大人とは違う!? 知っておきたい、子どもの「聞こえ」と騒音・雑音の関係
私たち現代人は、毎日たくさんの「音」に囲まれて暮らしています。テレビやラジオ、音の出るおもちゃやテレビゲーム、電車や自動車、お店やレストランのBGM……。技術が進歩しモノが増えれば増えるほど、私たちを取り巻く「音」の種類や数は増えていく一方なのかもしれません。
何か特定の「音」をうるさく感じ不快に思うのは、私たち大人にとってはよくあることですよね。騒音や雑音はいったん気になり始めると、集中力を邪魔するし、イライラしたり不安な気持ちになったりと、精神的にもあまりよいものではありません。
いっぽう子どもの成長にとっては、騒音や雑音は、私たち大人が受けるのとはまた違った影響があるようです。
このほどアメリカの医療研究機関の最新の調査研究で、「雑音は大人よりも幼児に深刻な影響を与え、言語学習の妨げになる可能性がある」ということが明らかになりました。
雑音や騒音が、ことばの習得を邪魔する!
去年2月に全米科学振興協会(AAAS: the American Association for the Advancement of Science)で公表された「騒音や雑音が乳幼児に与える影響」の研究成果は、世界でも大きな話題となり、英デイリー・メイル紙や米ニューヨーク・タイムズ紙などでも報道されました。これは正確に言うと、子どもの聴力や聴覚の発達のことではなく、「ことばを覚える・理解する」という、言語の習得に関係するもののようです。
調査チームの実験によって「雑音の多い環境では、子どもは目標とする音声(会話の相手の声など)を識別しにくくなる」ということが判明しました。
これは特に年齢の低い乳幼児にはっきりしていて、相手の声も周囲の雑音と同じレベルの「ノイズ」として認識してしまうそう。絶え間ない雑音(機械音など)に長時間さらされてきた赤ちゃんは、ママの声に対しても反応が鈍くなってしまうというショッキングな結果も得られたそうです。
子どもと大人では「聞こえ方」が違う!?
また、私たち大人であれば、騒がしい場所などで話をしていて、相手の話に少しぐらい聞き取れない部分があったとしても、いちいち聞き返さないで、話の流れから推測したり、これまでの経験から自然に補ったりして、普通に会話を続けることができたりしますよね。実はこういった行動、あまりにも頻繁に日常的に行っているので、私たちは普段全く意識していません。
けれども、子どもはこれができません。ことばがまだまだ未熟な子どもは、聞き落とした部分を埋めることができないのです。実験では、本の読み聞かせ中に突然聞こえる車のクラクションや、咳・くしゃみといった程度の雑音でも、子どもの「聞こえ」は遮断され、話の内容が分からなくなってしまうということも、明らかになりました。
さらに覚えておきたいのは、これは乳幼児に限った問題ではないということ。騒音の中で目標の音声を聞き分けて理解する能力というのは、思春期を迎える頃になってようやく完成するものなのだそう。
このことは、学校の教室を設計する際などにもっと注目されるべきだ、と調査チームは指摘しています。教室の天井の高さ、床や壁の材質などが過度な反響や雑音などを生んで、子どもの「聞こえ」を妨げる可能性もあるからです。
毎日の生活で気を付けたいこととは?
調査チームはそんな研究成果をふまえて、子どもの「聞こえ」に関して、いくつかアドバイスをしてくれています。
1. テレビなどをつけっぱなしにしない
子どもの周りでは、テレビやラジオ、音の出るおもちゃなどをつけっぱなしにしないこと。静かな音楽が邪魔になるかについてははっきりとは分かっていませんが、少なくとも歌詞のある歌などはその可能性があります。
2. 話しかける時は目を見て
話しかける時は、子どもの目を見てはっきりと。特に周りが騒がしい場合は、子どもが自分の顔をちゃんと見ているか確認しましょう。口の形から言葉を推測する練習にもなります。
3. 言葉を選んで
もし子どもが言葉を理解できない様子でも、そのままうやむやにしないこと。より簡単な言葉に置き換えてもう一度試してみましょう。
4. 園や学校などでの「聞こえ」も確認
子どもが園や学校などで問題行動を繰り返すことがある場合、教室での授業や先生からの指示がきちんと聞こえているかどうかも確認してみましょう。
どれも、ちょっとした日常の気遣いや気付きで対処できそうですね!
騒音や雑音と言っても、全てを排除することは不可能ですし、そんなことをする必要もないでしょう。ただ、「子どもと大人では、雑音の中での聞こえ方が違う」ということは少し心に留めておく必要がありそうですね。
文・はらじゅん(キッズバレイ) イラスト・天城ヨリ子