中尾明慶:第2回 もし次があったら立ち合えないなと思います。僕は立ち合うのが怖い
ドラマ『奥様は、取り扱い注意』、映画『今夜、ロマンス劇場で』など、数多くのドラマや映画に出演されている、俳優・中尾明慶さん。現在は4歳の息子さんのパパです。
インスタグラムではパパとしての姿が注目されていますが、パパとなる前には、どんな準備をされてきたのでしょうか?
インタビュー2回目は、息子さんが誕生した時のお話を伺っていきます。立ち合い出産をされた中尾さん、そのとき感じた素直な気持ちとは?
パパになるとわかってから、ご自身なりに準備したことはありますか?
立ち合い出産を希望していたので、事前に病院で講習会を受けました。
「立ち合いのとき、お父さんはどっしりしていてください。『頑張って!』ではなく、『頑張ってるね』と声をかけてください」などと教えてもらうんです。あとは、お風呂の入れ方とかオムツの変え方とかも練習しました。最初はすごく難しかったですね。
育児雑誌や育児本を読んでみたこともあるんですが、読んでみても、正直ピンとこなかったです。お母さんは十月十日(とつきとおか)、赤ちゃんがお腹にいる期間にどんどんお母さんになっていきますよね。でも僕ら父親って、「父親になった」という意識は、子どもが生まれた瞬間に初めてスタートするんじゃないかと思うんです。
息子が生まれるときに感じたのは、お母さんのほうが十月十日ぶん先に行ってるなということ。父親である自分は、そういう意識がすごく遅れてるなと(笑)。
息子さんの出産に立ち合われたということですが、誕生の瞬間はどんな気持ちでしたか?
僕、号泣しました(笑)。実は泣くタイミングが早すぎて、生まれてくる前から号泣してたんです。
分娩中は助産師さんがずっといてくれて、もうすぐ生まれるぞというタイミングで院長先生が来られました。そして僕に「そこにある時計を僕の方に向けてくれる?」って言ったんです。生まれる時間を正確に確認するためですよね。
「あ、コレ、とうとう生まれるってことだ」と思ったら涙が止まらなくなって、フライングで感極まっちゃったんです。実際はそこから5分後に生まれたんですけど(笑)。
生まれた瞬間はものすごく感動したし、泣き声を聞いてさらに泣いてしまったんです。けっこう泣きましたね。あの感動は忘れられない経験です。
出産に立ち合う前と後では、出産へのイメージは変わりましたか?
変わりました。立ち合いを経験する前は、「母親は、命懸けで赤ちゃんを産むんだ」というのを聞いて、「命懸けって大袈裟だな……」という気持ちがどこかにあったんです。でも実際にその現場を見たら、本当に命懸けでした。
立ち合っている間、僕から見てると、本当に命が危ないんじゃないかと思う瞬間が何度もあったんですよ。でも、助産師さんに聞くと全然そんなことはないらしいんです。廊下で待っていた僕らの母親たちも「全然大丈夫だから」と言ってたけれど、その状況が初めての僕からすれば、「大丈夫」ということが理解できなかったんです。
あのとき泣いたのは、もちろん息子が生まれた感動もあったけど、妻が無事だったという安心感も大きかったですね。
ただもし次があったら、立ち合えないなと思います。僕は立ち合うのが怖い。それが、立ち合い出産をした僕の素直な感想かもしれないです。
生まれたばかりの息子さんを見たときの気持ちを教えてください。
息子が生まれた瞬間、妻が「あ、かわいい!」って言ったんですよ。僕にはその感覚がなくて驚いたんです。もちろん、存在としてはかわいいんだけど、見た目はほぼETと変わらないというか……(笑)。「ん? これがかわいいの? かわいいか?」みたいな。だいたいのお父さんはそう感じるんじゃないかなぁ。
見た瞬間に「あ、かわいい!」と言った彼女の言葉はすごく印象的でしたね。僕はどちらかというと、どう抱っこしていいのかわからないとかそういう気持ちだったと思います。
その息子さんも、今は4歳ですよね。
あっという間に4歳です。今思うとね、赤ちゃんのときをもっと大事にすればよかったという後悔はあります。
その当時は、赤ちゃんとの生活が本当にわからないし、夜泣きが辛いとか思ってたけど、大きくなった今グースカ寝ている息子を見ると「たまには夜泣きくらいしろよ……」とか思っちゃうんですよね(笑)。
あのなんとも言えない小ささとかね。たまに街とかで小さい赤ちゃんを見かけると「もう、この頃に戻ることはないんだな……」と思うことがある。どの瞬間もかけがえのないものなんだけど、赤ちゃんの頃をもっと大事にしておけばよかったなと思います。
「もし、次があったら立ち合い出産はできない」と話す中尾さんの言葉には、奥さまを大切に思う気持ちがあふれていました。次回は、中尾さんの子育てについてお話を伺います。お楽しみに。
取材、文・上原かほり 撮影・chiai