<弁護士に聞く!離婚>夫が離婚に応じない。別居後の居場所を知られず手続きを進められる?【第5回】
離婚したいのに、夫が話し合いに応じてくれない。子どもを連れて別居しても、離婚に向けての話が進まず、生活費についても不安が募るばかり……。夫と離婚について話し合えない場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。
ママからの質問
『数年前から離婚を検討していますが、夫から無視され続けています。夫は離婚の話し合いに応じないだけでなく、生活費も負担してくれないため、子どもを連れて別居しました。夫に転居後の住所を知られることなく、直接やり取りせずに離婚や生活費、財産分与の手続きを進めることはできますか?』
悩めるママに代わって編集部が、離婚問題に詳しいアディーレ法律事務所の2名の弁護士に聞きました。



アドバイスをくれたのは、離婚問題や慰謝料請求を扱い、自身もひとり親としての子育てを経験した正木裕美弁護士。養育費や財産分与などの離婚事件を年間60件以上担当する近藤姫美弁護士です。
別居したら、早い段階で婚姻費用を請求する
── 子どもを連れて別居したものの、夫が離婚に応じてくれない場合、まず何をすればよいですか?
近藤姫美弁護士(以下、近藤弁護士):まずは、別居したらすぐに婚姻費用を内容証明郵便で請求するか、婚姻費用の調停を申し立てて、別居中の生活費を確保してください。婚姻費用の支払いが認められるのは、原則として請求した月以降です。
たとえば4月に別居して、婚姻費用を請求したのが6月になった場合、4月分と5月分は支払いを受けられない可能性があります。そのため、できるだけ早く婚姻費用請求の手続きをしましょう。
養育費や財産分与の話し合いはどうしたらいい?
── 費用を請求したあとは、離婚や財産分与をどのように進めればよいでしょうか?
近藤弁護士:財産分与は、離婚の条件のなかで話すべきことです。離婚調停を申し立てれば、そのなかで親権・監護権、親子交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割について取り決めることができます。
離婚の条件は、どれかひとつだけを先に進めるのではなく、すべてを同時に進めることが多いです。ひとつずつ進めていたのでは時間がかかってしまうため、複数の離婚条件を並行してすり合わせ、相手と条件が合わない部分については裁判所で決めてもらうことになります。
離婚だけを先に成立させないほうがいい。そのワケは?
── 話し合いが進まず「離婚だけでも成立させたい」と思う人は、どうしたらいいですか?
近藤弁護士:離婚を先に成立させた場合、親権や養育費、財産分与などについて、それぞれ別に手続きをする必要があり、手続きが煩雑になります。
また、離婚するまでは婚姻費用として妻と子どもの生活費を請求できますが、離婚後は夫には妻を扶養する義務がなくなり、子どもの養育費に切り替わります。そのため、先に離婚だけを成立させることは避けたほうがいいでしょう。
夫の財産がわからない場合は?
── 財産分与をしたくても、夫がどこに財産を持っているのかわからない場合はどうすればいいですか?
近藤弁護士:裁判所の調停や裁判では、裁判所を通じて、銀行や保険会社などに財産情報の回答を求める「調査嘱託」という方法を利用できる場合があります。ただし、銀行口座を調べる場合には銀行名と支店名、保険の場合には保険会社名など、ある程度の情報が必要です。
そのため、同居中に夫が利用している銀行の名称や支店名、口座、加入している保険会社名などを控えておくことが大切です。
夫の財産について何もわからず、夫が任意に資料を開示してくれない場合は、財産の把握が難しくなります。そのため、同居中に財産について確認しておくことが大切です。
離婚調停では、夫と顔を合わせなくてもいい?
── 夫と顔を合わせたり、直接話したりするのが負担という人も多いと思います。調停では夫と会わなければいけませんか?
近藤弁護士:調停では、基本的に夫婦が同じ調停室に入ることはありません。夫婦がそれぞれ交代で調停室に入り、控室も別々です。帰り道で相手と遭遇しないよう、時間帯をずらして裁判所から呼び出されることもあります。
離婚調停では、離婚の可否や条件について話し合うことが中心となります。責任や謝罪に関する事情があれば、必要に応じて調停委員に伝えましょう。
養育費をいくらにするのか、財産分与をどうするのかといった条件を中心に話していくことになります。
夫との直接のやり取りを避けたい場合は?
── 夫と直接、電話やLINEをすること自体が負担という人もいると思います。その場合はどうでしょうか?
近藤弁護士:「離婚したい」という方のなかには、配偶者の顔を見たくない、話したくない、夫からの反論に自分で対応したくないという方がいます。離婚後も、元配偶者と事務的なやり取りを続けることを望まない方は少なくありません。
そのような場合は、配偶者とのやり取りを弁護士に任せることもできます。
一方で、弁護士に依頼しなくても、自分で離婚調停を申し立てることはできます。家庭裁判所のホームページに申立書のひな形があり、必要書類などをそろえて申し立てることができます。
夫に新しい住所を知られたくない場合は?
── 別居先の住所を夫に知られたくない場合は、どうすればよいでしょうか?
正木裕美弁護士(以下、正木弁護士):DVやモラハラがある場合は、相手と直接交渉せず、弁護士や配偶者暴力相談支援センターなどに相談してください。困ったときは、1人で抱え込まず、早めに専門家へご相談ください。
相手に住所を知られることで危険を感じる場合、自治体の「住民票の支援措置」を利用できることがあります。対象になると、相手から住民票や戸籍の附票などを請求されても、閲覧・交付を制限できる場合があります。また、離婚調停では、住所を相手に知られないよう、当事者間秘匿制度の利用や「非開示希望」を申し出る方法もあります。
弁護士費用が心配な場合は?
── 経済的な理由から、弁護士への相談をためらっている人も多いと思います。その場合の支援はありますか?
正木弁護士:無料相談を行っている法律事務所もあります。また、資力など一定の条件を満たせば、無料相談を利用できたり、弁護士費用の立て替え払いを受けられたりする、法テラスの民事法律扶助制度があります。まずは、利用できる制度がないか確認してみるとよいでしょう。
別居したら、まずやっておきたいこと
・別居したら、早めに婚姻費用を請求する
・夫婦だけで離婚の話し合いができなければ、離婚調停を検討する
・財産分与に備え、わかる範囲で夫の銀行口座や保険などの情報を確認しておく
・夫との直接のやり取りが負担なら、弁護士への相談を検討する
・住所を知られることに不安がある場合は、1人で判断せず専門機関に相談する
夫が離婚に応じない場合でも、夫婦だけで話し合いを続けなければならないわけではありません。まずは別居中の生活費を確保し、そのうえで離婚調停を利用しながら、養育費や財産分与などの条件を整理していきましょう。
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取材、文・長瀬由利子 編集・Natsu イラスト・藤森スズメ
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