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子育て世帯の定住促進支援事業に積極的な理由【東京・墨田区】

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区長になった今でも区内を歩けば、「おい亨(とおる)ちゃん、元気で頑張ってるねぇ」と声をかけられるのが墨田区の魅力と語るのは墨田区の山本亨区長。スカイツリー・隅田川花火大会・すみだ北斎美術館などと共に魅力なのが、下町ならではの人情味あふれる人付き合いかもしれません。「永く墨田区に安住してほしい」という想いを、山本区長にお伺いしました。
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13種類の支援事業で育児サポート

――墨田区の子育て支援について教えてください。
山本区長:墨田区では「子どもと親と地域が共に育ち、子どもの利益を優先するまち すみだ」という子育てに関する基本理念を掲げています。三世代にわたって住み続けている家庭も多く、街ぐるみで子どもを育てているのです。
すべての子育て世帯を対象に、利用者支援事業、地域子育て支援拠点事業、妊婦健康診査など、妊娠・出産期から切れ目のない13種類の支援事業を行っています。

――妊婦面談の「ゆりかご面接」もそのひとつですか?
山本区長:そうです。「ゆりかご面接」として、保健師などの専門家による面談を受けると「育児パッケージ(こども商品券1万円分)」をお渡ししています。墨田区は、切れ目ない子育て支援に力を入れていて、そのスタートが妊婦面談だと考えています。

「約100万円」の負担軽減。墨田区が定住促進支援事業に力を入れるワケ

――2018年(平成30年)4月から、子育て世帯向けの定住促進支援事業を始められたそうですね。

山本区長:都心部に近くアクセスの良さから毎年、墨田区の人口は増えています。その反面、小さな子どもを持つ子育て世帯は転出超過傾向にあります。

私も50年以上墨田区で生活していますが、将来にわたってこの地域を活性化させるためにも子育て世帯に永住してほしいと思います。そのための方策について検討を重ねた結果、「三世代同居・近居住宅取得支援事業」、「民間賃貸住宅転居・転入支援事業」「空き家を子育て世帯向けに転用するモデル事業」の3つの事業をスタートすることとしました。

東京23区初!「【フラット35】子育て支援型」との連携による金利優遇でさらなる負担軽減

――「三世代同居・近居住宅取得支援事業」はどのような事業ですか?

山本区長:「三世代同居・近居住宅取得支援事業」は、中学校卒業前の子どもがいる子育て世帯が区内に住む親世帯と同居、または近居する場合、住宅を取得する費用の一部を新築住宅で50万円、中古住宅で30万円助成するというものです。

また、この事業の利用とあわせて住宅金融支援機構の「【フラット35】子育て支援型」を利用する場合は、借入開始から5年間、通常金利から0.25%の金利優遇を受けることができます。

――どれくらいの負担軽減になりますか?

山本区長:「三世代同居・近居住宅取得支援事業」「【フラット35】子育て支援型」の2つの制度を併用した場合、住宅取得費用が約100万円軽減されると試算しています。

――次に、「民間賃貸住宅転居・転入支援事業」とは、どのような事業ですか。

山本区長:小学校就学前の子どもがいる子育て世帯の方が、区内の民間賃貸住宅に転居する場合、転居費の一部を助成するものです。助成の対象は、仲介手数料・礼金・引っ越し費用の3つで、それぞれ12万円を上限とし、最大36万円の助成を受けることができます。

――2つの支援事業は、違う地域からの転入も対象になりますか?

山本区長:区内に住む親世帯と同居、または近居するという条件がありますが、転入も対象になります。やっぱり、子育てするときに近くに親がいてくれると助かりますよね。

――次に「空き家を子育て世帯向けに転用するモデル事業」について教えてください。

山本区長:空き家は全国的に増加傾向ですが、墨田区でも同様の状況です。そこで、子育て世帯の定住促進と空き家の利活用をセットで進めていきたいとの考えからスタートさせたのが、このモデル事業です。区内の空き家を子育て世帯が住みたいと感じるようにリノベーションして、子育て世帯に貸すというものです。

――モデル住宅には、いつ頃から子育て世帯が入居できるのでしょうか。

山本区長:今年度末までには改修工事を完了させて、来年度早々には子育て世帯に入居してもらいたいと考えています。

就任後保育定員を1000人以上増やし、「在宅保育支援」も充実させる

――「引っ越したいけど、待機児童数が気になる」という方もいると思います。

山本区長:私が区長になってから、保育定員を1000人以上増やしていますが、それを上回る需要があり、2018年4月時点でまだ189名の待機児童が出ています。

――待機児童を解消するための取り組みは?
山本区長:現在、認可保育所のさらなる整備を行うとともに、認証保育所にお子さんを預けている保護者には支援として毎月1万5000円から2万5000円の保育料の補助をしています。

――在宅での保育支援にも力を入れているそうですね。

山本区長: 2人の保育士が家庭訪問をして、1人がお子さんの相手をしながら、もう1人が保護者の育児に関する悩みなどの相談に応える「いっしょに保育」と、子育て中のママ同士がお互いに子どもを預け合う「なかまほいく」など、在宅での保育支援も行っています。

「なかまほいく」に参加した新米ママが、次の回では先輩ママとして教える側になってくれたり、自主的に「なかまほいく」に取り組む子育てサークルがうまれたりするなど、子育て支援が地域に浸透してきていると感じています。

「イクボス宣言」で子育て中のパパの意識を変えたい

――2015年(平成27年)に東京都23区初となるイクボス宣言をされたことで話題になりましたね。どんな変化がありましたか?

山本区長:イクボス宣言をしたのは、区役所の男性職員に育児休暇を取って子育てに参加してほしいとの想いがあったからです。子どものおむつを替え、夜中は奥さんに代わって子どもにミルクをあげるなど、少しの期間でもしっかり子育てに参加したほうがいいと考えました。

――山本区長自身、子育ては積極的にされたのでしょうか?

山本区長:うちは子どもが2人いますが、子どもが小さい頃はPTA会長をしたり、野球の試合に送迎したりしていました。私は、元々損害保険会社代理店の営業職だったんですけど、PTA活動などに携わってたくさんのママやパパと話すうちに、子育て世代の声を行政に届けないといけないと思って、45歳で区議会議員になり、その後、53歳で区長になりました。遅咲きデビューですよ。

墨田区は、昔ながらの人情味あふれる下町ですから、みんな仲がいいんです。私も長年この地で暮らしていますが、道を歩いていると、いまだに昔からお世話になっているおじさんたちから「おい、亨ちゃん、頑張っているねぇ」なんて声をかけられることもあります。

墨田区在住のママや子どもたちの情報発信が魅力を伝える力に

――墨田区では、専用アプリをはじめ、SNSも積極的に活用されているんですね。

山本区長:子育て世帯はLINEやインスタ、FBを使う人が増えていますから、区報やホームページでの情報発信とともに、SNSなどにも積極的に取り組んでいます。子どもをお祭りに連れてきてくれて、撮った写真をコメントとともにSNSへ載せてくれるママたちもいます。区民の方から発信していただいた楽しそうな情報が、墨田区の魅力を伝える1番の力になるんじゃないかと感じています。
「すみだ子どもPR大使」というのもあり、子どもたちが墨田区の魅力を伝えてくれるのも、大事な情報発信になっています。

墨田区には、「すみだ北斎美術館」や「江戸東京博物館」「刀剣博物館」、職人さんの工房や店舗と併設された「小さな博物館」など、たくさんの美術館、博物館があり、小学校、中学校での見学も行っているので、子どもたちの目を通して、墨田区の文化的な魅力を伝えられたらと思います。

子育て世帯を対象とした話し合いの会で住みやすい街を実現

――最後に、ママたちへのメッセージをお願いします。

山本区長:墨田区は、子どもたちの夢を育み、叶えることができるよう子育て環境の整備に取り組んでいます。そのためにも、子育て世帯を対象とした話し合いの会、タウンミーティングを開催しています。また、保護者だけでなく中学生など、子どもたち自身からも意見を聴くことで、幅広い世代が住みやすい街を実現していきたいと思います。悩んでいることや、新しい提案などがあれば、どんどん区まで意見を届けてください。ぜひ一緒に「夢」あふれる墨田区を創っていきましょう。

取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶

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