在宅ワークが広がる今こそチャンス。親の働く姿を子どもに見せる意味【花まる学習会 高濱先生】
外出自粛要請が出たことで、在宅ワークで頑張るママたちもいます。とはいえ、家での仕事は子どもがいることもあり集中できません。また子どもに対して「遊んであげたいけど、仕事が忙しく相手をしてあげられない」と、罪悪感を抱くこともあります。こんなとき「花まる学習会」代表の高濱正伸先生は、「親が働く姿を見せると同時に、子どもを読書好きにするチャンス」だと語ります。詳しくお話をうかがいました。
仕事モードの両親の姿を見せることは社会とつながる第一歩
子どもにとって親が仕事をしているのを見ることは非常に良いことです。とくに今回、お母さんだけではなくお父さんも在宅ワークをしている家庭もあると思います。親からしたら子どもがいる空間で仕事に集中するのは難しいかもしれません。しかし、普段親の仕事を見ることが少ない子どもからしたら、親の働く姿を見るというのはとても新鮮なことなのです。
普段は家に帰ってきて、ビールを飲んでソファでゴロゴロしているお父さんの姿しか見たことがなかったのに、仕事をしているときはとても頼もしく見えるかもしれません。たとえば、お父さんがミスした部下に優しく諭すように話をしていたり、逆に取引先に謝っていたり。仕事モードで頑張っている父親の姿を見て、子どもは「仕事って甘くないな」と感じることもあるでしょう。いろいろな意味で、親が働く姿を見せるというのは、子どもにとって大人の社会を垣間見るきっかけになるのです。
働く母親は子どもに罪悪感を抱きがち
働くお母さんというのは子どもに対して罪悪感を抱くものです。たとえば我が子を保育園に入れて働くときもそうです。「本当は一緒にいたいけど、これから先の生活を考えると今仕事を辞めるわけにはいかない」と思って働きに出る方も多いですよね。そんなとき我が子に心の中で「一緒にいてあげられなくてごめんね」と思う方もいるかもしれません。お母さんからしたら「子どもの世話をするのが母親の責任」と感じているところがあるのです。コロナで在宅ワークになってもそれは変わりません。自分が仕事をすることで親としての責任を果たしていないんじゃないかという罪悪感がある。だからこそ、仕事をしなければいけない自分と、子どもの面倒を見てあげなければという気持ちの間で板挟みになるのです。
「仕事が忙しくて子どもの面倒を十分にみてあげられない」と感じたときは、1日5分でいいから、毎日同じ時間に子どもを抱っこして話をきいてあげましょう。「お母さんはあなたのことを大切に思っているよ」という気持ちが伝われば大丈夫。今のお母さんのがんばりというのは、子どもにとって誇りにもなります。
親が仕事をする傍らで子どもは読書経験を積む
子どもには親が仕事をしているとき、子どもは読書タイムにするのがおすすめです。
本は1冊1500円ほどします。人によっては高いと思うかもしれませんが、本を読むことで子どもの語彙力が伸びるうえに、想像力や知的好奇心が刺激されます。また、本を通して子どもの世界は広がっていきます。だから本にかけるお金というのは、決して高くない。むしろたった1500円でさまざまなことが学べるとても価値あるものです。
第一線で活躍している人たちはみんな読書にのめり込んだ時代があった
僕はこの1年あまり、実業家の堀江貴文さんや落合陽一さん、スポーツ選手など、社会の第一線で活躍している人たちにインタビューしてきました。その人たちに共通していえることは、みんなそれぞれ読書にのめり込んだ時代があったということです。これは僕にとっての大発見です。社会に出て、好きなことでメシが食える、社会で活躍できる大人になるためにも、僕は子どもたち読書習慣を身に着け、本を読む喜びを味わってほしいと思います。
読書習慣が子どもの世界を広げてくれる
読書習慣のない子どもにとっては、本を読むのは退屈かもしれません。そのような場合は、子どもに本を渡すときは、絵本や児童書などのなかから、子どもが好きなものを選ばせてあげましょう。マンガであれば、歴史マンガの『日本の歴史』シリーズなどもいいと思いますよ。「あんた、この本を読みなさい!」なんて、最初から学校推薦の難しい本を渡さなくても大丈夫です。もし、子どもが少しでも本を読むことがおもしろいと思ったら、自分からのめり込んで読むようになりますよ。慣れてきたらだんだんと難しい本に挑戦していけばいのです。また、せっかくなのでお母さんも子どもと一緒に読書をする時間を設けてもいいですね。親子で一緒に読書をすることで、子どもも自然と本に興味を持つようになってきます。
親が仕事をする傍ら、子どもは読書に夢中になる。親が仕事に集中していたら、子どももそれを見て、自分も読書に集中しようと思うのです。同じ空間にいながらお互いそれぞれがやるべきことに集中できて、親子でとてもいい時間を過ごせます。この在宅ワークと読書の時間というのは、家族にとって貴重な思い出になるのではないでしょうか。
取材、文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ