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【お金のギモン解決!第1回】買い物に行くと「高っ!」食料品や日用品が値上がりを続ける理由は何?

中野晴啓さま1
買い物に行くと、以前よりも食料品や日用品の価格が上がっている! そう感じる人は多いのではないでしょうか。さらに生活を支える電気やガス、水道の料金の値上がりも家計を直撃しています。なぜこれほどまでに値段が上がってしまったのでしょうか。その理由について、経済に詳しい「なかのアセットマネジメント」代表・中野晴啓さんにお聞きしました。
中野様.prof

ものの値段が上がる「インフレ」は、本来は自然に起きること

――買い物でものの値段が上がったと感じるようになって久しいのですが、最初は何が原因だったのでしょうか?

中野晴啓さん(以下、中野さん):ものの値段が上がることを経済用語で「インフレ」というのですが、どのくらい上がっているのかは、総務省が発表する「消費者物価指数」から読み取れます。2023年9月の消費者物価指数は、前年同月と比べると3.0%の上昇となりました。つまり2022年9月に1,000円で買えたものが、2023年9月には1,030円になっているということです。

「インフレ」は、経済活動が活発になって消費が生まれていく中では、自然に起こることです。社会には需要と供給のバランス、それに伴った物価の動きがあります。需要と供給のバランスが保たれていれば、物価の動きはあまりありません。
しかし需要が増えると物価は上がります。見方を変えると、供給が減っても物価は上がります。ものをどんどん買う=需要が増えることなので、売る側も値段を上げられますよね。この状態で物価が上がるのは、経済的には問題がないんです。

ものの値段が上がり出したきっかけは、新型コロナウイルス感染症

――現在(※取材は2023年10月)のインフレも問題がないということでしょうか?

中野さん:今回は、本来のインフレとは意味合いが違います。事の始まりは、新型コロナウイルス感染症です。感染を防ぐために制限されていた旅行や会食などが、「5類感染症」への移行によって多くの人が外に出るようになりました。そうすると、お金を使うことになりますよね。これまで抑えられていた需要が一気に膨らんだので、売る側が値段を上げても買ってくれる状況、いわゆる「リベンジ消費」が起きました。リベンジ消費が落ち着けば物価は元の水準に戻るだろうと思われていたところ、2022年に起きたロシアのウクライナ侵攻がさらに影響してきました。物価は元に戻るどころか、さらに上昇することになってしまいました。

ロシアのウクライナ侵攻が物価上昇に拍車をかけた

――ウクライナ侵攻は物価にどのような影響があったのでしょうか?

中野さん:ロシアがウクライナに侵攻したことで、アメリカやヨーロッパの国々は経済制裁を加えました。ロシアからの輸入をやめて、ロシアをお金の面で苦しめようとしたんです。その経済制裁に日本も加わった結果、ロシアから天然ガスなどのエネルギーの輸入ができなくなりました。天然ガスは火力発電の燃料や、一般的な家庭で使う都市ガスに利用されています。その天然ガスを輸入できないとガスも電気もこれまでのような量を生産できません。供給が減ってしまった分エネルギー価格が上がり、特に電気代が影響を受けました。

ものを造る段階でも、多くの会社は電気を使います。電気代が上がった分商品の値段を上げざるをえません。もちろん、ほかにもいろいろな要因はありますが、インフレになった原因の1つは、ロシアとウクライナの戦争にあるといえるでしょう。

2023年の一時は1ドル=150円に!円安の影響も大きい

――ほかにもあるインフレの原因とはどんなことでしょうか??

中野さん:為替の影響も大きいんです。よくニュースで「1ドル=150円」などと聞くでしょう。1ドル買うのに昔は130円だったけれど、今は150円かかってしまう。つまり円の価値が下がるのが「円安」です。

エネルギーや食物などを輸入に頼る日本の場合、円安になるとその分輸入価格が上がってしまいます。たとえば、10ドルの商品を輸入する場合、1ドル130円なら1,300円ですが、1ドル150円なら1,500円になります。輸入価格が増えた分は、当然商品の価格に反映されます。輸入された商品もそうですが、輸入しているエネルギーにも為替の影響がありますね。日本はガソリンの元になる石油を輸入に頼っていますから、為替の影響を受けガソリンの価格も上がりました。もっといえば物流のコストも上がります。そういった細かいコストまでもが上がったので、結果的に日本全体の物価が上がったのです。

これからは個人がものを「選別」して買う時代に

――インフレは今後も続くのでしょうか?

中野さん:世界情勢によっては、さらに輸入がしづらくなったり、円安に進んだりするかもしれません。そうなるとものの値段は上がっていくでしょう。また日本の経済活動が活発になって、自然な形でインフレになる可能性もあります。たとえインフレであっても、生活をするためには消費をしなければなりません。

ここでちょっと視点を変えて考えていただきたいのは、消費者としてどのような商品を選び、購入していくのかという点です。おそらく消費者は、使いやすいなどの理由で気に入った商品は、多少値段が上がっても使っていくでしょう。ということは、インフレの社会では、多くの人に支持される商品を提供する会社が生き残るわけです。たとえば、おむつを製造販売している会社は、インフレの中でも多くのママさんの支持を得て売り上げを伸ばしています。他にも、洗濯機にポンと入れるだけの洗剤も支持を得ているようです。

インフレで個人のお財布の紐がきつくなったとしても、お金を出してもいいと思える商品は必ずあります。むしろ、それを選別していく時代になっていくと思いますよ。消費者としての考えや行動が試される時代になるかもしれませんね。

(編集後記)
中野さんのお話から、今回の物価上昇は、世界情勢が大きく関係していることがわかりました。今度も物価が上がる可能性はあるようです。物価の上昇は喜ばしいことではありませんが、だからこそ何を買うのかを賢く考える必要があるということでしょう。
次回は、生活を支える給料についてお話をうかがいます。

※本記事は2023年10月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第2回へ続く。

文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・加藤みちか

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