グリルこんろで重症のやけど。9割近くが歩き始めの子どもに集中
食事の準備時、ほんの一瞬子どもから目を離した隙に子どもがこんろのグリル扉などを触って重度のやけどを負う事例が発生しています。医療機関ネットワークによると、39件の事例のうち大人の件を除いた36件はいずれも月齢8カ月から2歳1カ月の子どもだったことがわかりました。いったいどんな状況でケガをしたのでしょうか? 子どもを怪我から守るためにはどんなことをしたらいいのでしょうか。
「なんでも触ってみたい」。好奇心が強い歩き始めの子どもは要注意
グリルでやけどを負った子ども36人のうち、なかでも多かったのが1歳1か月の子ども。8件と全体の5分の1近くを占めています。つたい伝い歩きができるようになり、好奇心も旺盛になってくるころから、あちこち触るうちにグリル扉などにも触ってしまったのかもしれません。時間帯は18時台が12人と最も多く、ママが夕食の準備をしている横で遊んでいてやけどしてしまったことが分かります。
「手が届くと思わなかった」「柵を閉め忘れた」。事故は未然に防げなかった?
実際にどのような状況で起きたのか、見てみましょう。
『使用後の魚焼きグリルのガラス面に触れ、左 掌てのひら をやけどした。触ったすぐ後に流 水で冷やし、保冷剤で冷やした。左掌ほぼ全体が赤くなり、水疱すいほう ができた』(1歳0カ月)
『6 時半頃、朝食の準備をしているとき、子どもが伝い歩きでキッチンに入って来て、 調理中の魚焼きグリルのガラス面を左手で触ってしまった。普段は進入防止用の柵をしてい て、子どもがキッチンに入らないよう気をつけていたが、このときは柵を閉めるのを忘れてしまった』(1歳2カ月)
『グリルで魚を焼いているとき、子どもがつかまり立ちをして、グリルの側 面に手をついてしまった。グリルまで手が届くとは思わなかった』(10カ月)
グリルの高さは、1歳前後の身長の子と同じくらいです。そのため子どもがつたい歩きをしているとき、誤ってグリル扉に触ってしまいやけどすることに。また、いつもは子どもがキッチンに入らないよう柵をしていても、時には締め忘れてしまうこともあります。また、大人に比べて子どもは皮膚が薄く、やけどをすると深いやけどになります。場合によっては完全に治るまでに何度も病院に通院しなければいけないほどのひどいやけどになることもあります。グリル扉のやけどから子どもを守るためには、何をしたらいいのでしょうか?
専門家が教えるグリル扉のやけど防止対策は?
独立行政法人 国民生活センターでは、専門家からのアドバイスとして、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間情報研究部門 西田佳史先生の話を紹介しています。それによると、事故予防対策は次の2つ。
1、柵をして子どもをキッチン、グリルに近づけないようにする
まず大切なことは、使用中はもちろんのこと、使用後もしばらくは、柵などをつけて子どもをキッチンに入れないこと。グリル窓は表面温度は150℃以上になる場合もあります。魚焼きグリルを使用した実験では、加熱を止めてからグリル扉が50℃を下回るまでに約15分かかることがわかりました。また、キッチンにはグリルのほかにも、ポットや刃物など子どもにとって危険なものもたくさんあります。できるだけ柵などをして、子どもの出入りを防ぎ、キッチンに近づけないようにしましょう。
2、高温抑制扉を採用しているグリルを購入。または別売の扉に換える
子どものやけど防止のためには、複層ガラスや表面を樹脂で覆ったグリル扉など、高温抑制されたグリル扉を使用しているグリルを購入するのも手です。また、使っているグリルの種類によっては、高温抑制している別売りの扉と取り換えられるものもあります。今使っているものが高温抑制されたものか、取り換え可能かどうか確認してみましょう。
やけどをしてしまったときの応急処置は?
万が一、子どもがグリルに触りやけどをしてしまった場合は、すぐに水道水などのきれいな流水で冷やし、洗浄することが大切です。冷たい水をかけると痛がって子どもは泣くかもしれませんが、やけどの進行を防ぎ、痛みを抑えるためにも患部を冷やすことは必須。もし、水疱などができてしまったときは、なるべく破らないようにしてガーゼやタオルを当てて医療機関を受診してください。
『24時間365日子どもから目を離さないようにと常に緊張するより、事故を予防するために少しくらいは目を離しても大丈夫という製品選び・環境作りを行いましょう。これらは保護者の 努力だけでできることではなく、企業や行政を含めた社会全体で取り組む必要があると考えます』(西田佳史先生)
子どもが事故を起こしたとき、ママは子どもを見ていなかった自分を責めがち。しかし、西田先生がいうように、事故予防のためにも「事故を未然に防ぐための環境づくり」が大切です。今一度、自宅のこんろをチェックしてより安全な環境を整えましょう。
文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ