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<ACEサバイバーとは?>幼少期の虐待が成人後の生きづらさに?二次被害に苦しむ人たちにできること

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みなさんは「ACE」という言葉を聞いたことがありますか? 「ACE(Adverse Childhood Experience)」とは「逆境的小児期体験」という意味で、子ども時代(0〜18歳)に経験する深刻なストレスやトラウマ体験を指します。その影響は大人になってからも続くとされ、「ACEサバイバー」の生きづらさは深刻な問題となっています。ACEと一見無縁な人も、知らないうちに無用な言葉でACEサバイバーを傷つけているかもしれません。今回は2025年10月に参議院会館で一般社団法人Onaraが行った「~緊急院内集会!ACEサバイバー支援の実現に向けて~― 孤独・孤立、自死リスクに立ち向かうために ―」の内容から、ACEサバイバーを巡る課題や今子育てをしている私たちができることについてお伝えします。

なぜACEサバイバーが問題に?健康と経済の問題

ACEの具体例

そもそもACEの具体例としては、

・身体的虐待(殴る、怒鳴るなどの暴力行為)
・心理的虐待(侮辱や脅迫などの精神的な虐待)
・性的虐待(性的な接触や行為)
・身体的ネグレクト(十分な衣・食・住を与えない)
・心理的ネグレクト(情緒的な無視)
・家庭内暴力の目撃(家族などの暴力や虐待の目撃)
・家族の精神疾患(自殺未遂)
・家族のアルコール、薬物依存症
・家族の服役歴
・親の離婚・別居

といったものがあります。

ACEの経験数が多いほど健康問題のリスクが高まる

大阪大学大学院准教授の三谷はるよ先生によると、ACEの経験数が多い=ACEスコアが高いほど健康問題や社会経済的問題のリスクが高まるそうです。

実際にアメリカで行われた研究結果でも、ACEスコアと、虚血性心疾患・がん・糖尿病・アルコール依存・薬物注射・2週間以上の抑うつ気分・自殺未遂などの慢性疾患との間に明らかな関連も見られました。ここには子どもの頃に植え付けられたトラウマによって、成人後にストレス反応を処理するシステムや脳、遺伝子にまで影響が出ることが予想されています。トラウマを克服するための過食や喫煙、薬物やアルコールの乱用、性的逸脱行動や若年妊娠、非行といった依存行動が、生きる術となってしまっているのです。

健康問題は社会経済的問題へつながる

心身を害したACEサバイバーたちは健全に働くこともできなくなることから、経済的損失も生まれます。ACE関連の健康被害による年間経済的損失は北米で7,480億ドル(約110兆円)、欧州では5,810億ドル(約86兆円)とも試算されています。

こうした状況からアメリカでは学会での発表や公的なデータ収集、ACE予防や対策など、ACEサバイバーを社会問題として対応しようという動きが急速に広がっています。

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日本の成人の4割はACEサバイバー!?

日本ではACEの実態はどのようになっているのでしょう。

日本でもACEスコアが高いほど健康・経済の問題が

京都大学が2021年に20歳から69歳の男女を対象とした調査(有効回答数2万人)や、JACSIS学術研究チームが2022年に15歳から79歳の男女を対象に行った調査(有効回答数3.2万人)などがあります。調査の結果、身体的虐待や親の離婚などをどれか1つでも18歳までに経験したことがあるという人は38.4%にまで及びました。つまり日本の成人の約4割はACEサバイバーであることがわかったのです。またACEスコアが高いほど慢性疾患や心身の不調、低学歴や貧困、未婚や離別、社会的孤立のスコアも高くなっており、ここには相関関係があることが判明。法務省による「令和5年犯罪白書」でも少年院在院者の約9割がACEという調査結果も出ました。

ACEにさらされる子どもたちに起きること

具体的に子ども期に虐待や逆境を経験するとストレス反応の調節不全や免疫系の混乱、脳の変形と認知機能低下、愛着関係の形成不全といった状況に陥りやすくなります。やがてそれらは、心身の不調や病気、依存的行為だけでなく、情動コントロールの困難、強い自己否定感と他者不信へと繋がります。その結果、学校や職場への不適応、反社会的行動、不安定な社会経済的地位、対人関係の困難や社会的孤立といった困難になるため、非常に生きづらくなってしまうのです。

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ACEサバイバーを救う「トラウマインフォームドケア」とは

このように生涯にわたって健康や社会活動、人間関係にも影響を及ぼすACE。兵庫県立尼崎総合医療センター小児科長の毎原敏郎先生はACEサバイバーの若者に対して「トラウマインフォームドケア」という、心的外傷に関する十分な知識を持った配慮や支援の重要性を唱えます。

「トラウマインフォームドケア」とは「すべての人にトラウマ体験があるかもしれない」という前提で対応する支援のこと。トラウマの原因は本人ではなく外部にあるという視点で、過去の経験とそこから生じる症状を丁寧に評価します。そのうえで、相手を再び傷つけてしまうことを避けながら支援することを目指します。一方的に支援したり思い込みで話を進めたりするのではなく、双方が協働関係である点が特徴のひとつです。

ACEサバイバーの人が専門家にケアを求めるとき、この「トラウマインフォームドケア」に対応してもらえるかどうかは大きなポイントとなってくるかもしれません。

ACEサバイバーを苦しめる二次被害 自分も加担しているかもしれない!?

実際にACEサバイバーの人の生きづらさは、ただ単に「過去の虐待を思い出して辛い」といった困難にとどまりません。自身もACEサバイバーで一般社団法人Onaraの丘咲つぐみさんは、幼少期から両親から身体的・心理的虐待を受けたことを告白しています。幼少期の家庭は貧困ではなく、問題行動や勉強の遅れなどもなかったことから第三者の目には虐待や異変が見えづらく、「理解されない」という苦しみを抱いてきました。11歳に心身症を発症した後、高校生で不登校となり、卒業後は療養生活へ。

【丘咲つぐみ】プロフィール写真

成人後は精神科にかかってうつ病や強迫性障害などの診断を受け、手術や入退院を繰り返します。そしてトラウマの再体験や離婚によるシングルマザー生活、生活保護受給、周囲からの二次被害が丘咲さんを苦しめました。それは「殴られるあなたに問題がある」、「虐待は子どもの頃なんだから」、「こんな立派な親御さんが虐待するわけがない」といった周囲の決めつけや無理解です。

困難を抱えているのに理解されないために支援や治療から遠ざかり、さらに社会的に孤立してしまうという悪循環。これはたとえば私たちが助けを求めているACEサバイバーに無意識のうちに「虐待なんて昔の話なんだから言い訳にしちゃダメ」と声をかけてしまうことでも起こってしまうでしょう。

今まさに子育てをしている私たち。わが子をACEサバイバーにしないために、ACEについての知識を深めることはもちろん大事です。そして友人や職場にもACEサバイバーがいるかもしれないと意識することも、覚えていかなければならないのではないでしょうか。

文・AKI 編集・編集部 イラスト・猫田カヨ

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