親から叱られた理由トップは「帰宅時間を連絡しない」。親と子のスマホコミュニケーション調査の結果からみえてくることとは
子どもが帰宅時間を告げないまま、出かけてしまったら? いつ帰宅するのか、気にならないママはいないでしょう。さらにスマートフォン(以下、スマホ)やケータイに「帰りは何時?」と連絡しても、返信がなかったとしら? 心配や苛立ち、そのうえ「帰宅したら叱らなくちゃ」という面倒まで加わり、ストレスが膨れ上がることもありそうです。
「親と子のスマホコミュニケーション」に焦点を当てた、あるアンケート結果が公表されました。とくに思春期の子を持つママが悩まされることが多いであろう、スマホと親子のコミュニケーションに関する今回のテーマ。調査結果から上手なコミュニケーションの取り方が見えてくるかもしれません。
スマホのやり取りのなかで親に叱られたことのある子は、約半数
子どもの交通系ICカード「Suica」「PASMO」を通じた「子ども見守りサービス『まもレール』」を提供する「セントラル警備保障株式会社」(東日本旅客鉄道株式会社=JR東日本・東京都交通局=都営交通との共同提供)がアンケートを実施しました。小学校高学年から高校生までの子どもと、同年代の子を持つ親が回答しています。
まずは子どもたちに親とコミュニケーションを取る際に、直接とスマホのどちらがよいかをシーン別に尋ねました。
「直接話したい」が7割以上と多かったのが、「学校での出来事などの報告」と「悩み事の相談」です。一方でわずかな差ながら「スマホがよい」が上回ったのが、「帰宅時間や迎えの時間の連絡」。この傾向はとくに高校生で高く、45.0%と半数近くが「スマホがよい」と回答したそうです。親が関わらない子どもだけの予定が増えるお年ごろになると、事務的な連絡はスマホで簡単に済ませてしまいたいと考えている子どもが少なくないことがわかります。
次にスマホでのやり取りのなかで親に叱られたり、ケンカになったことはあるか? という質問がありました。さらにケンカになったの理由についても尋ねています(複数回答)。
およそ半数が、なんらかの理由で「親から注意されたことがある」と回答。その理由のトップは「帰宅時間の連絡をしない」で、約3人にひとりの子どもが注意されたことがあるという結果になりました。学年別に見てみると小学校高学年で23.0%、中学生で29.0%、高校生では38.0%と、子どもの年齢が上がるにつれ「帰宅時間の連絡をしない」ことで叱られた経験のある割合が増加しています。
叱ることでストレスを感じる親も、少なくない
次に「スマホでのやり取りに関して、子どもを叱ったことがある」と回答した親(156名)に、”叱ったあとの感情の変化”についても聞いています。
もっとも多かったのが「叱ることで、精神的に疲れやストレスを感じた(40.4%)」。子ども側は「叱られたくない」「イヤだな」と感じているでしょうが、叱る側の親だって「イヤだな」と感じているわけです。ちなみにこの回答を選んだ親の男女比を見てみると、母親が51.6%に対して父親は23.8%でした。
その他の項目においても父親に比べて母親のほうが叱ったあとに後悔した、自己嫌悪に陥ったなどの割合が高いことがわかりました。
子育ての悩み打ち明けられる人や場所があるかについても尋ねています(複数回答)。
一番多かったのは、やはり「パートナー(61.0%)」。「友人(39.5%)」や「自分の親(26.0%)」という人も少なからずいます。ただ、「いない」と回答した人も15.5%。その内訳を就業状態別に見てみると専業主婦・主夫が10.5%に対し、働く母親・父親が17.2%。仕事をしている親ほど、子育ての悩みを打ち明ける相手がいないことがわかりました。
帰宅時間の連絡をめぐる親子ゲンカを防ぐには?
この調査結果を見て、多数の著書もある教育評論家・小川大介先生がアドバイスをしています。
【イマドキ親子のコミュニケーションについて考えておきたいこと】
帰宅時間を連絡しなかったことで叱られた経験のある子どもも少なくありませんでしたが、
「親は「子どもが帰宅連絡をいい加減に考えているのではないか」と受け止めてしまわないことです。子どもたちは親へ「自分のことを信頼して、コントロールできる範囲を認めてほしい」という思いを持っています。
学校活動や友達との時間など子どもには自分の世界があり、”帰宅時間”はその過ごし方によって変わってきます。これは、自己決定権の表れでもあります。自分が決めた帰宅時間を変更させられると、親にコントロールされているような気持ち悪さ、自分の意思決定を親が信頼してくれていないという寂しさや怒りを覚えるのです」
親からすれば”帰宅時間”は、ただの”帰宅時間”。しかし子どもにとっての”帰宅時間”は、自分の”意思決定権”を象徴するものなのだそう。親子でうまくコミュニケーションを取るためには意思決定権、つまり子どもの帰宅時間を尊重していくことがカギになりそうです。
【「帰宅時間の連絡」をめぐるケンカを防ぐためには?】
子どもの意思決定権を尊重しながら帰宅時間を連絡してくれるように導くには、ポイントが2つあります。
①なにを・なぜ・どのように伝えてほしいのかを、事前に共有する
「人は理由を伴わない依頼や指示に、行動意欲を持つことができません。子どもにはまず「安全を守りたいから」「親として安心したいから」といった、”なぜ”伝えてほしいのかを説明してください。
次に帰宅時間や予定内容など”なにを”共有すればいいのかを、親子で話し合いましょう。ここで子どもの考えを丁寧に聞くようにすると、親への警戒心が下がり伝えてくれやすくなります。
そして最後に”いつ・どのように”伝えるべきかを相談します」
事前に話し合っておくことで親が子どもを監視したいわけではなく、安心・安全の確保と子どもの自立の尊重を両立したいということを理解してもらいやすくなる、とのことです。
②スマホを上手に活用する
「おすすめは、家族で予定を共有できるカレンダーアプリ。共有が必要な予定をカレンダーに登録するといちいち伝える煩わしさも、うっかり伝え忘れたことによるいざこざもなくなります」
調査結果では「子育てについての相談ができる相手はいない」という回答もありました。「悩みを打ち明けられる場」として「SNS」と回答した人も3.5%いたように、子育てに行き詰まったときは身近に相談できる人がいなくてもSNSを利用して、溜まった悩みやストレスを発散させてみてはいかがでしょうか?
調査主体:セントラル警備保障株式会社
調査期間:2020年2月1日(土)〜4日(火)
分析対象:①スマホを所持する小学校高学年から高校生の子を持つ首都圏在住の男女400名(小学校高学年の子を持つ父親・母親50名ずつ、中学生の子を持つ父親・母親75名ずつ、高校生の子を持つ父親・母親75名ずつ)
②スマホを所持する首都圏在住の小学校高学年から高校生の男女300名(性年代で均等割付)
調査方法:ウェブアンケート
文・鈴木麻子 編集・しのむ