ユースケさん☓須賀健太さんが語る 映画『バースデーカード』天国の母から届く人生のサプライズとは?
10月22日(土)より公開となる、映画『バースデーカード』。幼い子どもたちを遺し天国に旅立った母親が、彼女たちが20歳になるまで送り続ける誕生日カードをめぐる物語です。
手紙を通してさまざまな人生のヒントや出会いを受け取る娘・紀子を演じるのは、橋本愛さん。若くして亡くなり、手紙を書き残す母・芳恵役は宮﨑あおいさん。
さらに一家のムードメーカーであるやんちゃな弟・正男役に、須賀健太さん。そんな鈴木家を大きな愛情で包む父・宗一郎を演じるのが、ユースケ・サンタマリアさんです。
「母と娘」の心の交流を軸にしたストーリーですが、そんな彼女たちを温かく見守るのが「父と息子」。そろってこの前日に完成作品を観たばかりというその男性陣、ユースケさんと須賀さんに話をうかがってきました。
まっすぐ飛び込んできてくれたので、自然とパパになれました
──完成作をご覧になっての感想はいかがですか?
須賀健太さん(以下:須賀)「本当に温かいお話で……。僕、宮﨑あおいさんが最初に登場したとき、すぐに泣きました(笑)。じつは僕は一度も(劇中で)お会いしていないので」
ユースケ・サンタマリアさん(以下:ユースケ)「あ、”これがお母さんか!”って?」
須賀「そうなんですよ。そういう感動もありました」
ユースケ「それは須賀くんと、(橋本)愛ちゃんならではの目線だよね。俺は家族の中で唯一、全世代と一緒にいたのよ(*劇中では紀子・正男の幼少時代を複数の子役が演じた)。ひと夏だけだったけど鈴木家のパパだったし、10年間の子どもの成長をものすごい早送りで観た気がしましたね。だから今日、久々に須賀くんに会ってびっくりしちゃって……髪が緑色? おまえ、本当に正男か?!」
須賀「はっはっはっ! すいません、つい、やっちゃって……」
──本当のパパみたいですね(笑)。パパとしては、娘と息子ではやっぱり扱い方が違ってくるんですか?
ユースケ「それはそうですよね。ふたりとも俺は愛しているけど、紀子は女の子だからちょっとデリケートに扱う感じがあるよね。でも正男とは、やっぱり男同士だし」
──おふたりのシーンになると、空気が急にゆるやかになりますよね。
須賀「僕はそれがすごくうれしくて。ユースケさんと男ふたりになったときの感じ、独特なものがありましたよね」
ユースケ「俺たちはコメディリリーフだなんて全然意識していないんだけど、よかったよね? 鈴木家はそういう家族なんですよ。明るく見えるけど愛する妻・ママが亡くなっているという寂しさを共有しているから、絆も深いし。家の中でもそこにいるのは3人なんだけど、つねに”4人家族”という意識がありましたね」
──ユースケさんには、あまり父親役というイメージがないような?
ユースケ「やったことはあるんですけどね。でも年齢的には須賀くんや愛ちゃんみたいな子どもがいても、まったくおかしくないし。ふたりもそうだし、子役の子たちもまっすぐ飛び込んできてくれて、最初から僕の”子ども”になってくれたんですよ。だからもう、こっちも自然にパパになっちゃいました」
──須賀さん、ユースケさんのパパぶりはいかがでしたか?
須賀「僕としては、本当に助けてもらいっぱなしというか。リハのときから毎回いろんなアドリブをしてくださって(笑)。あ、でもちゃんと物語の世界観からは外れていないですよ!」
ユースケ「そこで”サンタマリア”に戻ってどうするの(笑)!?」
須賀「いやいや(笑)。それで助けてもらったんですよ。僕は役柄的には一家のムードメーカーという立ち位置だったので、その点でもすごくありがたかったというか。カメラの前以外でも、お話しているのがすごく楽しかったです」
ユースケ「須賀くんは、もちろん普段は礼儀正しい青年なんだけど、正男のときは本当にバカなんだよな(笑)。手がかかるけど、『しょーがねーな』っていう。本当に鈴木家のムードメーカーだったよね」
須賀「とくに最後のほうは、お父さんと息子っていう感じがよく出ていましたよね」
娘を持つ父親なら、絶対にグッとくるシーンだと思う
──ああ、結婚式のシーンとか。ユースケさんが花嫁の父になるとは、驚きでした。
ユースケ「紀子と腕を組んでバージンロードを歩いて花婿さんに引き渡すんだけど、そのとき紀子が僕の顔をじーっと見て……あ、でもそのシーンはカットされたのでないんですけど。愛ちゃんが『パパ、ありがとね』って表情で、すごい目でじーっと見つめてくるんですよ。それがもう……。そのあと『お父さんがどんな顔をするか、撮りたいです』と監督に言われて撮ったんですけど、昨日(完成作をはじめて)観て、びっくりしたよ。俺の気持ちとしては、笑顔で送り出したかったわけよ? それがすごい苦しそうな顔してて……でももう、自然とそうなっちゃったよね」
須賀「完全に”お父さん”ですよね」
ユースケ「うん。(新郎は)いいヤツだから任せられるとは思ってるけど、たまらなく寂しい、っていう。俺の紀子が……っていう気持ちが、つい出ちゃったな」
──あそこは思わず笑ってしまいました。
ユースケ「うん、そういう人もいるでしょうね。でも父親なら、とくに娘を持つパパならグッとくるところじゃないかなって思うな」
──今回は「母から娘へ送るカード」のお話ですが、これが「父から息子へ」だったらどんなものになると思いますか? たとえば「最後のカード」となる20歳の誕生日に送るカードだったら?
ユースケ「俺と(宮﨑)あおいちゃんの立場が逆転したら?ってことだよね。俺だったらとにかく”女の子を泣かせるな、快楽に溺れるな”と」
須賀「(笑)」
ユースケ「”女の子に夢中になるのもわかる。だけど勢いに任せるな”と。あとは”健康に気を使えよ”ってことかな」
須賀「それ、生きている人間同士の手紙やり取りですよね(笑)」
ユースケ「最後はマジメなことで締めるとしても、ちょっと笑えるところも入れて。男同士ですからね。”保健体育の授業はしっかり受けろ”とかね(笑)」
須賀「それ、中学生の子に向けた手紙ですよ(笑)。でも(物語中で)お姉ちゃん(紀子)宛の(母からの)手紙にも、キスの心得が書いてありましたからね」
ユースケ「あれは母親だから娘に書けるんだよね。パパからは言えないよ。絶対にキスなんかしてないって、思い込もうとしているのに。キスなんかしてないよなっ!?って感じなのに(笑)。正男に宛てるのだったら、”30歳くらいまでは好きなことをやんな”というのも書くかもしれないな。”夢があるなら全力で追いかけろ”って」
親の目線からも子の目線からも、感じてもらえることがたくさんあると思う
──すっかり「父と息子」ですが、共演されてお互いの印象はどうでしたか?
ユースケ「須賀くんは(子役時代の)ちっちゃい印象が強かったんですよ。なので”いい男になっちゃって”という感じですね」
須賀「うれしい。これは絶対に太字で書いておいてください! 僕は(ユースケさん主演の映画)『交渉人 真下正義』が大好きで、ちっちゃい頃に本当に一番よく観ていた作品なんですよ。だから今回ご一緒できたことはむちゃくちゃうれしくて。一方でバラエティーとかで拝見しているユースケさんのイメージもあったんですけど、今回はどっちの顔も見られたし、いっぱいお話もできて……」
ユースケ「うん、マジメな話もバカみたいな話もしたよな」
須賀「それがすっごくうれしかったです、純粋に」
──では読者のママたちに向け『バースデーカード』の見どころを教えてください。
ユースケ「ママにはぴったりだよね。ママだったらこれを観たらもう、きっと……」
──泣いちゃいますよね……。
ユースケ「僕は”泣ける”とか”感動”っていうことばは、正直ちょっと苦手なんですよ。だから”泣けますよ”とは言いたくないけど、きっと親目線で感じてもらえることがたくさんあると思う。ママだけじゃなくて、全世代の方が感情移入できる話だと思いますよ。本当にあったかい作品なんです。……なのに、なんで髪を緑色に……」
須賀「(笑)すみません。やんなきゃよかったです。でも本当にお母さんならではの見方というのが、ある作品だなって思います。僕の親が……祖母はもういないんですけど、よく言うことがあって。『毎日いっつも考えているわけじゃないんだけど、ふとおばあちゃんのことを思い出して泣きそうになるんだよね』って。僕はこの映画から、そういう空気感を感じました」
ユースケ「うん。こういうことなんだな、って思うよね」
須賀「僕や紀子、パパも生きていて毎日毎時間ずっと考えているわけじゃないけど、手紙をもらったときやきれいな景色を見た瞬間にふとお母さんのことを思い出すんだろうなって。そこにグッとくる映画ですね。親の言っていた感覚が、僕自身もこの映画を通してはじめてわかった気がします」
ユースケ「ママが死んだから、悲しい。それだけじゃない映画なんですよね。素敵なものを遺してくれて、今もずっと寄り添ってくれている。3人家族なんだけど、つねに4人でいるような愛情で満たされているのを感じます」
須賀「”死”というものが、マイナスだけになっていない映画ですよね」
ユースケ「そうそう。この映画、あまり死=悲しいこととして描いていないんです」
須賀「そこを感じていただきたいなって思います」
どこにでもいそうな家族の物語をていねいに、愛情たっぷりに描いた「バースデーカード」。ママやパパはもちろんすべての世代の人が自分を重ね合わせて観ることのできる、心温まる作品です。ぜひご家族みなさんで映画館に足を運んでください。
『バースデーカード』
2016年10月22日(土)ロードショー
監督・脚本:吉田康弘(注:吉は土に口) 出演:橋本愛 ユースケ・サンタマリア 須賀健太 中村蒼 谷原章介 木村多江 宮﨑あおい ほか
取材、文・鈴木麻子 撮影・山口真由子