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抗インフルエンザ薬「タミフル」10代に対する使用制限が2018年5月に解除へ。異常行動との因果関係や今後の安全対策について

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インフルエンザの治療薬にはいくつかの種類が存在します。その中で、「タミフル」の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、2007年に服用後の異常行動が相次いだことにより、10代に対する使用制限がかけられていました。しかし2018年5月、10代に対する使用制限を解除したと厚生労働省が発表しました。タミフルについては、10代の子どもに関する異常行動など懸念としてありますが、使用制限が解除されたいま、問題点は解決できるのでしょうか。インフルエンザ流行期に入る前に、タミフルについての知識を深めておきたいところです。

10代へのタミフル使用制限が解除に

10代に対する「タミフル」使用制限解除に伴い、厚生労働省は「タミフル」の製薬会社には、薬の使用説明などを記載している添付文書への改訂を指示する通知を出したそうです。この通知によると、これまでは添付文書内で、10代への使用を差し控えるようにとの警告文が記載されていました。その警告文を削除し、発熱から少なくとも2日間程度は転落などの異常行動に注意するように患者自身やその保護者に対して説明することを盛り込むように求めています。

タミフルとはどんな薬なのか

「タミフル(オセルタミビルリン酸塩)」は、一般的には安全な医薬品です。日本では中外製薬が製造輸入販売元となっています。主な効能・効果は、A型又はB型インフルエンザウイルスの感染症及びその予防です。錠剤だけではなくドライシロップのものも販売されており、乳幼児や高齢者にも投与しやすい配慮がなされています。

タミフル使用制限の流れ

10代への「タミフル」の使用に制限がかかったのは、2007年の飛び降り事故が始まりだといわれています。この事故では中学生の命が失われてしまい、マスコミやメディアは大きく報道しました。その原因がインフルエンザ治療薬である「タミフル」が原因ではないかと疑われていましたが、実際はタミフル服用と異常行動の因果関係は不明だといわれていたのです。しかし、タミフルを服用することで異常行動を引き起こした可能性は否めず、再発の恐れを懸念して、医療機関に対する注意喚起をおこないました。同時に、予防的措置として10代のインフルエンザ患者に対するタミフルの使用を、原則差し控えるという措置が実施されたのです。このときに、タミフルの添付文書に警告文が追記されました。

約10年間タミフル服用と異常行動の因果関係を探り続ける

タミフル服用後の異常行動からくる悲しい事故が起こった当初は、すでにタミフル以外にも抗インフルエンザ薬の「リレンザ」も承認されていましたが、亡くなった中学生に関してはタミフル服用後ということや処方実態が圧倒的に多かったため「タミフル」だけが使用制限の対象となりました。この事故を機に、タミフル服用による異常行動についての研究や検証が行われました。しかし約10年間に及ぶ議論が行われましたが、タミフル服用と異常行動との因果関係はいまだに判明していません。

継続されてきた安全対策措置

因果関係が判明しないままではありましたが、10代に対するタミフルの原則使用差し控え措置を含めた、安全対策措置は引き続き継続されてきました。毎年、前年度の流行シーズン中に起こった異常行動などの副作用の報告状況や、疫学調査の結果を踏まえて、安全対策のあり方を調査会で審議してきました。

検証結果からみえてきた結論

平成21年度以降の「非臨床研究」や、10年に及ぶ疫学研究の科学的な知見をまとめると、タミフル服用時の異常行動と明確な因果関係があるとはいえないということが確認されたのです。薬の処方の有無とは関係なく、インフルエンザに罹ると異常行動が発言しやすくなる点や、タミフルを含む抗インフルエンザウイルス薬服用後の異常行動が起こる確率は、10代と10代未満では明確な差がないという点が、10代に対するタミフル使用制限解除へと繋がったのです。

タミフル使用再開における今後の安全対策と注意点

10代のタミフル服用と異常行動の因果関係があるとはいえないという審議が行われ、使用制限が解除となりましたが、今後の安全対策や、これまでの異常行動の事例を知っておくことはとても重要なことです。

データからみる異常行動に対するポイント

異常行動には「突然走り出す」「飛び降りる」が多くあげられます。報告されている異常行動のうち「突然走り出す」「飛び降りる」が最も多い年代は10代で、5~9歳がこれに続きます。また男児・女児の比率でみると女児よりも男児のほうが多い傾向にあります。これらの異常行動が発生するまでの日数は診断後2日目が多く、次いで1日目という結果になりました。そして一番気になる異常行動を起こしやすいタイミングですが、睡眠から覚醒した直後が最も多くあげられていました。これらのデータはあくまでも数字の上での結果ではありますが、タミフル服用時のみではなく、インフルエンザに罹ってしまった場合にぜひ注意しておきたいポイントとなるでしょう。

厚生労働省の安全対策とは

タミフルだけが異常行動を起こす原因ではないと判明しましたが、異常行動に対する不安はぬぐえない方も多いかもしれません。厚生労働省ではタミフル使用制限解除に伴い安全対策も発表しています。それが「整合性のある注意喚起」です。これまでの注意喚起を改め、10年にわたる具体的な知見の追記を含めた、タミフルだけでなく全ての抗インフルエンザウイルス薬としての注意喚起へと変更します。異常行動については、日本小児科学会等の協力のもと、注意喚起資材を作成するとされています。あくまでも注意喚起のみとなる安全対策ですので、不安はまだ解消できないかもしれません。ママたちにできることは、お子さんがインフルエンザウイルスに感染した場合、療養中の様子の変化を見逃さないことではないでしょうか。それこそが真の安全対策となり、異常行動から子どもたちを守る結果へと繋がるのかもしれません。

正しい知識とケア、そして予防が大切

2007年以降、10代への使用制限がなされていた「タミフル」が使用制限解除となったニュースについてご紹介しました。お子さんがインフルエンザウイルスに感染してしまった場合、「タミフル」を使用することに少しでも不安を感じたなら、かかりつけ医に相談してみるのもいいかもしれません。わからないことをそのままにせず、できるだけ不安を払しょくしておくことは、看病をするママ自身の精神衛生上においても、とても大切です。そしてできれば流行期になる前から、手洗いうがい・早寝早起き・栄養バランスのとれた食事をとるなど、できることを心掛けてインフルエンザに罹らない努力も頑張りましょう!

文・櫻宮ヨウ 編集・横内みか

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