<最高のママ友は元カノ>【第7話】「許せないから」衝撃の電話!旦那の友人たちが教えてくれた真実
前回からの続き。マサエとメグミはお互いの子どもの成長を見守り、ママ友として支え合ってきました。子どものことに関しての不安や悩みを話し合い、マサエにとってメグミは心強く確かな存在となっていました。そんな濃密な数年を過ごしてきたある日、マサエの夫ユウゴの学生時代の友だちがユウゴとメグミの過去の関係をマサエに突きつけたのです。
「メグミはユウゴの元カノよ」
チエコの言葉にマサエは血の気を失いました。電話先のチエコに必死で問いかけます。
「ユウゴの元カノって……まさか、そんな」
「昨日、旦那がお土産届けに行ったときに、すごく驚いたって言っていた。急いでユウゴくんに話を聞いた方がいいよ」
何かがおかしいと、マサエは思っていたのです。昨日の、ユウゴの友だちの訪問。わざわざ訪ねてきたのに、どうしてマサエに挨拶ひとつなかったのか。マサエは、腑に落ちた気がしました。
時は戻って、昨日の昼の話。
玄関のチャイムが鳴り、メグミがピザを受け取りに行きました。そのうちユウゴの耳に、聞き覚えのある声が届きました。
(タカシだ。まずい。メグミが家にいることを、知られてしまう)
タカシはユウゴの友人であり、メグミとも面識があり、付き合っていたことを知っています。ユウゴは慌てて玄関に向かいましたが、もう遅く、メグミとタカシはお互いの顔を見て、驚いていました。タカシが声を上げます。
「なんで、どうしてメグちゃんがお前の家にいるんだよ!」
「タカシ、ちょっと表出るぞ」
ユウゴは無理やりタカシを外に連れ出しました。玄関を出て角を曲がったところまで、タカシは黙ったままついていきます。雨が降ってきそうな天気。湿度の高い空気が体にまとわりつき、ユウゴの全身からすぐにじっとりとした汗が噴き出しました。
ユウゴは振り向くと、声を押し殺しながら言います。
「偶然、マサエとメグが知り合った。マサエがすごいメグのこと慕っていて、いつの間にか家族ぐるみで仲よくなった」
「だからってユウゴ、お前の元カノだぞ? おかしくないか?」
「メグと別れて、ずっとどうしているか気になっていたんだ。今はシングルマザーになって頑張って子どもを育てている。俺はメグにもう何もしてやれないけれど……そばで見守ることができるじゃないか」
「何だよ、それ」
「変にメグが元カノだっていって、せっかくメグを心のよりどころにしているマサエを傷つけたくない。だから、このことはマサエには言うつもりはないから黙っていてくれ」
「それ本気か? こんな状況、誰が見たっておかしいだろ? バレたときのマサエちゃんの気持ちを考えたことあるのか?」
「マサエのことを考えたからこそ、こうしているんだ」
「ダメだ……話になんねぇ。帰るわ。いいか、お前の言っている“マサエちゃんのため”はぜんぜん彼女のためじゃない。大事にするべきものの優先順位、間違っているんじゃねえの?」
そんなタカシの言葉にユウゴは何も言えず、ただただ頭を下げるばかり。
「マサエには言わないでくれ」
汗をボタボタと垂らすユウゴ。タカシは呆れたような顔をしてしばらくいましたが、黙ったまま去って行きました。
(助かった)
ユウゴはそう思ったのでした。
なぜだか寒い家の中で、マサエはスマホを握りしめています。電話の向こうで、タカシの妻・チエコがしゃべっていました。
「ユウゴから黙っていてと言われて、タカシは帰ってきたらしいの。タカシからは秘密にしておけと言われたけれど、私はその話を聞いて許せなくなった」
「…………」
「マサエちゃん、ごめんね。本来ならユウゴくんから聞くべき話なのに、私が言っちゃって。でも黙っていることはできなくて」
「ううん、大丈夫。聞けてよかった。ありがとう、チエコさん」
それだけ言ってマサエは電話を切りました。スマホの画面が泣き出しそうなマサエの顔を照らしています。その夜のことでした。息子が寝た後にリビングでテレビを観ているユウゴに、マサエは話しかけました。
「ねぇ、ちょっといい?」
「どうした?」
「メグちゃんがあなたの元カノだって……本当?」
マサエは旦那の顔を正面から見ました。ユウゴは驚いた顔をして目線を反らせます。沈黙は部屋中に広がりました。
【編集部のあとがき】
大学時代の友人タカシに、当時つき合っていた彼女が家に出入りしていることが知られてしまったユウゴ。妻のマサエには知られないよう、必死になります。けれどタカシの口は封じることができても、タカシの妻は黙っていられなかったようです。妻同士ですから。マサエに味方をしたい気持ちがあっても、おかしくないですよね。
文・編集部 編集・ここのえ イラスト・Ponko
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