覚えておきたい!宿題の「10分ルール」とは
算数ドリルや漢字の書き取り、テストの見直し、教科書の音読や日記、作文……。宿題はもはや学校の「常識」です。おそらく多くの子どもたちは宿題を「仕方なく」「機械的」にこなしているのではないでしょうか。中には「宿題は断固拒否!」なんて子もいるかも。喜びに満ちあふれ目を輝かせて宿題に取り組む子なんて、めったにいないのでは?
自分の経験やわが子の様子を見て、「学校の宿題って何のためにやるの?」「本当に学習効果あるの?」という疑問を持っているママたちは少なくないと思います。
宿題は「必要悪」?
これまでの様々な調査研究によって、「小学生が宿題を多くこなしたからと言って成績が上がるわけではない」ということは、もはや多くの研究者や教育関係者が認めています。経済協力開発機構(OECD)や国際教育到達度評価学会(IEA)による国際比較でも、「成績が上位の国は宿題の量が少なく、むしろ下位の国の方が宿題を多く出している」ということが分かっています。
この3月に全米心理学会の学会誌に掲載された「宿題は必要悪か?」という小論文によると、宿題には、「責任感を持つ」「学習習慣を身につける」「時間管理ができる」など、テストの点数とは直接関係のない、人間形成の部分に効果があると言われています。実際、宿題をきちんとこなす子どもは、宿題をやってこない子どもよりも、さまざまな場面で自主性を発揮する傾向にあるそうです。
いっぽうで過大な宿題は、子どもたちにストレスを与え、スポーツや遊びに必要な時間を潰し、家族や周囲とのコミュニケーションの機会を奪うという「逆効果」になるというのも事実。
そのうえでこの論文は、
『学校の宿題は果たして必要悪なのか? もう何十年も議論されてきたが結論は出ない。ただ、「重要なのは宿題の質と、それにかける時間である」という点では、皆が一致している』
と述べています。
「宿題の10分ルール」とは
この論文でも紹介されていますが、アメリカの教育界では、「宿題の10分ルール」ということがよく言われます。これは教育研究の大御所であるデューク大学のハリス・クーパー教授はじめ全米教育協会、全米PTA団体も支持するもので、
『1年生が宿題にかける時間は1日10分程度が最適。学年が上がるにしたがって2年生は20分、3年生では30分…… と10分ずつ増加し、高校3年生では2時間程度が目安となる』
というものです。
言い換えれば、それ以上の時間をかけなければいけない宿題は「質が良くない」ということなのです。
子どもが学校の宿題に苦しんでいたり、何時間もかけて解いていたり、ぼーっとしていたり…… そんな時はこの「宿題の10分ルール」を少し思い出して、子どもが宿題にかけている時間と、その内容をもう一度チェックしてみてはどうでしょうか。
本当に量が多すぎることがあるかもしれません。また、同じような問題を何十問も繰り返して飽きているのかもしれません。集中すれば10分で終わるところを、何か他のことをしながらダラダラと続けているだけかもしれません。
明らかに量が多いなら担任の先生に相談してみることもできます(実際私も息子が4年生の時、相談しました!)。飽きてペースが落ちているようなら時間を決めて隣で計ってやるのも良いでしょう。ながら勉強でダラダラしているならば、集中できる環境を工夫してみましょう。
宿題の目的は「学力の向上」じゃない!
ところで、前述のクーパー教授が1987年から2003年にかけて実施した調査(*1)によると、宿題をこなすことで学力アップが期待できるのは高校生からであって、中学生でもそこそこの効果はあるが、小学生にいたってはほとんど効果がない、という結果が得られたそうです。
つまり逆に考えると、小学生の宿題は、学力アップを目指すものではなく、あくまでも「中学・高校へと進んだ時に、自力で家庭学習をする習慣が身についている」「自己管理がきちんとできている」ようにするための準備と捉えることができます。
そう考えれば、ママたちもこの「10分ルール」には納得できるのではないでしょうか?
いっそのこと「宿題なんか害悪だ! いっさい必要なし!」とばっさり極論してしまえば親も楽になるかもしれません。けれども宿題が「必要悪」である限りはそうもいかないというのが現実でしょう。
子どもの3年先、5年先の成長を見すえて、まずは「10分ルール」を目安に家庭でできる小さな一歩から! 宿題との戦いはまだまだ続きそうですね……。
文・はらじゅんこ イラスト・天城ヨリ子
(*1):Cooper, H., Robinson, J. C., & Patall, E. A. (2006). “Does homework improve academic achievement? A synthesis of research, 1987-2003.” Review of Educational Research, 76(1).