食品支援を行う文京区「こども宅食」プロジェクト。利用者の声からわかった生活や気持ちの変化とは?
文京区内の生活の厳しい子育て世帯に、企業や団体などから提供された食品などを2カ月に1回、平均8.4kgの食品を宅配する「こども宅食」。経済的支援が必要な家庭に対して、2017年10月から150世帯に配送してきましたが、2018年4月からは600世帯まで増やすなど広がりを見せています。実際に利用した人にはどのような変化があったのでしょうか。
食料を届けるのは手段。目的は利用者とつながりを深めること
2018年4月24日、「こども宅食」に関する成果報告と、利用家庭の実態調査に関する記者会見が行われました。登壇した文京区成澤区長は「食料を届けるのは手段であって、目的は利用者の方とつながりを深めること」と話します。困ったことが起きる前に、事前に情報をキャッチして相談機関を紹介するなどの働きかけを行ってきたといいます。同じく登壇したNPO法人フローレンス代表 駒崎氏によると「食品を届けた玄関先での会話やアンケートから課題が見えてきた」と話します。
実際に利用した人からは次のような声が届いています。
『先月ひとり親家庭となりました。2人の子どもを抱え、10年ぶりの復職に不安に募る日々でしたが、都会の真ん中でもこういった取り組みが行われているということに、心強さを感じることができました』
『配達の方が「何かお困りのことはありませんか?」と聞いてくださり、気にかけてくださる方がいると思うと、とても心強く嬉しい気持ちになりました』
1カ月に平均3710円節約。できることが増えた
アンケートによると、「こども宅食」を実際に利用している人は、半数以上がひとり親世帯。ほかにも三世帯同居や子どもが三人以上いる多子世帯、親が病気などの問題を抱えている人がいることも分かりました。また「こども宅食」を利用する前と比較して、1カ月に1家庭当たり約3710円節約できています。金額としてはそれほど多くはないかもしれませんが、できるようになったこともあるようです。
『以前はおやつや夕食をガマンさせることがあったが、今は少しだけできるようになった』
『かわいいノートや、流行の服を購入したことで笑顔が増え、学習意欲が増した』
『親と子で靴や服を共有していたが、サイズの合うものを購入した(上履きなどは小さいものを履いていた)』
「安心して生活できるようになった」など気持ちにも変化
「こども宅食」の支援を受ける前と受けたあと、気持ちに変化があったかという質問に対して、約半数の人が「気持ちが豊かになった」と答えています。ほかにも「社会とのつながりが感じられるようになった」「安心して生活できるようになった」という声が届いています。支援そのものもありがたいけど「誰も頼れない」という気持ちから「困ったら相談できる人がいる」という安心感など、気持ちに変化が出てきたのかもしれませんね。
「こどもたちの笑顔が返戻品」。ふるさと納税への呼びかけ
現在、活動運営費はふるさと納税によって集めていて、2017年度は8200万円を超える支援がありました。おかげで2018年は、2017年の150世帯を大幅に上回る600世帯への宅配を予定。「子どもたちの笑顔が返礼品と思い、引き続きふるさと納税への呼びかけをしていきたい。またこども宅食で提供する食品は、飲食品メーカー15社/団体が継続的に支援しているが、食品は主食となるお米が肝心。自治体によってはコメ余りという状況があると聞いている。捨てたり肥料にするなら寄付をお願いしたい」と呼びかけました。
佐賀市内で「こどもおなか一杯便プロジェクト」がスタート
2017年度に150世帯、2018年は600世帯を目標として、活動する「こども宅食」プロジェクト。自治体が活動に参加する文京区モデルを取り入れ、現在、佐賀市内でも「こどもおなか一杯便プロジェクト」がスタートしています。スタートしたばかりということもあり、あゆみはまだまだゆっくりですが、全国に広がっていくといいですね。
取材、文・長瀬由利子