【後編】仲良しのママ友が急に引越し。その原因は子どもの特殊な力……?
娘が幼稚園のころ、仲良しだったケンちゃん。優しい子なのですが卒園後、小学校に登校できなくなったと人づてに聞きました。
ある日、ケンちゃんのママから、「今度南方にある島に引っ越す」という話を聞きました。理由は、私の想像を超えたものでした。
ケンちゃんママ曰く、「大人になってくると、そういうのをコントロールできるようになる場合もあるらしいの。けど……まだ小さいから全部をそのまま受け止めてしまうんだよね……。だから家からも出れなくて……。で、この前、試しに南方にある島に行ってみたの。そうしたら、都会に比べれば全然楽みたいんだよね。人口が圧倒的に少ない分、”少ない”みたい。だから……思い切って家族で引っ越すことにしたんだ」。
ケンちゃんママと別れたあとも、私はケンちゃんのことが頭から離れませんでした。普通の子が見える「普通の景色」が、ケンちゃんにとっては別のモノたちがうつりこむ「異質な景色」になってしまう……。有象無象に漂ういろいろな“モノ”たちに囲まれなくてはいけない世界で生きていくということは、いったいどんな気持ちなのかな……。
嘘のような現実に、ケンちゃん本人も、そしてケンちゃんのママも、きっとたくさん悩んだことでしょう。「学校に行かない」と言えば、たいていの人が「どうしたの?」と聞いてくるはず。もしかすると家庭の教育方針を責められることもあったかもしれません。でもその度に本当のことを言うわけもいかず、かといってどうすることもできない……。辛かっただろうな……。
そしてその悩みに何ひとつ気づいてあげられなかった能天気な自分の不甲斐なさを悔やみました。
ひとにはそれぞれ「個性」があります。その個性は、ときに生きづらさを感じるものであるかもしれません。それでも、その個性に負けないように、笑顔の素敵な君が強く、たくましく、幸せであり続けますように、私は遠い地から祈り続けています。
脚本・渡辺多絵 作画・イチエ