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【福田富一栃木県知事・第1回】少子化は待ったなしの大きな課題。経済的負担を減らす政策に着手したい

栃木県知事福田富一さま_1

栃木県知事を5期連続で務める福田富一知事。20年近く栃木県のトップとして、県民が暮らしやすい街の実現に尽力されています。3人のお子さんの子育てを経験された福田知事は、子育て支援にも熱心に取り組んでこられてきました。そんな福田富一知事に、栃木県の子育ての実情や支援策をお聞きしました。

【ママスタセレクト】栃木県知事福田富一さま_プロフィール画像

栃木はいちごの生産が56年 連続日本一!世界遺産「日光の社寺」も登録から25年を迎える

――まずは栃木県がどのような土地か、教えてください。

福田富一栃木県知事(以下、福田知事):栃木県はいちごの生産量が56年連続で日本一です。「いちご王国・栃木」として、「とちあいか」、「とちおとめ」などの品種を生産しています。最近ではミルクのように白い「ミルキーベリー」も生産されるようになり、幅広い品種のいちごを全国に提供しています。また「日光の社寺」が1999年(平成11年)に世界遺産に登録されてから、2024年(令和6年)で25年を迎えました。足を運んでくださる方もたくさんいます。あとは県庁所在地の「宇都宮市」は餃子の街として全国でもよく知られています。北関東に位置し、首都圏と東北の両方からのアクセスもよい地域です。

差し迫った課題は「少子化」

――お話をうかがうと食や観光で魅力の多い県だと感じますが、子育てに関してはどうですか?

福田知事:栃木県に限らず全国的にいえることですが、「少子化」は大きな課題です。若い世代が「結婚をしない」という選択をすることも少なくありませんが、結婚を希望しつつも相手に巡り会えない、経済的な不安が理由でその希望が叶えられないといった現状もあります。また社会全体で核家族化が進んで人間関係が希薄になり、家庭や地域の「子どもを育てる力」が低下しているように感じます。というのも昔は“地域全体で子どもを育てる”という風土があって、自分の子でなくても褒めたり叱ったりするような子育て文化がありましたが、今はなくなりつつあるように思います。そのような構造が子育て家庭の孤立にもつながっているのでしょう。栃木県の合計特殊出生率も低下が続いていて、2023年(令和5年)は過去最低の1.19となりました。この数値からも、少子化は待ったなし、先送りができない大きな課題だと思っています。

――栃木県で行っている、子育て世代向けの政策について教えてください。

福田知事:昨年秋から、結婚、妊娠・出産、子育てといった各ライフステージに応じた、切れ目のない支援を積極的に行う「とちぎ少子化対策緊急プロジェクト」に取り組んでいます。

第2子の2歳までの保育料を免除。でもなぜ第2子が対象?

――その「とちぎ少子化対策緊急プロジェクト」の具体的な内容を教えてください。

福田知事:2024年度(令和6年度)の目玉事業に「第2子保育料免除事業」があります。この制度では、所得制限を設けることなく、認定こども園などに通う第2子のうち、0歳児から2歳児(3号認定こども)の保育料を免除します。実際に免除するのは市町で、県は免除を行う市町への助成を行う形です。2024年10月からの助成実施に向け、現在は県内各市町と調整を進めているところです。

――保育料の免除は子育て世帯は助かると思いますが、なぜ第2子が対象なのでしょうか?

福田知事:栃木県の出生数の状況を調べたところ、第2子の減少割合が第1子や第3子以降よりも大きかったからです。さらに国の調査によると、理想の子どもの数を持たない理由として、経済的な負担を挙げた人の割合がもっとも高いのです。これらのことから、第2子の保育料を免除することにしました。ちなみに第3子以降に関しては、従来から保育料は免除されています。

――他にどのような子育て支援がありますか?

福田知事:「産後ケア利用者負担軽減支援事業」も重要な支援策のひとつです。これは、出産後のママの心身のケアや育児のサポート、育児についての相談が受けられる取り組みです。出産後1年以内の母子が対象で、市町と契約をした産科医療機関で数時間のケアや宿泊を伴う手厚いケアが受けられます。生まれたばかりの赤ちゃんも一緒となりますが、ママが休んでいる間は施設のスタッフが面倒を見てくれます。個人負担額は市町によって異なりますが、栃木県では1回あたり1,250円を上限に補助する制度を実施しています。

――産後の悩みを相談でき、ママ自身も体を休ませることができるのは良いですね。実際にはどのくらいの方が利用されているのでしょうか?

福田知事:自己負担額を減額する制度は、最大5回まで利用できるのですが、残念ながら産後ケアを利用する方が少ないのが実情です。第2子以降の出産の場合は上の子がいるので、そのお子さんのお世話を誰が引き受けるのかがネックになっているのかもしれません。また現在、対応する施設が地域によっては少ないのも課題で、今後はもっと増やしていきたいと考えています。

栃木県が行う「妊産婦医療費助成制度」とは

――栃木県の妊婦さん向けの制度は、どのようなものがありますか?

福田知事:「妊産婦医療費助成制度」は、妊婦さんが病気やケガなどで医療機関を受診した際、医療費の自己負担額が助成される制度です。自己負担は医療機関ごとに月500円。妊娠・出産に伴う医療費も医療保険が適用となるものはもちろん助成の対象ですが、たとえば、妊娠中はお口の中のトラブルが起こりやすいため、この制度を使って、この機会に歯科受診される妊婦さんもいらっしゃるようです。

――妊産婦医療費助成制度は、県内のすべての妊婦さんが使えるのですか?

福田知事:そうです。全国では市町村が独自に助成を行う場合はありますが、都道府県が全市町村の妊婦さんを対象として助成しているのは、栃木県を含めて4県のみです。そのうち所得制限なしで助成しているのは栃木県だけです。栃木県が「妊産婦医療費助成制度」を創設したのは50年以上も前のことで、1973年(昭和48年)です。全国で最も早く取り組んだという歴史があります。栃木県は、全国に先駆けて妊婦さんや赤ちゃんのことを考えていたと自負しています。

――申請の手続きはどのようにするのですか?

福田知事:妊娠届を市町に提出した際に申請することで、受給資格者証の交付が受けられます。医療機関を受診する際にその受給資格者証を出すと医療機関から書類が渡されます。そちらをお住まいの市町に提出し必要な手続きをとることで、いったん支払った医療費が払い戻されます。
医療機関ごとに月500円は自己負担となりますが、ほかに払う費用はありません。金銭的な面で少しでも負担を軽くすることで、子どもを産みやすい県にしたいと考えています。

編集後記
栃木県では妊婦さんや出産後のママさんに対して、経済面での手厚い支援を行っていることがわかりました。子育てとお金は切っても切れない関係ですから、このような支援はありがたいと感じる人も多いでしょう。金銭的な負担が少ないだけで、気持ちの上でも余裕が生まれるのではないでしょうか。

次回は、栃木県がすすめる「とも家事」などについてお聞きします。

※取材は2024年6月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第2回へ続く。

取材、文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・おんたま

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