「自分の幸せ」と「子どもを立派に育てること」は別物!専業主婦だった妻が自分の夢を見つけられたワケ
「子どもに幸せになってほしいと思うなら、まずは親自身が幸せであることが大切」と話すのは、慶應義塾大学大学院で「幸福学」の研究を行う前野隆司先生。現在、夫婦で「幸福学」について研究を続ける前野先生ご夫妻ですが、過去「幸せを感じていたのは自分だけで、妻は幸せを感じてなかった」ことにショックを受けた時期があったといいます。「夫婦それぞれの幸せの見つけ方」について、伺いました。
「幸せを実感できる4つの因子」とは
子どもが幸せに生きるために大切なことは、親自身が幸せであること。様々な人にインタビューした結果、幸せ度が高い子どもは、その両親も幸せであることが多いという結果が出ました。両親が仲の良い家庭の子どもは幸せなのです。だから親が幸せであることが、子どもを幸せにするための一番の条件です。
人が幸せになるためには、「4つの因子」が満たされていることが大切です。
第1因子「やってみよう!」因子。夢や目標を持ち自己実現や成長を実感する
第2因子「ありがとう!」因子。誰かを喜ばせたり、愛情を受けたりと、人とのつながりを大切にする
第3因子「なんとかなる!」因子。自己肯定感が高く、いつも楽観的でいる
第4因子「あなたらしく!」因子。自分らしくマイペースでいる
「4つの因子」がバランスよく満たされていると、人は幸せを実感しやすい。これは「幸福学」の研究結果です。
「子育て」=「自分の幸せ」ではない
うちの妻の話ですが、以前アメリカに住んでいる時、妻は現地で専業主婦をしていました。ある日、子どもと一緒に行った公園で様々な国のママと話す機会があり、まわりのママから「夢」について聞かれたそうです。
「あなたの夢はなんなの?」と聞かれた妻は、「子どもをしっかり育てることよ」と答えたといいます。そしたら「違う、それは子育てでしょ。あなたのやりたいことは何なの?」と聞かれたそうです。そのとき妻は「え? まったくない」と、当時すごくショックを受けたそうです。
日本では「子どもを持つ親の幸せ=子どもを立派に育てること」となりがちです。でも、アメリカでは違っていました。子育ては素晴らしいし、楽しくて、大切。だけど、それと並行して、自分が本当にやりたいことは何なのかを考えるべきなのです。妻は子どもが中学・高校になるまで悩み続け、ついに見つけたのが、僕と一緒に「幸せの研究をする」ということだったのです。
僕は幸せだけど、妻はそれほど幸せではない事実
当時、僕は幸せの研究をしていて、自分自身も幸せに満ちていました。けれど妻に聞いたら、「幸せだけど、あなたほどじゃないわよ」といわれて、すごくショックを受けました。当時、私は研究で忙しかったこともあり、「君は子育てをする。僕は自分の研究をする。役割分担だよね。お互い力を合わせよう」と伝えていました。しかしこれをキッカケに「妻のことをもっと親身になって考えよう」と思ったのです。
それまでは、まさか幸せの研究を一緒にするとは思っていませんでした。2013年頃、僕の取り組んでいた研究が人手不足で、たまたま妻の手が空いていたのです。そこで「この研究、人が足りないのだけど、やる?」と声を掛けたら「そうか! 研究を一緒にやる選択肢もある」という話になりました。「幸せの研究を夫婦でやるって絵になるよね」などと二人で盛り上がり、研究結果を論文として投稿したら通ってしまったのですよ。これで妻は立派な研究者です。
「やりたいこと」を見つけたことでイキイキとしてきた
妻は幸福学の研究員として幸せを広げる活動をしています。2017年には、「あなたの本は分かりにくいから、私がもっと分かりやすい本を書く!」といって、ついに『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』という本を出版しました。やりたいことが見つかってから、妻は、これまで以上にイキイキしています。妻が「やりたいこと」を見つけられたおかげで、家族はみんな幸せです。
ママもパパも子どもも幸せ。家族みんなが自分のやりたいことを見つけて、それに向かって進んでいくことが、家族みんなが幸せでいるための秘訣です。
子育て中のママは、子どものことでかかりきりになり、なかなか自分のための時間が取れないことでしょう。しかし、だからこそ、意図的に自分のやりたいことを見つけて、1日30分でもやってみると、幸せ度が上がるでしょう。
ママが幸せであることが、子どもや家族全員の幸せにつながります。幸せは伝染するんです。「自分のワクワクすることやトキメクことは何だろう」と、自分自身の夢や目標を見つめ直してみることをおすすめします。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶