ふたたび、笑顔で会える日まで……【中編】 #いま自分にできることを
我が家は地方に住んでおり、自粛はしているけれど、弟夫婦が住んでいる都会ほど人も多くないためウィルス感染者も少ないようだ。
弟夫婦は医療関係の仕事をしている。どうしても他の人に比べてウイルスに感染する確率が高くなる恐れがある。今回私たちに子どもを預けたいといったのは万が一子どもたちに感染したときのことを考えたり、それによる周りへの影響力を考慮した、苦肉の策だったのだろう。
正直、最初「子どもを預かってほしい」と言われたときは肯定的になれなかった。我が家にも8歳の子どもがいる。もしいまは自覚症状がなくても、弟の子どもたちが保菌者で、娘や私たちにうつってしまったり、それが街に広がったら……と思うと、安易に受け入れることはできなかった。同居している両親も高齢で、弟夫婦の7歳、5歳、2歳の子どもの面倒を見ることは難しい。
ただこうしている間にも、苦しんでいる誰かを救おうとしてくれている医療関係者を支えることができる人も限られてくるのでは……と思ったのだ。
いま私にできることは弟夫婦が安心して仕事ができる環境を整えることなのかもしれない―――。
私はすぐに車を走らせ、弟の子どもたちが来たときを想定し、2週間は家族で外に出なくても済むようにスーパーへ向かった。
義妹:「それでは……よろしくお願いします……」
姉:「こっちのことは気にしないで大丈夫だから、がんばってね」
義妹の顔はもすごく疲れていた。きっと仕事が大変なのもそうだと思うが、子どもたちと離れて暮らすことが原因だろう。私だってこんな大変なときに、自分の子どもと離れ離れにならないといけないと考えるだけで身を切り裂かれる思いがする。でも彼女は、今日もどこかで苦しむ「誰かの命」を救うために、涙をこらえながら仕事に戻っていくのだ。
人は決して1人では生きていけない。こういう非常事態こそ、互いにできることをして支え合わなくてはけないのだろう。周りに最大限の配慮をしたうえで、この子たち(弟夫婦の子ども)の命を守ることが、いま、私にできることなんだ――――。
脚本・渡辺多絵 作画・イチエ