【お金のギモン解決!第2回】なぜ今の日本では給料がなかなか上がらないの?理由は……
前回からの続き。「ここ何年も給料がほとんど上がらない」そんな悲鳴にも近い声がニュースでも話題になっています。物価が上がる中では、給料が増えないと生活が苦しくなるばかりです。今回も「なかのアセットマネジメント」の代表を務める中野晴啓さんに「なぜ給料が上がらないのか」についてお聞きしました。
日本の平均給与は10年前とほとんど変わらない
――ニュースなどを見ると、ものの値段が上がるけれど、給料が上がらないという声も多いようです。
中野晴啓さん(以下、中野さん):国税庁が発表した「令和3年分 民間給与実態統計調査 」によると、平均給与は令和3年が443万円、10年前の平成23年は409万円です。たしかに10年間で劇的に上がっているとはいえない状況です。ちなみに、アメリカでは2000年からの20年間で約25%アップしていますから、それと比較しても日本の給料がいかに上がっていないかがわかりますね。
しかも今はインフレでものの値段が上がっています。給料が上がらないと当然、生活にシワ寄せがきます。
――それならば、給料を上げればよいと思うのですが……。
中野さん:経済的な面で見ると、給料だけを上げるのは難しいんです。ものの値段も給料も上がるというバランスが必要なんですね。でも、今はものの値段だけが上がっているじゃないかと感じる方も多いと思いますが、しっかりと儲かるくらい商品の値段を上げられている会社はそう多くありません。商品の値段を上げられる会社は、多くの人が買いたいと思っている商品を作っている会社、あるいは絶対になくなってはいけないものを作っている会社に限られてしまいます。
ものの値段を上げても売上がアップするような会社に勤務していれば、給料は上がっていくでしょう。しかし値段を上げると売上が下がってしまうような会社の場合、給料を上げると人件費が増えて倒産の危機に陥ってしまいます。倒産してしまったら、従業員の働く場所がなくなり、それこそ大きな問題になります。
――単純に給料を上げても、会社が倒産する確率も上がるかもしれないと……。
中野さん:給料を上げれば従業員にとってはメリットがありますが、それは一時的なことになりかねないということです。会社を守るのか、それとも従業員の生活を守るのか、この2つは表裏一体なのです。
給料をあげるために必要なこととは?
――では、どうすれば給料は健全に上がっていくのでしょうか?
中野さん:1つは値段を上げても売り上げがアップする会社に勤めることです。自分のスキルアップが実現すれば、それに見合った給料がもらえるでしょう。また新しい仕事にチャレンジして経験を積んだり、資格を取得したりする方法もあります。
もう1つは、社会全体の消費活動が活発になることです。私たちがものを買えば、その商品を作る会社の売上が増えるので、給料に反映されますからね。しかし現状は物価高の中で給料が上がらないため、消費活動も活性化されないわけですから、堂々巡りであるともいえます。
社会の構造にメスを入れるのは国の仕事です。今後、給料を上げるようなルールや政策を打ち出すこともあるでしょう。そうなると倒産してしまう企業も出てくる可能性はありますが、もしかしたら国はそのくらいの覚悟をもっているかもしれません。それほど今の日本の物価上昇と給料のバランスは歪んでいるということなのです。
(編集後記)
給料が上がるのは嬉しいことですが、企業の倒産や社会構造を考えると、そう簡単にできることではないということがよくわかりました。とはいえ余裕のある生活をするためには、個人でできることもありそうです。
次回はその方法の1つ「貯金」についてのお話をうかがいます。
文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・加藤みちか