「離乳食を食べないなら断乳すべし」にひそむ矛盾
ちょっと理系な育児のsumireです。WHOガイドラインを中心とした母乳育児の本『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』の出版を記念しての連載、今回は離乳食と母乳の関係について、書籍からピックアップしてみたいと思います。
離乳食を食べないわが子……解決法は「断乳」しかないの!?
このように、「離乳食を食べない」という悩みには、「断乳すれば食べるようになるよ」というアドバイスがつきものですよね。
一方で、WHOは「補完食」という言葉を使っていて、目的もやり方も、日本の離乳食とは少し違っているようです。
日本では、「離乳食」を食べないことを悩むお母さんに断乳を勧める光景がよく見られます。ところが、「補完食」の目的は、「早く乳離れさせること」でも「平均的な量を食べさせること」でもなく、「大人と比べて栄養摂取能力が低い幼い子どもでも、必要な栄養とエネルギーを補給すること」です。
WHOのガイドラインには、「補完食を食べる量が少なければ断乳すべき説」を始め、乳離れを急がせるようなアドバイスは一言も出てきません。WHOガイドラインには、「最近は/先進国は、ミルクの質がいいから、ミルクで育つ赤ちゃんも、母乳で育てる場合と同じやり方でよい」などという文言もありません。むしろ、WHOは、母乳を飲んでいない場合は、その分の栄養をカバーするために「生後6カ月から、1日4~5回の食事と、1~2回の栄養豊富な軽食を与えましょう」といったように、回数・量はより多く、また栄養の質やエネルギー密度が高い補完食を食べさせるように指導しています。つまり、食べる量が少ないという理由で断乳することは、「たくさん食べられない子に、さらにたくさん食べさせなければいけない」という、矛盾した課題が生まれることになります。
書籍「ちょっと理系な育児(母乳育児編)」p.160「離乳食を食べないなら断乳」の矛盾 より抜粋
母乳を飲んでいる場合は、比較的少量でも必要な栄養素とエネルギーを補うことができると考えられているので、必要な食事量も少なくて済むようです。幼い子は大人のようにたくさん食べられないので、効率よく栄養とエネルギーを補給するために密度の濃い食事が必要になります。
断乳すると、母乳で簡単に摂取できていた栄養素を食事で補うために、必要な食事量が増えます。WHOは、幼い子どもはご飯を食べる能力が低いという前提で、母乳も重要視しています。
「離乳食」は、その名の通り「乳離れのための食事」であり、何かと母乳と対立しがちです。でも、「補完食」は、「食事と母乳はお互いに赤ちゃんに必要なものを補い合うパートナー」であり、どちらも重要な栄養源として考えられています。
離乳食を食べない子にはどうやって食べさせたらいいの!?
WHOガイドラインには、効率よく栄養補給するコツもたくさん書かれています。
幼い子どもは大人と比べて、食事のみで必要な栄養をまかなえないことが多いので、それを前提に、いかに必要な栄養を補っていくかが大切なんですね。離乳食と母乳のバランスについてさらに詳しく知りたい方は、書籍やブログもぜひのぞいてみてくださいね!
ちょっと理系な育児 母乳育児篇
作:牧野すみれ
出版社: 京阪神Lマガジン
文・sumire イラスト・あい