<最高のママ友は元カノ>【第1話】知らない土地で孤独の子育て。限界になったときに出会った人は
38歳のマサエは家事と育児に奮闘する主婦です。一人息子の目がくりくりとしているところはマサエとそっくりでした。マサエは10年ほど前に結婚をして、旦那であるユウゴの地元の街に新居を構えました。2歳年上の旦那は背が高く優しい顔をしていて、家族のために懸命に仕事を頑張ってくれる人です。
子どもが産まれるとマサエの生活は、子ども中心に回るようになりました。結婚当初はあまり感じることはありませんでしたが、度重なる夜泣きや頻回授乳など子育てに悩むことが増えて、旦那の地元で育児をすることに「孤独」を感じるようになりました。旦那には幼い頃からの友だちがいるのに、マサエには知り合いもいないのです。実家は遠く、実母に気軽に相談することもできません。地元出身の旦那には慣れ親しんだ場所かもしれませんが、マサエにとっては完全なアウェイでした。旦那に相談しようとしても仕事でとても多忙だったためマサエはひとりに。どんどん孤独になっていきました。こんなはずじゃなかった……。望んで手に入れた結婚も出産も、すべてマイナスに捉えるようになりました。
悩みながらも、なんとか子育てに奮闘して、長男がヨチヨチ歩きをはじめるころには、家のすぐ近所にある児童公園に遊びに行くようになりました。公園ではママたちが楽しげに笑っています。
「けんちゃん、ゆかちゃん、お菓子食べる?」
「ありがとう! うちのおせんべいも食べて」
お菓子交換などをしながら、楽し気に会話するママ友グループを見るのも辛く、かといってその輪の中に入って行く勇気もありません。疎外感からだんだん日中の人の多い時間帯は避けて、なるべく人と会わない朝と夕に公園に遊びに行くようになりました。そんなときに出会ったのが、やはり一人で子どもを遊ばせているメグミでした。
色白の彼女は黒髪を一つに束ねています。最初は、たまに見かけるママくらいに思っていました。でも顔を合わせているうちに、挨拶をするようになり、少しずつ会話を交わすようになりました。メグミはマサエの息子と同い年の男の子のママであり、お互いに育児の悩み相談ができるよい相手でした。すぐに意気投合して、お互いの悩みや愚痴を交換するようになりました。
あるお天気の日には公園のベンチにマサエとメグミ、2人で座り、おしゃべりに花をさかせます。
「メグミさん、聞いて! 最近、息子の食事のあとの食べこぼしが酷くて。汚れた机周りや床を拭くたびに、私は何をやっているんだろって気持ちになるの……」
「わかる! うちも同じだよ。子どもが上手に食べられるための過程だってわかってはいるけど、こう毎日続くと“いつキレイに食べられるようになるの?”とか思っちゃうよね」
メグミの「わかる!」は魔法の言葉のよう。心につっかえていたものがスッと落ちる感じになるのです。マサエは話を続けました。
「この前なんか、ハンバーグ壁に投げられて……」
「悲惨! あれ? マサエさんは持ち家だっけ? 賃貸だっけ?」
「持ち家なの。もう壁にくっきりハンバーグの跡がついてしまって」
「それもいい想い出……にしたいね。ポスターとか貼ってごまかしちゃえば?」
「あーそれナイスアイディア!」
こうやってメグミと他愛もない会話をしている時間はとても温かく、マサエは元気をもらっていました。完全アウェイだと思っていた旦那の地元で、少しずつ自分の居場所を見つけられたような気がしていました。
【編集部のコメント】
日々、子どもと向き合う子育て。ママと子どもだけの空間で、大人との会話ができない状況に、孤独を感じてしまうママがいるかもしれません。ましてや「誰も知り合いがいない旦那の地元」での子育ては、マサエもより孤独や寂しさを感じたことでしょう。そのなかで出会った一人のママ友。マサエの心強い味方になりそうです。
文・編集部 編集・ここのえ イラスト・Ponko
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