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<旦那が行方不明>会社で怒られる毎日。家に帰れば完璧な妻にプレッシャー【第12話:旦那SIDE】

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前回からの続き。俺の名前はサトル。急に家から3人の子どもと出て行ってしまった妻のゆきを迎えに、今、北海道に来ている。妻の実家の前で待っていると、ゆきと子どもたちが出先から戻ってくるのが見えた。長男と次男が駆け寄ってきてくれる。ベビーカーのなかで、三男も元気そうだ。でも妻のゆきは、なんだか怒っているようで……。

俺が北海道へ妻と子どもを迎えに行く、少し前のことから話したい。

妻・ゆきとは中学の同級生だった。美人でクラスでもテキパキしたリーダータイプだった彼女と再会したのは、成人式のとき。とんとん拍子に結婚まで進み、3人の子どもにも恵まれた。3人目の子どもが生まれたとき、俺は27歳になっていた。妻は専業主婦になり、毎日家事に育児に頑張ってくれている。すべてうまくいっている―――。そう思っていたはずだった。

「バカヤロー! こんな単純なことを間違えてどうする!」

上司の悪態とともに、書類が自分に投げつけられる。

「申し訳ありません……」
「お前、新入社員からやり直せよ。この役立たず!!!」
「…………」

まただ……。情けないことにこんなことは日常茶飯事。一生懸命に頑張っても、毎日上司に叱られる。何がダメなのか……何を直せばいいのか分からない……。

仕事にやりがいを感じることができず、ただ上司の顔色を伺いながら、上司に怒られないために仕事をしている。そんなことばかり続く毎日。

辞めたい……こんな会社、辞めたい……。でも俺の両肩には、家族の人生が乗っている。簡単に仕事を辞めることはできないし、家族を養うために必死で会社にしがみつかなければならない。金のためと割り切る気持ちは必要だろう。

どんなに暴言を吐かれても、どんなに仕事が楽しくなくても、家族のために頑張らなくてはいけない……。

妻のゆきはスゴイ。年の近い男の子3人の育児なんて、ものすごく大変なはず。それなのにゆきはしっかり育児と向き合い、家事も完璧で、何事にもぬかりがない。夕食も俺の好みと健康を考えてくれた品々がテーブルいっぱいに並ぶ。

3人の子どもたちを抱きしめながら「幸せだね」とほほ笑む妻がまぶしくて、俺は「そうだな……」と言うのが精いっぱい。

毎日怒鳴られる夫と、完璧な妻。
次第に、妻の「幸せだね」には素直に同調できなくなってしまっていた。

仕事が終わって家に着くと、玄関のドアの前で立ちすくんでしまう。仕事がうまくいかなくなってから、玄関のドアを開けるのがしんどくなってしまった。このドアを開ければ、ニコニコ笑顔の妻が出迎えてくれる。元気な子どもたちもいる。部屋はキレイだし、食事も完璧だ。きっと俺の好物ばかりが並んでいるだろう。しかし。

胃袋を掴まれたはずの妻の料理が、「がんばれ」という無言の圧力に思えてしまう……。この家に帰宅すると……この妻が創り上げた完璧な家に帰宅すると、どうしてだろう? 家族からの「期待」に応えられていない自分がダメに思えて、息苦しく感じてしまうのだった。

(ちょっと頭を冷やしてから帰ろ……)

仕事が辛いなんて……仕事を辞めたいなんて、妻には言えない。ただでさえ3人の男の子の育児で大変なのに。いつも笑顔で頑張っている妻の前で、俺はちっぽけなプライドが邪魔をして、弱っている自分をさらけ出せずにいた。

公園によって、缶コーヒーを飲みながらボーっとするのが日課だ。少し寒いけど、頭を冷やすのにちょうどいい。深呼吸して、気持ちを整えてから帰宅する。それが最近の日課だった。

「アイツ……中学のときから完璧だったからな……」

<編集部コメント>
美味しいごはんを作って、元気な子どもと明るい笑顔で迎えることがパパにとって一番! そう考えるママもいるのではないでしょうか? でもそれが旦那さんであるサトルの重荷になっていたようです……。きちんとした妻にはきちんとした対応をと考えるサトルは、もしかしたら真面目過ぎるのかもしれません。それが故のプレッシャーで、現実から逃げ出したくなったのでしょうか。ママたちは、旦那さんのことをどれくらい知っていますか?

【第13話:旦那SIDE】に続く。

文・渡辺多絵 編集・編集部 イラスト・Ponko

※この漫画は体験者本人のご協力の元作成しています。

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