犯罪者に接触したときのために、家庭でできるトレーニングとは #子どもたちを犯罪から守る
子どもを狙う犯罪が後を絶たず、もし我が子が狙われたら……と不安に感じるママも多いと思います。犯罪者から我が子を守るためには、どんなことを準備しておくといいのでしょうか。万一犯罪者と接触した際に備えて、家庭でできるトレーニングを清永奈穂さんに伺いました。ご家庭で練習しておくことで、子どもが犯罪に巻き込まれた際に、自力で逃げる力を養うことができます。
はっきり断る練習
まずははっきり断る練習をしていきましょう。「お菓子をあげるから一緒に行こうと言われたらなんて言う?」とか、「お母さんが病気だから病院に行こうと言われたらなんて言う?」と子どもに聞き、はっきりとした断り方を練習するといいですね。「うーん」「え〜どうしよう」というのではなく、「いやです」「いりません」「お母さんに聞いてからにします」といったやりとりを練習するといいでしょう。
声を出す練習
はっきり断っても無理やり連れて行かれそうなときのために、声を出す練習も大事です。ご家庭では「ママ」や「パパ」でもいいので、自分の好きな言葉を、公園などで大声で言うのもいいと思います。手を振って、遠くの人に声が届くかというのを遊びながらやるといいですね。声を出すというのは人生の宝になります。実際に危険な目にあったら「助けて」と大声で言えるように練習しておきましょう。
もしも犯罪者につかまって部屋の中に入れられた後でも、大声をあげて逃げた例があります。結束バンドで腕をつながれて空き家に閉じ込められた子が、部屋の中で「助けてー!」と大声で叫んだら犯人が先に逃げたのです。このように、つかまっても隙を狙って逃げることができるんだよということも教えてあげるのが大切です。そのためにも普段から叫ぶ練習をしておくといいと思います。
防犯ブザーを鳴らす練習
いざとなったときに声が出ないことはすごく多いので、防犯ブザーをランドセルに付けている子も多いと思います。その際、引っ張る紐はどこにありますか? 実は、後ろから羽交い締めにされたときや手を抑えられたときに、引っ張る紐が腰やおへその位置ぐらいまで長さがあると、かろうじて引っ張ることができます。ご家庭でできることは、後ろからガバっと羽交い締めにされたときや、前から腕をつかまれたときに防犯ブザーが鳴らせるかを練習してみるといいと思います。
子どもが成長するにしたがって、防犯ブザーの紐も長く調整しましょう。学期ごとに一回、長期休みの間などに、電池がなくなってないか、紐は短くないかなど、防犯ブザーの点検をして気を引き締めるといいと思います。
腕ブンブン練習
声を出しても誰もこないときや、防犯ブザーを忘れたときなどに、腕や手首をつかまれたときに逃げられる練習をしておきましょう。腕をつかまれたときにはブンブンと腕を振って、相手の親指と他の指のつぎ目から思いっきりブンとさくように腕を横に振ります。腕ブンブンの練習は子どもは大好きです。「イヤだ!」と言いながら、手をブンブンして引き抜き、逃げるということが一連の流れでできるように練習しておきましょう。
ジタバタ練習
それでもダメな場合は、お尻をつけて相手のすねを思いっきり蹴ります。すねを蹴られると誰でも痛いので、相手が痛がる際にさっと立って逃げる練習をしましょう。お布団の上などで、子どもにジタバタをさせて、10秒の間にお母さんが足をつかもうとして、つかまえられなかったら子どもの勝ちというような練習もいいと思います。
ジタバタする際には、大声を出しながら練習するといいでしょう。実際に子どもがこうしたことで、足をつかめず大声も出されているので逃げた犯人もいるんです。
ランドセルを背負って逃げる練習
どんなに重いランドセルを背負っていても、最低20メートルは走って逃げてほしいと思います。なぜ20メートルかというと、追いかけて17メートルぐらいで犯人は周りに見られて警察に通報されると思ってくるんですね。走りきれない、ランドセルをつかまれるかもと思ったら、ランドセルを捨てて走ります。その時はただ捨てて走るのでももちろんいいし、防犯ブザーを鳴らしてから捨てる、ランドセルを相手に投げつけてから走るのでもいいんです。ランドセルは高いし上等ですが、「あなたの命の方が大事だからね」と言ってあげると子どもは勇気が出ます。
ご家庭で練習するときはリュックを背負って、落として走れるかをやってみてもいいでしょう。小1〜3ぐらいまでは、明らかにランドセルを落としてから走った方が早いのですが、だんだん大きくなってランドセルが小さくなってくると、背負って走る方が早い場合もあります。子どもの成長に応じて、また荷物の重さに応じて自分で判断できるように、普段から走る練習をしておくといいと思います。
噛みつき練習
それでもダメな場合は指の先をめがけて噛みつく、指の先が難しければ肌の出ているところどこでもいいので噛みつく練習をしましょう。人間の歯は武器になります。誰でも噛みついてはいけないことが前提ではありますが、「いざとなったら噛みついてでも逃げて」と話しておくといいと思います。ご家庭では、子どもの腕を親がつかんで、タオルをグルグルに巻いた親の腕に噛みつく練習をすることができます。頭を下げて噛みつくというのは実は勇気がいることなのですが、1回でもやっておくといいでしょう。
伝える練習
何か事件に巻き込まれた際に、「何があったのか」、「どんな人か」、「どこで起きたのか」など覚えていることを伝えることが大切だということも教えてあげてほしいと思います。「どんな人か」というのは男か女か、その特徴などですが、メガネや帽子は捨てて逃げられるので、「靴」をちょっとでも見ておくといいと思います。自転車や車は、何か番号を一つでも覚えておくといいでしょう。
実際に、人通りの多いところで後ろから手をつかまれたお子さんがいて、「そうだ噛みつくんだった」とガブッと嚙みついた例があります。その子は噛んだ際に犯人の靴を見て、おうちに帰ってから「赤い靴を履いてた人につかまれた」と伝え、それが逮捕に結びつきました。「靴」を見ることは大きな手がかりになります。
また、子どもは「悪いことしてるのは黒い服をきたおじさん」という思い込みがある場合があります。普段から、怪しい人の中には女の人やざまざまな人がいるということを話しておきましょう。
普段から、何があったのかを話す習慣をつけておく
いいことも悪いことも含めてちょっとしたことを話すという習慣をつけておくのはとてもいいと思います。子どもは忘れやすいので、「今日の帰り道は誰と帰ってきたの?」「あの道のお花咲いてた?」といった通学路を想起させるような質問をこちらからすると、「そういえばあそこに車が止まってて、ジロジロ見る人がいた」と言った話が出てくるかもしれません。そうすれば気になったら見に行くとか、地域の方と情報共有することもできます。子どもとの日々の会話は犯罪から身を守るためにも、とても大事にしてほしいと思います。
取材、文・山内ウェンディ 編集・横内みか