子どもが親に黙ってお金の貸し借り!?教えておきたい「借金」とお金がないときの工夫とは
子どもがお金を持つようになると、無駄遣いをしないか、友達と内緒でお金の貸し借りをするのではないか、など心配がつきまといますね。親に内緒のお金のやり取りから起きるトラブルの可能性を低くするために、親が普段から教えていけることはあるのでしょうか。
さまざまな家庭の家計相談を行っているFP(ファイナンシャルプランナー)海老原政子さんにお話を伺いました。
子どもが親と「お金の話」をすることを「普通」だと思わせることが肝
――親から「人前でお金の話をするもんじゃない」と言われてきたママたちは、子どもの前でお金の話をするのも嫌がることがあると思います。お金の話は包み隠さずする方がいいのでしょうか?
たしかに、子どもの前でお金の話をするのを嫌がる人もいますね。しかし子どもは大きくなるにつれて、「自分の家は他の家と比べてお金がない(ある)」などと、うっすらわかってくるものではないでしょうか。自分の家がお金持ちだから、あるいは貧乏だからお金の話をしない、というのはおかしな話です。ですから、普段からしっかり子どもの前でお金の話はしてあげるといいと思います。他のご家庭のものを「高価だ」など値踏みや比較はNGですが、我が家なりのルールやお金の使い方に対する親の考え方などは目の前でしっかり時間をとって話してあげて下さい。
――普段からお金の話を日常会話の延長でしていくといいのですね。
お金の話はあまりしないほうがいいのかな、と子どもに思わせてしまうと、子どもは親に相談できず隠れて金銭の授受をしてしまう可能性もあります。「友達にお金を貸して戻ってこないことがあり気まずい思いをした」というように、体験談や考えをきちんと話せる親子でありたいですよね。子どもから信頼を得るにはコミュニケーションが大切です。お金の話は子どもが聞くものではないとコソコソしていると、子どももお金のことを親に見えないようにやり取りしてしまい、子ども同士のトラブルにならないとも限りません。
子どもの欲しい物がもし高価だったら……逃したくない「マネー教育」の機会
――子どもの欲しい物が高価でお小遣いでは足りないことも出てくるのではと思います。
それは子どもへのマネー教育の最高のシチュエーションです。親である私たちも普段さまざまな方法で家計をやりくりしていますよね。その創意工夫を、子どもにもわかる方法やわかる金額に置き換えお小遣いの管理を一緒にやってあげれば、何よりの「マネー教育」になると思うのです。大人はバーゲンでお得に買うのに、子どもには決まったお店で新品ばかり……ではなく、買い物ひとつとっても工夫の余地があります。足りない部分をどう補うか、それこそ子どもへの活きたマネー教育です。この機会を逃す手はありませんよね。
――具体的にはどのようなことがマネー教育になるでしょうか?
まず、その高価な欲しいものを買う方法を一緒に調べてみてはどうでしょう。デパートで買うと定価だけれど、量販店だと少し割引になる、ネットでは中古品が出ている……などです。
例として、子どもが最新のゲームソフトが欲しいとします。発売したばかりのときは定価ですが、待てば値下がりする可能性がありますし、中古ショップに行けば、あるいはシリーズの1つ前の作品だったら、安く手に入る可能性がありますね。最新の物を今買って楽しむのもよし、何軒かお店を回って最も安い物を探すのもよし、次回作のためにお小遣いを貯めておくのもよし、といった選択肢が考えられます。
「お金がなければ工夫をする」ということを覚えるのも、子どもにとってはマネー教育になりますよ。
――創意工夫を教えることで生きる力になりますね。他にも方法はありますか。
いらない物を売りに行ってお金に換えるというのもひとつの方法です。中古ショップに行くと、子どもは新品と中古品とでは値段が違うと知ることができます。また売りに行く時期によって値段が変わる可能性があるので、「物の価値は時期によって変わる」ということも一緒に教えられます。
親がオークションやフリマアプリを利用するなら、子どもの代わりに出品する方法もいいと思います。親が出品代行をした場合、子どもから手数料を引いた残額を渡す、という方法も、モノにかかる経費が教えられてよりリアルな生活者目線が育つかもしれませんよ(笑)。
マネー教育の観点からは少し外れますが、欲しい人にバザーで譲るなど、リユース、リサイクルの方法も合わせて教えていくこともオススメです。
子どもが欲しい物を買えないときに、お小遣いの前借りはあり?
――お小遣いの前借りはアリなのでしょうか?
お小遣いのあり方に正解はないのと同様に、お小遣いの前借りを許すか許さないか、それにも正解はないと思います。親の考え方によると思いますので、アリにしてもいいと思いますよ。しかし前借りはいわば借金です。カードローンなどのトラブルを鑑みると、できれば借金しない方向に持っていきたいところです。家計において、お金の貸し借りや借金は極力避けて今あるお金で暮らすのが正常な姿だと認識させることが大切です。
特に問題となるのは、親から学校で使うものなど、必要なものを購入するためにお金をもらったけれど、別の物に使ってしまって必要な物を買えなかったときです。お金を使うべきものに使わなかった、それは一体どういうことなのかを、親は子どもにしっかりと理解させる必要があります。
――お小遣いの前借りをアリにした場合に注意したい点はどこですか?
ルールを事前に子どもと話し合って作っておくことが重要です。前借りは一種の借金ですから、最大で1ヶ月分(もしくはいくらまで)と決めておくことは必要です。
そのほかにも前借りの利息・手数料として次のお小遣いから10円引く、といったルールにすれば、「お金を借りると余計な利息を払わなければいけなくなる」ことを学ぶきっかけになるかもしれません。
子どもが親に黙って友達と金銭のやり取りをする前に心がけたいこと
――もし子どもが親に内緒で友達とお金の貸し借りをしたらと思うと心配です。未然に防ぐためには何をすればいいですか?
中高生になれば手元にお金を全く持たないということもないでしょうが、そもそも「借金をすることの怖さ」がわからないから安易に貸し借りをしてしまうと思います。お金の貸し借りが問題になる前に、お小遣いを渡すときに「自分で使うのはいいけれど他人には貸さない」と約束をしておくことも有効です。
友だちに貸したお金が返ってこない、「返して」と言えない……そんなことがもしも実際に起きたなら、難しいことですが頭ごなしに叱るのではなく、失敗を今後に活かすためにもしっかり親子で話し合う努力をしてあげてください。子どもの信頼を失わないコミュニケーションを心がけてください。
――一番大切なことは「借金の重さ、身の丈に合ったお金の使い方を知る」ことですね。
大切なのは「お金の貸し借りや借金は極力避けることが必要。今あるお金で暮らすのが正常なんだよ」と伝え続けていくことです。考え方が伝わっていれば、ちょっとした失敗も今後の糧です。むしろ学びの場とすることで、親子間のコミュニケーションもスムーズにとれてよいのではないでしょうか。
家計のやりくりにもつながる創意工夫を子どもにも伝えていく方法はとても納得ですね。「満足のいくお金の使い方」は子どもの数だけ正解がありそうです。どれがいい、どれが悪い、ではなく、子どもと話し合ってじっくり考えていきたいですね。