口を出すのは誰のため?子どものやるべきことは子どもに任せてみる #アドラー式子育て術から学ぶ
子どもがお風呂上りに服を着ない、いつまでたっても勉強をしない……そんなとき、「服を着なさい!」「勉強したの?」と子どもに逐一声をかけ、叱っていませんか? 子どもが思い通りに動かないとさらにイライラ……でも、それって本当に親が関与する問題なのでしょうか?
子どもが本来やるべきことすべてに口を出していると、親が忙しくなるだけでなく、子どもが自信を失ったり、依存的になったりするなどの弊害があると日本心理学会カウンセラーの岡山恵実さんは言います。『3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』の著者である岡山恵実さんと清野雅子さんに、アドラー心理学の考え方である「課題の分離」についてお話を伺いました。
子どもの問題に親が口を出しすぎると、さまざまな弊害がある
——「課題の分離」とはどういうものですか?
岡山さん:ある問題にどう取り組み、どう解決するか、その結末が誰の身に降りかかるか、課題を分けていく作業のことを「課題の分離」と言っています。子どものことに関して言えば、どんな友達と付き合うかは子どもの課題です。そして勉強についても、成績が良かった・悪かったという結末は子どもに降りかかるので、子どもの課題だとまず考えます。
例えば、服の好みがはっきりしている子どもが、着たいと言っている洋服を「その組み合わせは変よ」と変えさせようとしたり、宿題をしない子どもにイライラして、「早くしなさい!」と言いながら見ているテレビやゲームを消すというのも、子どもの課題に口を出していることになります。
子どもの課題だとしたものに親が口を出すと、いろいろな弊害があると考えています。例えば子どもが勉強しているとき、「難しいな」と言っているだけで「教えて」と頼まれてないのにどんどん口を出していくと、子どもは「自分はできないな」と自信を失ったり、難しいと言えばとお母さんが来ると思って依存的になったり、自分でやりたいと思っている子は「やろうと思ってたのに」「自分でできるのに」と反抗的になったり、お母さんがやっていた宿題がもし間違ってたいらお母さんが悪いと失敗を人のせいにしたりとさまざまな弊害があります。また、親は仕事や家事などやることがいっぱいあるのに、子どもの課題に口を出すと忙しくもなります。
親はつい先回りして子どもの課題に口を出したくなりますが、本来は子どもに自分で問題を解決してもらいたいし、失敗したり成功したりした結末から学んで成長してもらいたいので、何か問題が起きたときは「これは誰の課題かな?」と考えてみることが大切です。
子どもの課題は本来子どもが自分で解決しなければなりませんが、アドラー心理学に基づく育児プログラム「パセージ」では、3つの場合は共同の課題にできると言っています。子どもに頼まれたときや、親や誰かに迷惑がかかるとき、子どもが結末を体験すると子どもの人生に重大な悪影響がありそうなときです。こういうときは親子の共同の課題にして、親も手伝いましょうとおすすめしています。
子どもが自分の課題に取り組み、失敗。そんなときこそ勇気づけを
——例えば宿題は子どもの課題と考えて、「自分でできる」といった子どもに任せていたら、結局わからないところにつまづき、遅い時間に親に頼ってきたときはどう考えればいいのでしょうか?
清野さん:宿題を自分でできると思えるのは子どもの力なのでそこは素敵だと言えますよね。でもやってみたらやはりできなかったというのは、子どもが挑戦してみて失敗したということ。失敗したときこそ勇気づけが大切なんです。失敗からも学んでもらいたいから、まず親は落ち着いて、そこは子どもの話を聞いて手伝えることを考えていく。そしてこれから失敗しないためにはどうしたらいいのか話し合えますよね。こうした親の対応によって、子どもはきっと、「自分には能力がある」「親は仲間だ」と感じながら、自分で考え、次にどうしたらいいのか考えると思います。
——例えば、お風呂の後に服を着ないと言って走り回る子どもの場合は、もし風邪をひいて病院に連れて行くことになったら、結果的に親に関わってきます。
岡山さん:お風呂の後に服を着ない子どもも、洋服を着るか着ないかは子どもの課題ですが、そのあとどうするかは親子ごとに違ってくるんですよ。課題の分離をしたまま、いきなり全部を子どもの課題だと見なかったふりをするとか、何もしないのは何でもありの放任になってしまうから、まずは今までの対処をやめてみて、子どもがどうするか見ることもおすすめです。
お母さんが服を着せようと追いかけ回すのをやめてみたら着るかもしれないし、お母さんが怒るのをやめてニコニコして別のことをしていたら、自分に注目してくれないから着るか、となるかもしれません。子どもによっても対応が違うんです。親は服を着せたい、風邪ひいたら困る、裸では恥ずかしいなどいろんなことを思うんですけど、親が目先の対応をしている限り、子どもはずっとやり続けて、悪循環というスパイラルがずっと続いてしまいます。
清野さん:冬に服を着ないで風邪をひいたらそれも失敗ですよね。子どもが裸で走り回っていることが寒かったから風邪をひいたということに気がつけば、服を着ようねとお話しできると思うんです。その前にお母さんが怒って着なさいと言うと、お母さんが怖いから着るとか、お母さんは自分の仲間じゃないという信念が育ってしまうから(※こちらの記事参照)、失敗したときに子どもに問いかけて、自分で何か気づいたときには「いいことを学んだね」と一緒に喜びたいし、そして「次からどうする?」と子どもに暖かく問いかけることが大切です。場合によっては「わからない」ということもあるでしょうから、「こういうこともあると思う」と、その子にとってわかりやすく教えてあげればいいと思います。
『3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』
出版社: 小学館
定価:1404円(税込)
取材、文・山内ウェンディ 編集・横内みか