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パパが育児休業をとる前に知っておきたい。産後ママの心身の変化とは?【前編】

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最近は、出産に臨むママだけではなく、パパも「育児休業制度」を取得する話を耳にする機会が増えましたが、みなさんの周りではいかがでしょうか? 「ママが助かるね」「夫婦で子育てできるね」などの声も聞かれる一方で、育児休業をとると決めたはいいけれど「休業中、自分は何をすればいいのだろう」と戸惑っているパパや、「パパに何をお願いしたらいいの?」と不安になっているママも多いのではないでしょうか。

そんなパパやママの不安を解消すべく開催された、NPO法人BSケア主催の「産後パパ 育休の過ごし方」オンラインセミナー。これから赤ちゃんを迎えるにあたり、育児休業を取ろうと考えているご夫婦を対象としたもので、育児休業中の過ごし方はもちろんのこと、産後に起こりやすい夫婦のすれ違いへの対処法などを具体的に学ぶことができます。今回のセミナーでは、産後のパパママをサポートする立場である助産師さんの参加も多く見られました。その一部を、みなさんにもご紹介させていただきます。
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「パパ、察してよ」は日本の文化!?

講師は助産師であり、NPO法人BSケア代表でもある寺田恵子さん。寺田さんの「”察して“は日本の文化。海外では察する文化ってないんですよ」という言葉からセミナーはスタートしました。言わなくてもわかってほしい、言わなくても動いてほしい。産前産後に限りませんが、パートナーに”察してよ”と期待してしまうことは多いですよね。

とくに出産という大仕事を終えたあとのママは、心身ともに疲弊しています。察してほしい気持ちが膨らむのも当然と言えるでしょう。でも相手が誰であれ、言葉にしないと伝わらないことは多いもの。パパだって初めてのことだらけ、未体験ゆえにママの気持ちが推し量れない部分もあるはずです。そんなパパとママのすれ違い、いったいどうやったら埋めることができるのでしょうか。

参加者さんたちの「育休中の過ごし方を知りたい!」という気持ちがはやるなか、まずはパパとママのすれ違いがどうして起こるのか、そのすれ違いをどう埋めていくのかという視点で講義が進みました。

「出産は命がけの行為」を実感しておく

まず見せてくださったのが、寺田さんが全国でおこなっている「いのちの授業」の動画。モデルさんが陣痛中のママを演じ、陣痛が来て苦しむ表情、痛みの波に思わず漏れるうめき声、自分が産みやすい姿勢へと体勢を変えていく様子などが事細かに再現されていました。最初は恐る恐る眺めていた参加者さんたちも、モデルさんの迫真の演技にどんどん引き込まれていきます。

演技だとはわかっていながらも、思わず前のめりになり、無事に生まれることを祈る参加者さんたち。赤ちゃん(お人形です)がママのお腹から出て来た瞬間には、わぁ! という言葉とともに、みなさんに安堵の表情が浮かびました。

しかし普段の私たちは、こうやって出産シーンを目の当たりにすることはありません。出産は大変なものだと認識していながらも、実際のところはどこか軽く考えてしまっているところもあるのではないでしょうか。大きくなるお腹や胎動を感じるなかで、ママの心の準備は進んでいくかもしれません。でもパパは……。だからこそ、命が無事に生まれてくるまでの緊迫感を知っておくのはとても大切なこと。

「母親は出産の際に腹をくくるが、それは命をかけると同じ行為」という寺田さんの言葉が胸に響きます。そんなのわかってるよ! と思うかもしれませんが、それを自分ごととして、あらためてパパとママが認識し合えるといいのかもしれませんね。

立ちあい出産は赤ちゃん誕生を待つだけのものではないと心得ておく

寺田さんからは「パパが立ちあい出産をするのは、赤ちゃんの誕生の瞬間を目にするためではありませんよ。ママの出産をサポートするという気持ちで臨んでください」というお言葉があります。ママと同じ目線で赤ちゃんが生まれてくる瞬間を待てる場所。そこがパパのポジションだよというお話もありましたよ。

「いのちの授業」のなかで印象的だったのが、「ママは自分で産みやすい体勢を選ぶ」という点。陣痛中のママは、まるで「あの世でもないこの世でもない意識の世界」を行き来しているのだそう。いずれも陣痛という痛みを乗り越えるために、自然と生まれる身体の反応なのだそうです。

パパが出産に立ちあうことを予定しているなら、こういった女性の体の仕組みのことも知っておけるといいですね。そうすれば、パパがどこに立っているとママは安心なのか、どんな声掛けをすればリラックスできるのかなどが見えてくるのではないでしょうか。お産の際のパパとママのすれ違いも最小限に抑えられるかもしれません。

さらに講義は産後のママの変化へと進みます。

産後ケアされるべきは赤ちゃんだけではないと考えておく

寺田さんは産後をこのように表現していました。「我を一時期、封印する時期」。生まれたての小さくはかない命を守るためには、ママは「自分(我)という存在を、一時期封印する必要がある」とのこと。

産後のママは感性が繊細になる

産後のママは、赤ちゃんを守ることに全身全霊をかける時期に突入します。実はこのときのママは、とてもセンシティブな状態。それはまるで「ママ自身も赤ちゃんになったような、そんな感性の状態」と寺田さんはおっしゃいます。

それくらい繊細に、あるいは敏感になるからこそ、赤ちゃんの要求を感じ取ることができ、子育てができるようになるのでしょう。同時に、産前ならコントロールできていた感情がうまく扱えなくなる時期でもあります。イライラしたり、不安になったり、悲しくなったり……。経験者のママなら、きっと身に覚えがある感覚ですよね。

ママだって大事にケアされるべき存在

赤ちゃんを守ろうとするあまり、周りの人に牙をむくような場面も出てくるそう。パートナーだけでなく、親や場合によっては上の子がその標的になってしまうこともあるようです。産後はそんな繊細な時期だからこそ、ママも赤ちゃんと同じように「守られケアされる必要がある」と、寺田さんはおっしゃいます。

「ママもケアされるべき存在」である。この視点を、パパをはじめ周囲の人が持つことは、産後の親子を支えるうえでとても重要なようです。もちろんパパだってわが子の誕生と、ママの急激な変化に戸惑っています。だからこそ育児休業をとっただけでは、ママに適切なサポートができるわけではないのです。そのためにはさまざまな準備が必要だということが少しずつ明確になってきました。

産後、離婚が頭をよぎるママたちへ

産後に起こる夫婦関係のすれ違いや離婚の危機も、こういったママの産後の心身の変化によって生まれているようです。

緊急でなければ、産後2~3年での離婚は待ったほうがいい

寺田さんのご経験によれば、産後2年以内での離婚がとても多いとのこと。ママの産後の変化にパパがついていけない。パパが思ったような寄り添いをしてくれなかった。離婚に至る理由はさまざまですが、出産の際にはあんなに仲良い夫婦だったのに……と思うこともしばしばあるようです。

しかし「個人的な見解ではありますが」と前置きしたうえで、「産後2~3年で離婚を決意するのは待ったほうがいい」とも寺田さんはおっしゃっていました。産後は、夫婦ともに大きな変化の真っただ中。夫婦のすれ違いが起きて当然の時期だとも言えるからです。もちろん双方が納得しての前向きな離婚なら、それもまた意味があることかもしれません。

子育ては一馬力よりも二馬力で

ただ産後まもない時期に母子だけの生活になることを考えたとき、やはり子育ては一馬力よりも二馬力のほうがいい。これは寺田さん自身が、離婚後に3人のお子さんを育ててこられた経験に基づくセリフです。産後、生計を立てながら子どもを育てるのは、並大抵のことではありません。優しく穏やかなママでいたくても、生計を立てるという責務を背負っての毎日はなかなかそうもいかないはず。もちろん離婚を決意することが簡単なことだとは思いませんが、その後の暮らしをしっかり考えて決断をという、寺田さんからの大切なメッセージを受け取りました。

産前産後、夫婦のすれ違いを解消する3つの解決策

妊娠中~出産~産後と、パパとママのすれ違いが起きやすい場面がこんなにもたくさんあるのですね。しかしそれぞれに具体的な解決策も見えてきました。

1.出産は命がけであることを改めて認識する。出産時の緊迫感を何らかの方法で知っておくことは大切。
2.立ちあい出産はママをサポートするため。パパの声掛けや立ち位置にも注意を払って。
3.産後のママは赤ちゃんと一緒。優しく守られケアされる環境づくりは必須。

すべてのすれ違いをなくすことはできなくても、事前に夫婦で学んでおくことで、すれ違いを少なくすることはできそうです。

さて後半では、いよいよパパが育児休業をとるときの心構えや具体的な過ごし方の提案についてご紹介します。

取材、文・Natsu 編集・しらたまよ 取材協力、監修・NPO法人 BSケア

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