とにかく女の子らしい物に抵抗がありました。

──例えばランドセルの色はどうでしたか? 皆さんの時代なら、女の子は赤かピンクが多かったかもしれませんが……。

おおちゃん:そうですね。ちょっといいところの子は茶色だったり。

まさ:ああ、茶色! 僕のランドセルは祖父が買ってくれることになっていたのですが、祖父からは「赤じゃないと買わない」と断言されました。「黒がダメなら、茶色がいい!」とお願いしたことは、すごくよく覚えています。

制服に抵抗があっても着ていたのは、それがルールだったから

──色や洋服のテイストは象徴的なんですね。小学校に入学後、学校生活で困ったことはありましたか?

まさ:(体操着で)ブルマーを履かなきゃいけなかったんですよ。それがめちゃくちゃ嫌でした。その後、すぐに短パンに切り替わったんですが。

おおちゃん:僕も昔の写真を見ると、小学5年生のときには(女子みんながブルマーのなか)クラスでひとりだけ白い短パンを履いていますね。ただ中高の制服は「スカートは嫌だ」と抵抗したものの「ルールだから」と言われて、仕方なく履いてました。

あさひ:子どもの頃に自分のジェンダーでつまずいた記憶が、僕はすごく乏しいんですよ。まだそれほど自分の意志がはっきりしていなかったこともあるし、男女関係なくみんなが仲よくしていた環境だったので。はっきり自分の感覚がわかり始めたのは、やっぱり制服のスカートです。嫌だとは思っていたんですが、その前に“世の中のルール”“学校のルール”があったので、仕方なく着ていました。

まさ:だからジャージで登校したりね。

おおちゃん:僕は足を出すのが嫌で、スカートの丈を長くしていたんですよ。膝下丈にしていたので、模範生みたいな感じになってました(笑)。あと、あれだ! 小学6年生から中学1年生くらいで、胸が大きくなっちゃって。胸が目立つ体操着とかも、めちゃくちゃ嫌でしたね。なるべく緩やかに着る工夫をしてみたり。

まさ:僕の中学校は、学校についたら全員がジャージに着替えるシステムだったんですよ。それには救われたな。

──当時お友だちとは、どんなふうにつきあっていましたか? 中学生になれば男女でグループがはっきり分かれてくることもあると思うのですが。

おおちゃん:うちは女子もスポーツが得意な、男勝りな子が多かったんですよ。男女ともみんな仲がよいクラスだったので、そこはよかったです。他のクラスはそうでもなかったので。みんなで一緒に出かけたり、お昼ご飯を食べたりしていました。

あさひ:僕ははっきり分かれた印象があります。小学校のときは男女仲がよかったんですけど、中学生になるとはっきりグループができて。でもやっぱり、女の子と接している時間のほうが長かったです。

まさ:中学校になるとグループで行動しがちですよね。僕も女の子数人と行動していました。でもそれが嫌だという感覚はなかったです。

学校とサッカーの世界。感覚のギャップに戸惑う

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──お友だちに自分の性の違和感を伝えるような機会はありましたか?

おおちゃん:僕はもう、小さいときから伝えていたので。小学校高学年くらいかな。臨海学校とかの宿泊行事のときに、みんなで“ぶっちゃけ爆弾話”をする時間があったんですよ。そこで「誰が好きなの?」と聞かれて、隠すのも嫌なのでストレートに「○○ちゃん」と。でも、みんなそれほど驚いていなかったです。「へぇ〜」くらいの反応で(笑)。

まさ:ぶっちゃけ爆弾話! そういう場があったのはいいよね。

あさひ:僕は中学生のときは、言えなかったです。周りに馴染もうとして、一番頑張っていた時期だと思います。中学1年生のときにサッカーでクラブチームに移籍したんですけど、そこで初めて女の子同士のカップルを見たんですよ。そのとき「へぇ〜」と思って、学校でも普通に会話のネタとして話したら、茶化された記憶があって。そこで「ああ、これは言っちゃダメなことのか」と気づきました。サッカーの世界で見るジェンダーの感覚と、学校でのギャップが大きかったです。自分の話をよりできるのは、サッカーの世界のほうだなと思いました。

──ジェンダーに寛容なのは、サッカー界の特徴でもあるんですか?

おおちゃん:女子サッカー界だけかもしれないんですけど、“メンズ“という言葉があるんですよ。それは男の人を指す言葉じゃなく、それっぽい人のことを指す言葉として使われています。僕らもそう。「誰々って、メンズなの?」みたいな会話は、結構あります。メンズを好きになる女の子というのもいて、メンズだったらアプローチするし、メンズじゃないならしない、っていう。

そういう世界だったので、カミングアウトしやすいというのもあるかも。性についてだけじゃなく、スポーツ選手としての背景もあるので理解してもらいやすい部分もあるような気はします。

編集後記

自分の性を意識する以前に、色や洋服のテイストなどで本能的に好きなものを選んでいたというお話は興味深いですね。今ではランドセルも男女あまり関係なく好きな色を選べばいいという風潮になってきましたが、昔は選択する自由が多くなかった記憶があります。制服に関しても、最近はスカートのほかにスラックスを選べる学校も増えつつあるようです。性の多様化が広まるとともに、学校や世の中のルールも変わっていくはず。どのように対応していくのか、教育現場にも変化が求められそうです。次回は周囲へのカミングアウトについて、さらに就職するときの苦労などについて伺います。

第3回へ続く。

取材、編集・Natsu 文・鈴木麻子 イラスト・よし田

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