ひといちばい敏感な子どもを持つママへ『HSCの子育てハッピーアドバイス』
「HSC(ハイリーセンシティブチャイルド)」という言葉を知っていますか。「HSC」とは、物事をひとつひとつ深く感じ取り、感受性が強く、他人の心を読もうとする力にたけるため、ちょっとした刺激に反応してしまう、「ひといちばい敏感」な子どものこと。なんと5人に1人存在すると言われています。筆者は初めてその言葉を目にしたとき、まさに我が息子はこのタイプではないか、と思い衝撃を受けました。そこで「HSC」について詳しく説明している書籍『HSCの子育てハッピーアドバイス』を読んでみました。
著者は心療内科医の明橋大二氏
「HSC」は、米国の心理学者エレイン・N・アーロンさんが提唱した言葉ですが、アーロンさんの本を翻訳したのが、今回ご紹介する『HSCの子育てハッピーアドバイス』の著者でもあり、心療内科医の明橋大二氏です。HSCの性質や親ができることを、太田知子さんのイラストを交えてわかりやすく紹介しています。明橋氏は精神科医として、またスクールカウンセラーや児童相談所の嘱託医として多くの子どもたちと接する中で、ひといちばい敏感な性質を持った子どもがいることを感じていたそうです。アーロンさんの「HSC」という言葉にまさにそれだと直感し、多くの人に知ってもらいたいという思いから、「HSC」についての子育て本が生まれました。
「HSC」は育て方ではなく持って生まれた性質
明橋氏は、HSCについて「とても敏感な子」ではあるが、「敏感すぎる子」ではないと伝えています。つまり、不安症や神経症などの病的なものではなく、持って生まれた「気質」であるとしています。どの部分に敏感であるかは、子どもによって異なります。においや音、皮膚感覚に敏感な子どももいれば、人の気持ちに敏感な子どももいます。また、発達障害(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群など)と誤解されることがありますが、書籍ではこのように言っています。
『アーロンさんはHSCと自閉スペクトラム症は違うと言っています。自閉スペクトラム症は、人の気持ちに関しては、気づきにくい、空気を読むのが苦手、ということがありますが、HSCは、むしろ、人の気持ちを察することに、ひといちばいたけているからです』
また、HSCは環境によって作られるわけではありません。しかし環境の影響は受けやすいところはあるので、虐待などの劣悪環境にいる場合は、大人になってうつ状態や不安症になりやすいとされています。しかし、大きな問題がない環境であれば、HSCであろうとなかろうと、うつ状態や不安症になるリスクは変わりないのです。
HSCの性質を親は理解し、長所として自己肯定感を育む
子どもに注意するときは否定的な言葉に注意
HSCの子どもは、深く感じ取りやすい気質のため、しつけで注意するときの否定的なの言葉も、人間を否定されたかのように受け取ってしまうことがあります。また、自分の過ちに対して深く受け止め、自分自身をネガティブに捉えてしまう傾向があるのだとか。そして、親や大人の気持ちを察する力がたけているため、期待に応えるように良い子であろうと無理をしたり、逆にわざと悪いとことして試すような行動をしたりします。
集団生活では萎縮してしまいがちなのでサポートを
他に、集団生活が苦手であるがゆえに、みんなの前で萎縮してしまって、周囲には引っ込み思案や神経質と思われてしまいがちです。そうすると、自分はできないとネガティブに捉えて自信をなくしてしまいがちです。そんなときに親がHSCの子どもにしてあげられることを、書籍では分かりやすく紹介しています。自己肯定感を育み、生き生きと自分らしく生きていくために、「この子はこの子でいい」という境界線を引いて、HSCの性質を長所として捉えるようにすることが大切だと明橋氏は伝えています。
我が子に感じたこと
筆者の長男も赤ちゃんの頃からよく泣き、感受性が高く、慣れるまでにひといちばい時間のかかるタイプです。しかし、安心できる場所であり、安心できる周囲の人であると確認できると、ようやく自分を出すことができるようになります。そんな息子もまもなく年長。ひといちばい敏感であることには変わりませんが、幼稚園での生活にも落ち着き、お友達と遊ぶことを楽しみ、少しずつ息子なりに成長していることを感じます。しかし、環境の変わる小学校生活が始まると、息子にとってはまた試練となるかもしれません。今回本を読んでみて、親ができることとして、彼らしく生きていけるように見守ってあげたいと思います。
HSCの性質を知ることから
ママ友や周囲の情報から一般的な子育てのアドバイスでは、ひといちばい敏感な我が子に対してはどうしてもうまくいかないこともあります。本の中に、
『他の子と違う子を育てようとするなら、他の親と違う親になる覚悟が必要です』
と書かれています。HSCの性質を知ってみることも、我が子の成長につながるヒントが得られるかもしれません。ひといちばい敏感な我が子に生き生きと伸びていってほしいと願う、パパ、ママにおすすめの子育て本です。
文・ゆかりんご 編集・横内みか
■著:明橋大二
■イラスト:太田知子
■価格:1,296円(税込)
■発売日:2018年6月19日
■判型:四六判/234ページ