乳首マッサージは母乳育児に本当に効果があるの?
ちょっと理系な育児のsumireです。WHOガイドラインを中心とした母乳育児の書籍『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』発売を記念して、短期連載させていただくことになりました。今回は、書籍の中から、乳首マッサージの効果についてご紹介したいと思います。
「乳首マッサージをすると母乳が出る」のは都市伝説!?
みなさんは、「妊娠中に乳首マッサージをしておくことで、やわらかくて飲みやすいおっぱいになって、母乳育児がうまくいく」というような話を聞いたことはないでしょうか?
そもそも、母乳育児をするために、乳首マッサージはどのくらい効果があるのでしょうか?
妊娠中の乳首マッサージについては、WHOは、「不要派」です。
(中略)
理由① 1992年に行われた調査で、「潜在的に授乳に困難がある」と告げられた女性の1割強が、「じゃあ母乳育児はやめておこう」と考えを変えてしまうなど、「乳房チェックを慣例化すること自体が害である」というエビデンスもある。
理由② マッサージ自体に母乳率を上げる効果はない。
理由③ マッサージに苦痛を感じることも多い。
つまり、私たちはこう言われても、あまり気にしないでおきましょう。
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.52「マッサージはしなくてOK!」より転載
マッサージで乳首はやわらかくなる?
そもそも、乳首マッサージを行った結果、乳首の伸展性は向上するのか気になりますよね。参照論文(※1)に、1つの結果が書いてありました。
産後の乳首の解剖学的な改善は、妊娠中に準備をしたかどうかにかかわらず、約半数の女性にみられた。
意外ですが、実は、マッサージをしなくても、同じくらい乳首に変化があったんですね。(※2)
今では、乳首マッサージは、産後の母乳率を高める効果も、飲みやすい乳首にする効果も、そんなに期待できないと考えられています。
科学的には、「母乳育児が軌道に乗るかどうか」は、お母さん自身が乳房マッサージを頑張ったかどうかよりも、「医療スタッフの知識とスキルが適切であるかどうか」にかかっていることが明らかになっています。より短時間・少ない回数で母乳を効率よく飲むための授乳姿勢や、母乳の生産量をちょうどよくするための授乳の仕方などを知っていることで、母乳育児がスムーズにいきやすくなるからです。
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.52「マッサージはしなくてOK!」より抜粋
British Medical Journal 304: 1030-l032 Altman D G 1991 Practical
(※2)出産するたびに、乳首は自然と柔軟になっていったという調査結果もあります。
ちょっと理系な育児 母乳育児篇
作:牧野すみれ
出版社: 京阪神Lマガジン
文・sumire イラスト・ちうね