【地福武史さん第2回目】9月入学、オンライン教育導入で今後の学習スタイルはどう変わる?
新型コロナウイルスによる臨時休校を機に、9月入学やオンライン教育が注目されています。ママたちからも関心が高い入学時期の変更や、オンライン教育による学習の変化について、株式会社スタディラボ地福武史さんと、子どもの塾選びをサポートするサイト「塾シル」代表の古岡秀士さんのお二人に対談してもらいました。これからの学習スタイルについて私たち親は子どもをどうサポートしたらいいのでしょうか。
※こちらの取材は2020年5月下旬に行われています。6月5日現在、政府は9月入学の断念を発表しています。
学校の9月入学については賛成。ただし時間をかけて慎重に行うこと
古岡秀士さん(以下、古岡):文科省などで検討している小学校、中学校、高校の入学や始業時期を9月にずらすことについて、地福さんはどう考えていますか?
地福武史さん(以下、地福):中長期的にはありだと思います。というのも世界規模で考えたら、9月入学のほうが海外との提携にもいいからです。私が運営している学習塾「スタディラボ」には、医師や科学者、起業家になろうという子どもたちがたくさん通っています。そのためグローバルな視点を持った保護者の方も多く、海外留学を視野にいれている家庭もたくさんあります。海外留学の流れは、一個人の塾だけではなくこれから時代とともに加速していくでしょう。それを考えると、9月入学というのは、改めてきちんと考えていきたいところです。
とはいえ、目先の子どもたちのことを考えて「いい機会だから」というだけで取り入れるのはやめた方がいいと思います。入学や始業時期の変更については、きちんと議論をしていく必要があると思います。
古岡:9月入学のメリット、デメリットについてはどう考えますか?
地福:メリットは、グローバルスタンダードに適応できることです。たとえば日本から海外に留学する際もそうですが、海外から日本の高校、大学に入学したいという子もいます。また、企業としても日本と海外の大学の卒業時期が同じであれば、海外から優秀な人材がきて、採用しやすくなりますよね。
デメリットは、今同じ学年の子どもたちが、年度途中で2つの学年に分かれてしまうかもしれないということです。しかし、それは徐々に慣れていくので大きな問題ではないでしょう。
いつでも好きなときに好きな科目を学べる。子どもたち主体の学習へ
古岡:アフターコロナではどのような教育が必要になると考えていますか?
地福:新型コロナウイルスの影響が始まる前から教育においてはあらゆることが言われていましたが、新しい学びの形は「個別最適性の追求」です。これまで教育というのは、教師が教えて学習者である子どもたちが教わったことを覚えて活用するというスタイルが一般的でした。
しかしこれからの教育というのは、学習者である子どもたちが主役になります。たとえば、子どもたちはこれまで決まった時間に学校や塾に行き、そこで学習していました。なぜ決められた時間、場所に子どもたちが集まるのかといったら、教える側にとってそれが合理的で一番都合がよかったからです。
しかし今回のコロナで、学校や塾に集まれないという状況になりましたよね。するとそもそも「場所」や「時間」にとらわれる必要はないのでは? ということになりました。今後はどこにいても、どんな時間でもその子が学びたいときに学べるようになるのではないでしょうか。
オンライン教育で学習管理の仕方や教師の教え方も変わってくる可能性大
古岡:新型コロナウイルスの一件でオンライン教育が注目されていますが、これについてはいかがですか?
地福:教育現場では、パソコンやインターネットなど情報通信技術を使ったICT教育やエドテックなどの導入が加速しました。学習塾に関しては、これまでは個別指導、グループ指導という2つに分かれていましたが、おそらくこれからはオンラインと個別と小集団という三つ巴の構成になっていくでしょう。
古岡:オンライン指導となると、教師の教え方も変わってきそうですね。
地福:オンラインに切り替わることで、良い先生の定義も変わります。今回、Zoomを使った動画配信を行った学校や塾もあると思いますが、対面の授業ではおもしろかった先生がオンラインではつまらないということが各地でもうすでに起こっているかもしれません。子どもたちは普段からYouTubeを見ているので、その動画が面白いか面白くないかというジャッジは厳しいですからね。
古岡:今回の新型コロナウイルスによる影響で、ほかに変わったところはありますか?
地福:今まで集団で行っていたテストができなくなってきました。テストは子どもたちが密集するので3密です。大手塾などたくさんのテストを繰り返しやってきたところは、Zoomを導入して家でテストをするとなるとなかなか難しいですよね。これから先はテストだけによる学習管理ではなく、子どもたちの学習記録をしっかりと把握していくことによる学習管理に移行していかないといけないと考えています。
今、親として子どもの学習をどうサポートするべき?
古岡:親としてどのようなサポートをしていけばいいでしょうか?
地福:大切なのは、「賢い子どもを育てる」ことです。いかに子どもを賢くしていくのかは、非常に重要な視点です。賢さと頭の良さは違います。頭がいいというのは
勉強ができる、テストの点数がいいということです。これに対して賢さというのは、1言ったら10わかるようなことを指します。どのような状況でも臨機応変に、自分の頭で考えて対応していける力を、子どもたちに備えていきたいと思っています。
家庭においては、まずはしっかりとした教育の軸を持つことが大切です。これまでは学校偏差値による相対的な単純評価で子どもの能力を測ろうしてきましたが、今の時代には見合わなくなってきています。テストの点数や偏差値だけに一喜一憂するのではなく、子どもが自分から積極的に活動できているか、好奇心をもって物事に取り組めているかなど、学習面以外にも「賢さ」に目を向けて育ててほしいと思います。
取材、文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ