【アルバルク東京・安藤周人選手】わんぱく坊主でも「静かにして」と言われなかった。プロバスケットボール選手の幼少期とは?【前編】
今活躍しているプロアスリートは、幼少期はどのようなお子さんだったのでしょう? 特にスポーツをするお子さんをもつママにとっては、とても興味深いことですよね。
その疑問に答えてくれたのが、プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」に所属する安藤周人(あんどう しゅうと)選手です。どのように子ども時代を過ごし、またどのように育てられてきたのでしょうか。
家族の深い愛情に支えられ、プロへの道を駆け上がった安藤選手の幼少期について伺いました。
ひたすら走り回るわんぱく坊主な幼少期
――小さい頃はどのようなお子さんだったのですか?
安藤選手(以下、安藤):一言でいうと、わんぱく坊主でしたね。兄のバスケの試合を家族で見に行ったときに、僕は試合なんて全然見なくて。試合が終わるまで、体育館をぐるぐるぐるぐる、ずっと走り回っていたと聞かされています。
――元気いっぱいで、なかなか静かなときがないお子さんだったのですね。
安藤:本当に落ち着きがなかったですね。落ち着きがなくてしょっちゅうケガをするから、親は大変だったと思います。
――ご家族からは「静かにしなさい!」とは言われなかったのですか?
安藤:止められることはなかったですね。諦めていたと言ったほうがいいのかな。というのも僕は、誰かについて行く、どこかに行ってしまうということがなかったんです。「ここにいるから帰ってきてねと言ったら、絶対帰ってくるから心配はなかった」と親が話していました。
家族がつないだバスケットボールへの道
――小学生からミニバスケット(ミニバス)をやられていたと伺いました。
安藤:そうですね、小4からやりはじめました。本当は小1からやりたかったんですけど、7歳上の兄が先にバスケをはじめていて。母親から、さすがに僕まで手が回らないので、「お兄ちゃんが高校生になるまではガマンして!」と言われたんですよ。
だからやらせてもらえるまでは、家の前にあるリング(バスケットゴール)で兄が練習しているのを邪魔しながら、一緒に戯れていました。それをやり続けてやっと小4でミニバスに入れました。
――お兄さんもバスケをされていたのですね。
安藤:そうです。兄・姉・母・父、家族全員がバスケをやっていましたね。
――親子で同じスポーツをやっていると、みんなで楽しめそうですね。家庭でもアドバイスをもらったりしていたのですか?
安藤: バスケに関しては、とくに母親は何も言わなかったですし、今も言いませんね。父親は 「やっぱりこうしたほうがよかったんじゃないか?」というようなアドバイスを言っていました。
――どちらかというと、お父さんがアドバイスされることが多かったのでしょうか。
安藤:最初はそうでした。でも僕は父親の話を全然聞かなくて、親よりコーチを優先していましたね。父親に「こうしたほうがいいんじゃない?」と言われても、「いやコーチがこう言っているから」と言ったりして。僕としては悪気なく言っていたんですけど、そのうち親のほうが「口を出すのはやめよう」と思ったみたいです。僕から聞かない限り、簡単なアドバイスをするくらいであとは何も言ってこなくなりましたね。プロになってからは、両親ともにとくに何も言いません。
――わが子のこととなると親は「もっとこうしたほうがいい」と口を出したくなるものかもしれませんが、ご両親は「コーチに従う」という安藤選手の考えを尊重されたのですね。
安藤:そうかもしれません。僕の経験上、いろいろなことを周りから言われすぎると、わからなくなってしまうんですよね。結果的にこの距離感でよかったんだろうなと思います。
中学・高校の試合を見に来る両親。チームメイトは「お前の親スゴイよね」
――ご家族のサポートはどのような感じだったのですか?
安藤:僕が小さい頃から、親はずっと試合を見に来てくれていました。中学生、高校生になってからも、会場がどこであろうと必ず試合の応援に来てくれていましたね。
――どこでも必ず応援に駆け付けられていたとは、素晴らしいですね!
安藤:いろいろな人から言われますね、「お前の親スゴイよね」と。チームメイトや大学の同期にも「めっちゃ見に来てくれるよね」と言われます。僕からしたら小さい頃からずっと普通のことだったけど、全国から来た学生に話を聞いてみたら、「そんなことないよ」と。
「スゴイことをしてもらっているよ」と言われたときは、「そうか、これが普通じゃないんだ……」と思い、親への感謝の気持ちが大きくなりました。試合を見に来るだけが愛情ではないですが、そうは言ってもなかなかできることではないと、今では思います。
―― ご両親が試合を見に来てくれるのは、やはり嬉しいものですか?
安藤:そうですね、嬉しいです。親が見に来てくれるから頑張ろうと思えます。こうやってバスケができる環境を作ってくれているのは親なので、だらけた姿を見せるなんて許される行為ではないと思っています。
栄養バランスを考えた母の手料理がプロアスリートを育てた
――家族のサポートというと、やはり食事が大事だと思います。安藤選手は小学生から高校生にかけて、食事のどのようなことに気を付けていましたか?
安藤:やっぱり一番は、お菓子ではなく、ご飯をバランスよくたくさん食べることですね。うちの母親は働いていたんですけど、ご飯づくりの手を抜くことはなくて。どれだけ疲れていようが、子どものためにご飯や弁当を作るのは普通にやってくれていましたね。
――お母さんが作る一番好きな料理や、勝負飯はありますか?
安藤:勝負飯はなかったですが、母親の作るご飯は何でもおいしかったですね。あらためて聞かれるとすぐに出てこないですけど、母親の作る料理は何でも好きです。
栄養面はしっかりしていたみたいで、そのお陰で今もめちゃくちゃ元気です。母親はスゴイんだな……と思いますね。今は実家に帰ったら、スゴイ量のご飯が出てきます。
――とにかく「お腹いっぱい食べなさい!」みたいなお母さんですか?
安藤:そうですね。「お腹いっぱい食べなさい!」、「好き嫌いを言わずに、出されたものは絶対に残さずきちんと食べなさい」と言われてきました。そのお陰でたくさん食べるようになり、好き嫌いがなくなったんじゃないかと思います。
スポーツと学校の勉強の両立は難しい?安藤選手の場合は
――ちなみに、お勉強の方はどうだったのですか?
安藤:中学校に入ってからは散々でしたね。小学校の頃は、ちょっと覚えておけば余裕だったのに、中学校に入ってからは全然わからなくて。常に平均点みたいな成績でしたね。もっと勉強を頑張ったところで、成績は上がらなさそうという感覚でいました。
――わが子がスポーツだけ頑張っていても、親としては勉強も頑張ってほしいとつい思ってしまいがちです。この考え方についてはどう思われますか?
安藤:目指す場所によってはちゃんと勉強をしないといけないですが、スポーツのプロを目指すのであれば、スポーツだけに集中することも重要です。とくに中高生の子には、ムリして勉強をさせすぎなくてもいいんじゃないかなと思います。大人になってから学べることもたくさんありますしね。もちろん勉強を全くしないわけではなくて、ある程度はできたらいいですね。
もしお子さんがプロを目指したいなら、親は食事や送迎などスポーツを頑張るための良い環境を作って、「勉強はある程度しておきなさい」と言うくらいでいいんじゃないかなと思います。
(編集後記)
安藤選手の話を聞いていると、家族から惜しみない愛情を受け、大切に育てられてきたことがよくわかりました。子どものやりたいことを全力で応援する、子どもが好きなことを好きなだけ目一杯やらせてあげることこそが、スポーツでプロを目指す子どもへの最大のサポートなのかもしれませんね。
取材・編集部 文・櫻宮ヨウ
<アルバルク東京について> アルバルク東京は、男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUEに所属する東京都を本拠地としたチームです。2018-19シーズンには史上初の2連覇を達成。 さらにはアジアのチャンピオンチームが戦うFIBA ASIA CHAMPIONS CUP2019も勝ちぬき、日本のクラブとして初のアジアチャンピオンとなりました。 2022-23シーズンは、新たにアドマイティスHCを迎えた新体制でのスタートとなり、バスケの聖地と言われる国立代々木競技場第一体育館で、4年ぶりのBリーグ王者を目指します。チームカラーはアルバルクレッドとジェットブラック。皆さまと共に一丸となって歴史を作っていきたいとの想いを込め、クラブスローガンに「WE」を掲げています。これからもアルバルク東京を中心に「WE」の輪を広げていきます。
アルバルク東京の2022-23シーズンホーム開幕戦となる第2節は10月7日(金)・8日(土)に千葉ジェッツと対戦します。