【繁田和貴さん第1回】今、注目を集める「オンライン学習」で授業や勉強はどう変わるの?
コロナの臨時休校を機に、注目を集めている「オンライン学習」。ママの中には「オンラインの学習についてよくわからない」という人もいるかもしれません。そんなママたちのために、個別指導塾「TESTEA」塾長の繁田和貴さんと、子どもの塾選びをサポートする「塾シル」代表の古岡秀士さんが、これからのオンライン学習についてわかりやすく教えてくれます。
学校休校が延長に。学習の遅れは深刻
古岡秀士さん(以下、古岡):子どもの学習環境が人によって異なります。学習の遅れや将来への影響はないのでしょうか?
繁田和貴さん(以下、繁田):成長期にある子どもたちにとって、今回の臨時休校はとても長い期間です。本来なら新生活を始めているはずの時期に自宅にいて友達に会えないことは非認知能力(IQなどで測れない能力のこと)の低下につながるのではないかと心配しています。授業が再開したときに、子どもの学力にも大きな差がでてきそうです。
うちのようにオンラインの体制が整っている塾に通っている子どもは、コロナで休校となっても変わらないペースで学習ができますし、むしろ学校のなくなった時間に中学受験に向けた復習や先取りをガンガン進めようと頑張ることもできます。一方で、小学校で出される課題だけを自分一人で行う子もいます。こうしたケースでは、毎日の学習習慣がついている子とそうでない子との間で、学習面の成長にはかなりの差が出てしまうと思います。
ここからさらに1カ月延長される休校。今やるべきことは?
古岡:外出自粛がもう1カ月続くわけですが、この期間どのように過ごしたらいいと考えますか?
繁田:今は教育の大きな転換期です。これまでも経産省などを中心にパソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用したICT教育を推進するという動きがありました。しかし実際の教育現場はまだ大半が対面授業で、紙の教科書を使ったこれまで通りの授業こそが「勉強」だと考える風潮がありました。
しかしコロナで状況が一変しました。学校が2カ月以上休校になり、子どもたちは外に出られない。子どもたちの教育を続けるためには、親も教師もオンラインを活用せざるを得なくなったのです。この流れは非常に大きいと思っています。
古岡:自治体によってオンライン教育にどこまで力を入れるか、差が出そうですね。
繁田:公教育は、残念ながらオンラインの導入が遅くなりがちです。だからまずは自分たちでオンライン学習に取り組んでみるのがおすすめです。といっても、ママによってはパソコンやタブレットを持っていない、そもそもITが苦手という人もいます。そういう場合は何人かのママたちで情報交換しながら色々と試してみてください。流行りのZoomではなく使い慣れたLINEのグループ通話でもいいと思います。
オンラインで仲良い子どもたちで集まって遊ぶのだって大事なことです。子どもたちは我々大人が思っている以上に順応性が高いもの。オンラインかくれんぼをやったという話を聞いたときには驚きました(笑)。時間を決めてみんなで一緒に勉強する、時間を決めてみんなで一緒に遊ぶ。そうした子どもの教育上当たり前に必要なことは、オンラインでも絶対にやるべきですし、実際にやってみると「意外といいじゃん!」となるものです。むしろオンラインにしかできないことだってあるわけで、オンラインならではの工夫を取り入れていくと、どんどん楽しくなっていきますよ。
古岡:意外と見落としがちですが、勉強仲間は大事ですよね。
繁田:大事ですね! よい勉強を続けるためにはインプットとアウトプット、そしてコミュニティの3つの要素が大切だと思っています。インプットというのは人から教えてもらうなどして知識を仕入れること。学校の授業などはまさにこれです。アウトプットは自分自身で問題を解く時間。コミュニティは、一緒に勉強したり、支えてくれる仲間たちの存在です。自分1人では頑張れないことも、仲間がいると頑張れるんですよね。
オンライン学習というと、動画を見るなどインプットのことを連想する人が多いのですが、実際に解ける力がつくのはインプットしたものをアウトプットをしてこそです。そしてそれら一連の勉強のやる気を支えるコミュニティ。これら3つの要素すべてを、オンラインにおいても大切にしていきたいです。
古岡:今回のコロナ騒動を踏まえ、繁田さんは今後、学校や家庭でどのような学習が必要だと考えますか?
繁田:オンライン学習にどんどん慣れていってほしいですね。我々TESTEAも、コロナが落ち着いたらこれまで通りの対面授業を復活させますが、今回の件でオンライン学習の必要性とその良さを改めて感じました。これからはそちらに力を入れていこうと思っています。
古岡:オンライン授業を受けてないお母さんたちには、タブレットやスマホ、パソコンなどを使った学習というのは違和感があるかもしれません。しかし、これを機にやってみてほしいと思います。そしたら必ず「よかった」と思うはずです。受け身にならずに試していってみてください。子どもの時間は待ったなし、教育は止めてはいけません。
学習の進み具合よりも「子ども自身に興味」を持ってほしい
古岡:繁田先生からママたちに伝えたいメッセージはありますか?
繁田:こんなときだからこそ、我が子に対して好奇心を持って見守ってあげるようにしてください。たとえば、子どもが勉強しないでゲームばかりしていたらついイライラしてしまいますよね。でもそんなとき、「この子はどんなゲームに夢中になっているんだろう。このゲームのどの辺にハマっているのかな」ということに関心を向けてほしいのです。ゲームを認めるとか認めないという問題ではなく、子ども自身に興味を持つ姿勢が大切なのです。
これは子どもが解答を間違えたときにも同様で、「なぜこんなのができないの?」というような聞き方は、質問ではなく詰問になりがちです。「なぜこんな簡単な問題ができないの!」という、子どもへの非難が見え隠れしてしまいます。こんなときは「なぜ、この子はこの問題でつまずいたのだろう。どんなふうに考えたのだろう」というように、子どもの考えた過程に着目してみてください。大切なことは、子ども自身に興味をもって観察すること。視点を変えることでママ自身が変わります。ママが変われば子どもも変わりますよ。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶
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