イギリスのナーサリーがお手本。子どもに伝わる叱り方とは?
毎日怒ってばかりで、自己嫌悪になることも
やっていいことと悪いことがまだちゃんと区別できない、言葉で意思疎通することもおぼつかない……そんな2歳から3歳くらいの子どもと向き合う毎日は、大変なことも多いですよね。
小さい子どもの好奇心旺盛な行動は、ママがやってほしくないこともやるし、あぶないことをやってしまうことも。公園で他のお友だちの物をだまって取る。お店の中を走り回る。家のキッチンを荒らす。おやつがほしいとダダをこねる、などなど。
これはダメ、といけないことをきちんと子どもに教えないと。そんな思いで一生懸命なママが、いつの間にか毎日怒ってばっかりいるようなこともあるかもしれません。
筆者も毎日子どもに怒ってばかりいるような気持ちになることがありました。きちんと子どもに伝わるように叱るというのは難しいです。きちんと言葉で伝えようという気持ちが、いつの間にか子どもの行動に反射的に口を出して怒ってしまう、自分が思っている以上に口うるさくなっているような気がしていました。
イギリス流子どもの「叱り方」とは
筆者は娘が2歳のときにイギリスに引っ越したので、イギリス式の現地のナーサリーに娘が通うことになりました。
2歳から3歳の子どものクラスには、娘のように英語が第2言語でほとんどわからない子もたくさんいます。そのクラスの先生がどうやって子どもの行いを正すのか、という話をしてくれました。
子どもの行動を正すには3ステップの対応をするそうです。
1. 子どもの行動を止める
子どもがやってはいけないことをしたら、まず声をかけて、子どもの行動を止める。その子と向き合って、その行動をやってはいけない理由を説明する。
2. 2回同じことをしたら次回どうなるかを伝える
もし、同じことを2回したら、そのときも同じように対応する。そして、次に同じことをしたら、どうなるかを伝える。
3. 3回目は何が悪かったのかを考えさせる
3回目にまた同じことをしたら、声をかけて子どもをその場から離れさせ、このときは子どもを椅子に座らせる。1分か2分程度、ひとりで椅子に座らせて、何が悪かったのかを考えさせる。考える時間が終わったら、先生と考えたことについて話す。
悪いことをした子を離れた椅子に座らせるというのは、「シンキング・チェア」とか、「お仕置き用の椅子」とか呼ばれることもあるそうです。昔からイギリスでは小学校や家庭でも使われていた方法だと聞きました。学校で悪いことをした子を教室の後ろや廊下に立たせるのと同じような意味合いだったようで「罰を与える」というものだったのかもしれません。
今はそういう「罰を与える」ものではなく、「自分のしたことを考えさせる」ことを重視していて、少なくとも娘のナーサリーではそういう「お仕置き用の椅子」といった呼び方はせず、子どもを長く椅子に座らせるのもNGでした。子どもを落ち着かせるのには2分で十分なのだそうです。
子どもの行動を止めることと叱ることの間の「一呼吸」に効果あり
「これはやってみよう!」 と実践してきた筆者ですが、この方法は子どもを落ち着かせて、考えさせることができるだけでなく、大人が怒りすぎてしまうことも避けられる方法だと実感しました。特に自分の子どもへの声の掛け方に変化がありました。
やってはいけないこと、特に危ないことをやめさせるとき、とっさのことで大きな声を出したり、慌てたりして、子どもが行動をやめた後もそのままずっと大きな声で怒り続けてしまっていました。
でも、子どもの行動を止め、それから子どもに向き合う。その順番で動くと、子どもに話を始める前に一呼吸して、ちょっとした時間が空くのです。その時間が大人にとってはとても重要で、一呼吸するうちに、とめどなく怒り続けてしまいそうになる勢いが自分の中からなくなっていく感じがします。子どもの目を見ながらしっかり話せるようにもなりました。
毎日子どもと向き合うパパやママは、行き詰まることもあると思います。叱り方に迷ったり、怒りすぎていないかと心配になったり。そんな気持ちになったとき、こんな方法もあることを思い出して、子どもとの向き合い方をちょっと考え直してみるのもいいかもしれませんね。
文・野口由美子 イラスト・めい