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たった1回の「できた」が自信につながる。マット運動が苦手だった女の子

pixta_35234020_M子どもに自信をつけさせたいとき、どうしたらいいのでしょうか。「ほかの子と比べるのではなく、その子自身に注目しできるようになったことをほめてあげることで、子どもは自信をつけます」と語るのは、全国に17園ある保育園「天才キッズクラブ」の理事長であり、『天才キッズクラブ式「最高の教育」』の著者である、田中孝太郎先生。保育園に通うある一人の女の子の話をしてくれました。

「やらせない、教えない、無理強いしない」

毎日、保育園の子どもたちを見ていると、いろんな発見があります。その中から1人の女の子に起こった変化について、お話します。

ある日の朝、年長さんクラスの子どもたちは、逆立ち歩きの練習をしていました。クラスのなかにはみんなが「ブリッジ→起き上がる」という練習をするなか、数名の子どもたちが座って練習を見学していました。「天才キッズクラブ」保育園では、「やらせない、教えない、無理強いしない」をモットーにしています。そのため子どもが自発的に練習に加わるまでは、無理にやらせたりはしません。

見学していた子たちは徐々に練習に加わっていったのですが、そのなかで最後に練習に加わった女の子はるかちゃん(仮名)は、なかなかみんなのようにマット運動がうまくできませんでした。みんながマットの上に立ったままブリッジをして、そこから起き上がるという動作をしているとき、はるかちゃんも同じようにブリッジをするものの、そこからなかなか体を起こすことができないのです。

ほんのちょっとの工夫で、できなかったことができるようになる

じつは、はるかちゃんは最近入園したばかりで、まだ運動に慣れていなかったのです。そこで私は、一緒にいた先生に頼んで「ちょっとマットを持ってきて頭のところを高くしてあげて」と伝えました。そしてマットの上と床との間にちょっと段差をつくりました。目線の位置、手をつく位置、ブリッジから起き上がる時の重心の掛け方、足を置く位置を変えるだけで、いままでできなかった子たちもできるようになります。

たったこれだけのことをやっただけで、はるかちゃんは、みんなと同じようにブリッジから立ち上がる動作ができるようになりました。いままでできなかったことをできるようになったとき、はるかちゃんはすごく満足そうな顔をしていました。それを見た私も、すごく嬉しくて「よし! できたね!」と声をかけました。

たった1回の「できた」が自信になる!

はるかちゃんは、1回できたら自信をつけたようで、どんどん自分で練習してあっという間にみんなに追いつけたのです。練習のあと、担任の先生が子どもたちの前で、「今日がんばった人!」ということで、みんなの前ではるかちゃんの名前を呼び、たくさんほめてあげました。一緒にマット運動をしていた子どもたちも、はるかちゃんが今日初めてブリッジから起き上がることができたことを見ていたため、口々に「おめでとう!」と伝えました。

「おめでとう! おめでとう! おめでとう!」。園内に響き渡るくらいの大合唱で、言われたはるかちゃんもとても嬉しそうでした。

この日の出来事は、はるかちゃんにとってすごく大きな意味があったと思います。まだ入園したばかりとはいえ、みんなができて自分ができないとなると、コンプレックスに感じてしまうこともあります。
でも、そこで無理させずやってみよう」と待っていたからこそ、自発的に練習するようになったのです。できなかったことをできるようになったため、今日はみんなの前ではるかちゃんのことをたくさんほめてあげました。たったこれだけのことですが、はるかちゃんは「私はやればできる」という自信をつけたのです。

一番大人しい、元気がない子、自信がない子に注目

多くの保育園や幼稚園では、「できる子にスポットライト」を当てます。上手にできる、お手本になる子にスポットライトを当てることで、みんながその子に憧れるからです。これはこれですごくいいことだと思います

「天才キッズクラブ」では、デキる子だけではなく、一番大人しい、元気がない子、自信がない子にも同じように注目します。その子が自信をつけてきたら、クラス全員が影響を受けるからです。もっといえば、子どもたち一人ひとりに注目してみています。大切なのは、他人との比較ではなく、過去の自分と比べてどれだけできるようになったことを、みんなの前でたくさんほめてあげる。たったこれだけで、子どもは自信を持てるようになります。

他人と比べるのではなく過去の自分と比較

年長さんから入園してきたはるかちゃんは、最初はブリッジから起き上がることができませんでした。練習にも消極的でした。そんなはるかちゃんが自分からマット運動に参加するようになり、最終的には、ブリッジをして起き上がるところまでできるようになったのです。誰も気にとめていなかったら見過ごしてしまうような些細なことかもしれません。
しかし、先生やほかの友達がはるかちゃんの変化に気がつきました。そしてみんなではるかちゃんのことを応援し、成長を一緒に喜んだのです。この出来事を境目に、はるかちゃんは、毎日ブリッジの練習をするようになり、今では逆立ち歩きまでできるようになりました。

もしも、「うちの子、ほかの子と比べてできないことが多いな」と感じることがあったら、1日前、1カ月前、半年前と比べてどんな変化があったか考えてみてください。そのうえで子どもにも伝えて、できるようになったことを親子で一緒に喜ぶ。たったこれだけで子どもは自然に自信が持てるようになってくるのです。

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タイトル:『天才キッズクラブ式「最高の教育」』
著者:田中孝太郎
出版社:きずな出版
発売日:2020年12月4日

取材、文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ

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