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なぜ子ども関係の政策があとまわしにされるのか?ママ・パパたちがやるべきこと【参議院議員 山田太郎さん・第5回】

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前回からの続き。「子どもの問題はいつもあとまわし。いくら訴えてもなにも変わらないなら言うだけムダ」と思ったことはありませんか? これに対して「声をあげないと子どもの問題はあとまわしにされ続ける」と話すのは参議院議員の山田太郎さん。保育園待機児童や「小1の壁」「小4の壁」問題をはじめ、変わりつつある学校教育現場について話を伺いました。また2023年スタート予定の「こどもDX」など最先端情報もお届けします。
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子ども関係の政策があとまわしにされる理由

――なぜ子どもの問題はいつもあとまわしにされてしまうのでしょうか?

山田太郎さん(以下、山田さん):多くの国会議員からしたら、子どもの問題は他のことよりも優先度が低いからではないでしょうか。高齢者が足しげく選挙や選挙応援活動に励む一方で、子育て世代はあまり選挙に行かない。子どもは投票権を持っていない。そうすると子ども政策は票にならないと思われ、予算も取れず縮小される、という悪循環があります。
1,700以上ある日本の地方自治体では、人口1万人以下の市町がその3分の1も及び、多くの小さな自治体では、予算もない専門家もいない、そして子ども専門の部署があるところは珍しく、職員も配置されない自治体もあります。これが子どもの問題があとまわしにされてしまう理由です。自分たちが地域の現場から声をあげて行動しないと、いつまでたっても主張や要望は届かないし、仕組みは変わりません。

待機児童問題、「小1の壁」「小4の壁」はどう乗り越える?

――長らく課題となっている、待機児童問題については今どうなっているのでしょうか?

山田さん:保育園の待機児童問題ですが、実はいま問題になっているのは都市の一部になろうとしています。地方で、駅から遠いなど条件が悪いところは定員割れしてしまっているところもあります。一方、駅や職場に便利なところは、保育園の設置の基準を満たす物件の確保が難しく、また、保育士の待遇改善もおこなっていかないと、なり手もいなくなってしまいます。現実に即した、保育園の確保と保育士の待遇改善は待ったなしです。

――ほかにも、子どもが小学校に入学して学童の保育時間が短くなり、ママが時短勤務にするか仕事を辞めなければいけなくなる、といった問題もあります。

山田さん:学童の保育時間が短くなったり、子どもが小学校入学で不安定になったりすることから親が仕事を辞めざるを得ないなど、社会的な問題に直面するのが「小1の壁」。学童保育では4年生以上を預かっていないこともあり、親が仕事を辞めなければならない「小4の壁」です。今までこの問題を国レベルで解決する司令塔が不在でした。今後は、放課後の子どもの居場所についてもこども家庭庁が主導していくことが決まったので、今後改善が進んでいくことが期待できます。

「教育DX」で子どもの勉強の仕方はどう変わる?

――教育DXとはどのようなものですか?

山田さん:教育DXとは、教育デジタル・トランスフォーメーションのことを指します。簡単にいえば、教育にITを取り入れて学びの質や教育現場の改善、先生も働き方を改革していきましょう、ということです。とはいえ、教育DXはただ単にパソコンを使う、デジタル黒板を使うというものではなく、生徒一人ひとりの理解度に合わせて必要な教育をおこない、それぞれの子どもたちの理解度を深めたり、学習不足の子には、その進度に寄り添った方で学習をサポートすることが必要です。

すべて、担任の先生が全教科を学び教えるより、教科を教えるだけなら教え方のうまい専門家や先生が授業を動画などでオンライン配信し、各教室の先生たちは現場で子どもたちのサポートをする。そのほうが合理的に教えられるし、生徒の理解度や考える力は格段に深くなります。そして教室では、先生は完璧な学習準備に追われ余裕がない状態から、もっと一人ひとりの子どもたちの学校での生活に寄り添った形になるはずです。私はこういった方針の転換も含めて、国全体で議論していくことが必要だと思っています。

社会を変えるためにママやパパが今やるべきこと

――社会を変えるために、ママやパパは何からはじめたらいいですか?

山田さん:まず現状を知ってほしいです。それから子育てをしているときに気づいたこと、子どもをめぐる問題で気になったことに、「これはおかしい」と声をあげてください。

これまで子どものことなどで問題があっても、家庭内や身内だけでなんとかしよう。近所の人にもママ友にも、ましてや会社には迷惑をかけたくないから、家族だけで頑張ろう。こういう感じだったと思います。でも「他人に迷惑をかけない」のではなく、「困ったときはお互いさま」で、助け合う方向で考えるべきです。価値観を変えていかないと社会は変わりません。

子育ての最大の問題は、孤立化しまうことです。子育ては、みんな人生で初めての経験をしているにもかかわらず、1人でかんばってしまっているでしょ。最近はSNSの普及からママ同士がつながることもできますが、孤立している人はまだまだ多い。子育ての問題であれば、誰かに話を聞いてもらう。自分に余裕があるときは、別の誰かの話を聞いてあげる。子育ての経験があれば、困っている人の役に立つこともできるでしょう。

――「子育てが終わったら自分は関係ない」ではなく、現役世代をサポートしていく側にまわる、ということですね。

山田さん:せっかく子育ての経験があるのだから、その経験を役立て話し相手になって欲しいですね。行政も、子育て中のママやパパのためにいろんなサービスを用意しています。住んでいる地域の市のホームページを見たり、問い合わせたりして、積極的に活用してほしい。その一方で、各役所も「わかりにくい、もしくは使いにくいサービスはないか」と、問題に向き合うべきです。今、政府の方で「こどもDX」という取り組みを始めています。

「こどもDX」子どもの各種申請手続きがオンライン化に

――「こどもDX」とはなんですか?

山田さん:母子手帳の申請、妊婦健診、予防接種、健康診断、保育園の申請手続など、子育て関係の行政手続きを、オンライン化しようと計画しています。まずは、2024年(令和6年度)申請分から、保育園を利用する際に必要となる就労証明書のデジタル化を進めます。これによりマイナポータルを通じてオンライン申請ができるようになります。個人的には、「将来的にSNSを使って子育て相談、交付金なども申請不要で振込完了」などそういうところまでやっていくべきではないかと思っています。

ただ、今あげたことがすぐに変えられるかと言ったら時間はかかるでしょう。だからこそ「こども家庭庁」が司令塔となり指揮を取りやっていくべきです。子どもは日々成長しています。実現化する前に子どもが成長してしまった、ということにもなりかねません。なにか意見やアイデアがある人は、ママスタセレクト編集部を通じてでも、私のところに直接意見を送ってもらってもいいので伝えてください。(※1)私も子どもが1人いますが、言わないままだとなにも変わりません。ともに伝えて、一緒に変えていきましょう。

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取材、文・間野由利子 編集・荻野実紀子 イラスト・マメ美

「こども家庭庁」に届けたいご意見・ご要望など聞かせてもらえますか?

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