<旦那が行方不明>もう彼女のところに戻る資格はない。離婚届を前にして【第18話・旦那SIDE】
前回からの続き。会社を辞め、ゆきの作ったオムライスを食べたあと俺は、携帯を置いたまま黙って家から出てきてしまった。行き先は、同僚だった北村るみの自宅だ。その昔、彼女は旦那と離婚したらしく、2人の子どもを養っていた。すぐに懐いてくれた子どもたちとるみと一か月ほど生活していた。望んだ自由を手に入れたはずだったのに、俺の気が晴れることはなかった。そんなとき、居候しているるみの家に俺のオヤジが現れた。その手にゆきとの離婚届けを持って。
オヤジは、ゆきの名前が記入済みの離婚届を手に、話を続けた。
「ゆきさんは完璧なんかじゃない。完璧な人間なんていない。でも人は大切にしたい誰かのためなら、自分にできる精一杯のことをしてあげようと完璧に近づくように努力をするだけだ。彼女を完璧だと思っていたのなら……それは、お前と一緒にいるから、彼女は頑張れていただけなんじゃないのか?」
「……」
「だがそれに気づけなかったお前には、もう彼女のところに戻る資格はない。早くこの紙に記入しろ」
「それは……できない」
「ならもう一度よく考えろ。ゆきさん、お前とこの家の家族が歩いているところを見て、何て言ったと思う?」
「…………」
「お前が生きててよかった……だぞ? これだけ酷いことをされても、なお、お前のことを心配してるんだ彼女は。彼女がお前に望んでいたのは、頑張ってほしいとかじゃないだろ? ただ笑って一緒に過ごしたかっただけだろ? それをお前が勝手にいろいろ勘違いして、から回って、このザマだ。情けない」
その瞬間、俺は自分のしてきたことがどれだけ罪深いか気付かされた。
「ゆきは……いま……」
「彼女はマンションを引き払って、子どもたちと実家に帰るそうだ」
「俺の携帯は……?」
「彼女が持ってる。口では気丈に振舞っていたが、きっと心のどこかでお前からの連絡を待っているんじゃないか?」
「……」
「人間、荷物を持たないで出かけると不安になるだろ? なにか忘れものをしてないか? って取りに戻ることだってあるくらいだ。大人になるとな、荷物は適度に持っていた方が安心して歩けるんだぞ。そのことに気づけたのであれば、もう二度と荷物を降ろそうなんて馬鹿なことはするな」
俺はゆきに電話をし、仕事を決めて迎えに行った。
<編集部コメント>
命を預かりきちんと育てるという大きなプレッシャーのなかで生活しているママもいますよね。責任を置いて、たまには一人になりたいと思うこともあるのではないでしょうか。そんなママたちにも、サトルの父親の言葉が胸に響いたのではないでしょうか。「大人になるとな、荷物は適度に持っていた方が安心して歩けるんだぞ」。たいへんかもしれないけれど、子どもという宝物を手にしたママたち。責任の重さもまた、子育ての楽しみの一つなのかもしれません。少しずつでもいいから、サトルも重さのなかにある楽しさを満喫して欲しいものです。
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