私の「母乳育児失敗談」に、オランダ人の助産師さんから思わぬ一言
「母乳育児は赤ちゃんとの絆を育む」
「母乳は赤ちゃんにとって完璧な栄養食」
「母乳育児はお母さんの体にもいい」
母乳育児の大切さを病院で聞いてきた日、当時妊娠中の私も、「完全母乳で!」と意気込んでいました。
でも、母乳育児って簡単なものではないですね。
私の母乳育児は失敗
出産後、実際に母乳育児がスタートしましたが、1日15回以上母乳をあげても、なかなか母乳は出てくるようにならず、私は疲れ果てていました。ついには体調を崩してしまい、赤ちゃんを抱きあげることもできなくなってしまいました。
もっと食事に気をつけないといけない、もっと母乳マッサージが必要なのかも、とあれこれ考えてみたものの、体が動かないことにはどうにもならず、代わりに私の母が子どもに粉ミルクをあげるようになりました。まだ小さな赤ちゃんなのに、母乳の出ないおっぱいをすぐに口から離して泣き出してしまい、さびしい思いをしたのが最後です。
母乳育児は完全に失敗した私ですが、子どもは健康に育っていきました。それでも何となく、母乳育児のことは、子どもに対して申し訳なかったような気持ちがありました。
オランダ人の助産師はどう考えた?
今、私が住んでいるオランダの助産師さんに、そんな私の思い出話をしたことがありました。彼女は、もう今は助産師の仕事をしていないのですが、私の母くらいの年齢で、時々自分の母に接しているような気分になります。彼女がこんなことを言いました。
「どっちにすべきか、ではなくて、自分はどうしたいのか、ということよ。ママがリラックスできてハッピーなのが、赤ちゃんにとっては一番なのよ。こうしなくちゃいけない、とか、これはやってはいけない、とか、そんなことばかり考えてもダメなの。私たちは自由なのよ」
「ママがハッピーになれること」も大事
私は母乳育児を「すべき」と思っていました。いつの間にか「母乳信仰」にがんじがらめになって、リラックスして授乳できていなかったのかもしれません。それで余計に母乳が出なくなっていったのかも、と今は冷静に考えることができますが、当時はそんなことまで思いも及んでいなかったのです。
私は、自分は自由でなかったなぁ、と反省しました。母乳育児がうまくできない人の気持ちは、その人でないとよくわからないかもしれません。母乳がきちんと出る人でも、母乳育児がいつもうまく続けられるとは限りません。大変な時もあるかもしれません。
母乳が赤ちゃんの栄養として一番いいのは確かで、それは確かに正解なのだと思います。でも何が正解か、ということだけでなく、ママがハッピーでいられることも大切にできるといいですね。
文・野口由美子 イラスト・んぎまむ