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子どもの誤嚥・誤飲事故は、すべてママの責任だと言い切ることができますか?

※2019年1月時点の情報です。

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毎年およそ1,000人の乳幼児が誤嚥(ごえん)・誤飲事故によって救急車で運ばれているのをご存知でしょうか。消費者庁によって子どもの事故防止をつとめる取組方針も発表されましたが、それ以降におもちゃや煙草、ピーナッツやミニトマトをのどに詰まらせて死亡した例もあります。

今回、子どもの誤嚥・誤飲事故をインターネットで調べていると、見かけたコメントに違和感を抱きました。

「母親のくせになぜ目を離した?」
「目を離した親の責任だ!」
「あくまで自己責任であって、事故の責任はメーカーに転嫁するものではない!」

ママを責める声が大半を占め、恐らく子育てを経験したであろう人によるコメントも同様だったからです。

「子どもに何かあれば即、母親の責任」は乱暴!?

ママは子どもの面倒を見ているだけではありません。人によって生活はさまざまですが、以下のようにたくさんの“仕事”をしています。

・育児
・家事(掃除、洗濯、買い物など)
・人によっては仕事
・夫のお世話(自分のことぐらい自分でしてほしい)
・舅姑のお世話または介護
・無視できないご近所付き合いなど……

食事・睡眠・排泄など、生き物としての最低限の欲求さえも自分の意志ではできないのが小さい子どもを持つママの日常です……。それなのに誤嚥・誤飲事件ではそんなママにさらに鞭打つコメントの数々。ママは子どもを産んだ瞬間に”すべてを完璧にこなせるサイボーグになれ”というのが社会の通念なのでしょうか。イチ母親がサイボーグになれるわけがありません。

じつは先日、家事と多少の仕事そして3歳と1歳の子どもの育児ですでにアップアップしている私にとある事件が起きたのでお話していきます。

事件は常に現場で起きています

事件は夕食後の我が家で起きました。夫はいつも通り仕事で深夜帰宅予定。家には3歳児・1歳児・ママの私、計3人です。子どもたちは、夕食後お腹いっぱいでリラックスモード。とはいえ、ママは流し込むように立ち食いをして片づけに追われている時間です。

あれもやらないと、これもやらないと、という考えに一瞬蓋をして、ほんの数十秒の息抜きタイム。リビングにいる子どもたちの様子が伺えるようにと、ドアをフルオープンでトイレタイムを開始しました。そこへママの家庭内ストーカー、絶賛後追い中の1歳3か月の息子がやってきたのです。

夜の繁華街でよく見かける酔ったオジサンのような千鳥足で、私めがけてフラフラと歩きながら満面の笑みで近寄る息子。なんとなく口元を見てみると、何やらモグモグと咀嚼中……。歯磨きも終わったというのに、何を食べているのだ!? そしてどこから調達したというのか!? 慌てて息子の口をこじ開けると、息子の手が届かないようにとキッチン台の奥の方によけていたはずの、晩ご飯の残りの唐揚げが。

息子用に作ったささみの唐揚げ。一口サイズとはいえ十数個ほど食べていたのにそれだけでは飽き足らず、短い腕を必死に伸ばして我が家の低いキッチン台から唐揚げをゲットした模様です。そんなに大きいもの、誤嚥でもしたら……。

子どもの小さい口から、必死で大人用の唐揚げを掻きだそうとするママの腕をすり抜け逃走する息子。出かけていたモヨオシもそこそこにズボンをあげ、トイレを出た私が息子を羽交い絞めにして何とか口の中の唐揚げを出させようと試みるも、息子は頑なに口を開けずに咀嚼を続け、ついには念願の大人用唐揚げを完食したのです。大人の本気にも負けることなく。乳幼児の力は侮れず……子どもといえど侮ったらだめですね。

自宅に安全な場所はない!?ママの神経は張りつめっぱなし

幸い息子は誤嚥をしませんでした。トイレとはいえ一瞬でも目を離した私の危機管理が甘いのでしょう。しかし、我が家で一番高い場所にあるキッチン台ですら口に入れると危ないものは置けないとすると、でき上がったばかりのおかずはどこに置けばいいのやら……。冷蔵庫の上? 食器棚の中?

どれだけガードしても突破される引き出しや、何なら椅子を引きずって踏み台を用いてまで、気になるものを手に入れようとするわずか生後数年の幼児の好奇心にはほとほと感心するばかりです。子どもと過ごすということは常に自分以外の人間の危機管理を担うということ、神経を張り巡らせなければならないのが母親業なのだと痛感しました。

ただ、365日24時間、自分の睡眠中でさえ子どもたちの危機管理を担えと言われても、ママは生身の人間であって残念ながらサイボーグではありません。日本のビジネスパーソンがハードワーカーとはいえ、ブラック企業の社員さえトイレで最後まで用を足す権利くらいあるはずなのに、ママにその権利はないのです。

上の子がいたら、子どもの危機管理はさらに難易度アップ

とくに上に兄姉がいる家庭なら、兄姉が気に入っているほとんどのおもちゃに書いてある「3歳以下のお子さんには与えないでください」という説明書きに悩むはずです。たくさんあるおもちゃの対象年齢を確認すると、3歳以下の子どもに与えてよいおもちゃなどごくわずか。説明書きを鵜呑みにするのなら、3歳以下の子どもはベビーゲートの中に隔離する育児の覚悟を持たなければなりません。

下の子は隔離されて刺激を受けないかわりに、兄姉と触れ合うこともできない……。それでは子どもたちの成長の機会を奪っているのと同じ。そんな気持ちと安全管理で板挟みの葛藤もママにはあるのです。

ママだって、子どもを事故に遭わせたいわけじゃない!

「母親なのに…!」
「目を離すなど、母親失格だ!」

自己責任論にすり替えればすべてが丸く収まるので、今回の誤嚥・誤飲事故では「母親の責任だ」というコメントが多いのも致し方ない面もあります。しかし、ママだってそれぞれの経験に応じた危機管理能力を持って子どもに接しているはずです。子どもの事故が起きてしまうのは、核家族が標準な家庭の中とっくに限界まで来ているママばかりに、安易な「自己責任論」で子育ての責任を追及する日本の現状にも問題があるのではないでしょうか。

子どもの誤嚥・誤飲事故を含む不慮の事故は年々減少傾向にありますが、まだゼロではありません。しかし、消費者庁による取組方針で誤嚥・誤飲事故について詳しく知る大人が増え、社会での子育てが実現したら、ママも少しは安心して子どもにおもちゃを与えることができるでしょう。24時間神経が張りつめているママの「子どもを安全に遊ばせたい」という気持ちを汲んであげられる時代が近づいているのかもしれませんね。

参考:東京消防庁、消費者庁

文・桃山順子 編集・物江窓香

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