<弁護士に聞く!離婚>養育費の未払い対策、公正証書を作れば安心?確実に受け取るために【第4回】

離婚するときに養育費について話し合っても、離婚後、本当に毎月払われるのか、途中で支払いが滞ってしまわないか、不安を感じることもあるでしょう。養育費の未払いに備えるためには、離婚前に何を決め、どのような形で残しておけばよいのでしょうか。
ママからの質問
『離婚を考えています。養育費は夫と話し合う予定ですが、離婚後もきちんと支払ってもらえるか不安です。養育費は、離婚前にどんなことを決めて、どのような形で記録を残しておけばよいのでしょうか?』
悩めるママに代わって編集部が、離婚問題に詳しいアディーレ法律事務所の3名の弁護士に聞きました。



アドバイスをくれたのは、離婚問題や慰謝料請求を扱い、自身もひとり親としての子育てを経験した正木裕美弁護士。養育費や財産分与などの離婚事件を年間60件以上担当する近藤姫美弁護士。養育費やひとり親を支える制度について幅広く相談に応じる大垣優希弁護士です。
養育費は、できるだけ離婚前に決めておく
── 養育費の未払いを防ぐために、まず何をしておくべきでしょうか?
正木裕美弁護士(以下、正木弁護士):確実な養育費確保のために最も大切なのは、離婚成立前に養育費を取り決めておくことです。
離婚後でも養育費を請求することはできますが、話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判が必要になり、時間がかかることも。できるだけ離婚前に取り決めておくことが大切です。
金額だけでなく、支払日や支払い方法まで決める
── 養育費について、具体的にどこまで決めておけばいいですか?
大垣優希弁護士(大垣弁護士):養育費の金額だけでなく、支払期間、支払日、支払方法なども具体的に決め、その内容を書面に残しておくことが重要です。
口約束だけでは、あとから認識のずれが生じるおそれがあります。最低限、父母で合意した内容を書面にしておくことが、将来のトラブル防止や未払い時の対応に役立ちます。
「公正証書を作れば安心」とは限らない!?
── 公正証書を作っておけば、未払いになっても夫の給与を差し押さえできますか?
近藤姫美弁護士(以下、近藤弁護士):公正証書で養育費を取り決め、強制執行認諾文言があり、養育費の支払いについて適切な内容が記載されていれば、未払いになった際に給与などを差し押さえることができます。
ただし、公正証書を作ったからといって、必ず強制執行できるわけではありません。
支払いが滞った場合に給与などの差し押さえを可能にする「強制執行認諾文言」が入っていない場合や、養育費の金額や支払期限があいまいな場合、未払い時でも給与差し押さえにつなげられない場合があります。
また、公証役場を通じて公正証書の正本などを相手に送達する手続きをしていない場合なども、差し押さえができないケースに当たります。
実際に、不備のある公正証書や、実情に合わない取り決めがされている公正証書を見たことがあります。公正証書に不備があり、改めて調停をしなければならなかったケースも。そのため「公正証書を作ったから安心」というわけではありません。
「調停」は養育費を決める選択肢のひとつ
── 養育費を離婚調停で取り決めるメリットは何ですか?
近藤弁護士:離婚調停で養育費を取り決め、調停が成立すると調停調書が作成されます。養育費の支払いについて適切な内容が記載されていれば、未払いになった場合、その調停調書に基づいて給与などを差し押さえることができます。
裁判所を通す手続きなので、強制執行できない内容になる可能性も低いでしょう。
「調停」にいい印象を持てず、「裁判所の手続き=大ごと」と感じる方もいるかもしれません。しかし調停自体は話し合いの場です。基本的には夫婦が別々に調停室へ入り、調停委員と話すため、相手と顔を合わせずに進めることができます。
日々、離婚調停を担当している弁護士としては、一般の方にも、もっと「調停」という選択肢があることを知ってもらいたいと思っています。
養育費が未払いになったら?
── 実際に養育費が支払われなくなった場合は、どうすればよいでしょうか?
正木弁護士:まずは相手に支払いを求めましょう。電話でも可能ですが、メールやLINEなど、記録が残る方法がよいでしょう。
それでも支払われない場合には、内容証明郵便で請求する方法があります。強制執行認諾文言付き公正証書や調停調書など、強制執行できる書面がある場合には、裁判所に申し立て、相手の給与や預金などを差し押さえて回収することができます。
近藤弁護士:養育費の未払いを理由に給与を差し押さえた場合には、元配偶者が勤務先を退職しない限り、その後の養育費についても勤務先から支払いを受けられる仕組みがあります。
公正証書がなくても差し押さえできるケースが拡大
── 2026年4月1日から、養育費が未払いになった場合の回収方法が変わったそうですね。
大垣弁護士:2026年4月1日以降に発生する養育費については、一定の要件を満たす文書がある場合、公正証書や調停調書などの債務名義がなくても、一定額を上限として差し押さえによる回収手続きを利用できる制度が設けられます。具体的な要件や上限額は、最新の法令や公的機関の案内をご確認ください。
離婚前にやっておきたいこと
・養育費の金額だけでなく、支払期間、支払日、支払方法まで決める
・口約束で終わらせず、合意した内容を記録に残す
・公正証書を作る場合、未払い時に強制執行できる内容になっているか確認する
・夫婦間での話し合いが難しい場合、離婚調停を検討する
養育費は、子どもの生活や成長を支えるためのお金です。支払いが止まった場合まで考えて、離婚前に準備しておきましょう。
取材、文・長瀬由利子 編集・Natsu イラスト・はなめがね
続きを読む(明日配信予定)
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