<旦那が行方不明>全く家に帰ってこなくなった旦那。私も消えてしまおうか【第7話】
前回からの続き。家に不在がちとなった旦那の携帯に、頻繁に「るみ」という女性から連絡が入るようになりました。意を決した私は彼女に電話をしましたが、のらりくらりとかわされてしまいます。そのことは旦那には言いませんでした。ある日、珍しく早い時間に旦那が帰ってきて、機嫌もいい様子です。以前のように家族で笑い合いながら晩ごはんを食べたのですが、その後旦那の姿が見当たらなくなったのです。
旦那がいない。もしかしたら、もう……。
持ち主に置き去りにされた寂しげな携帯を前にして、私は「積り積もった、嫌な予感が的中するのでは」と不安になりました。しかし私はすぐに旦那を探しに歩いたりはしませんでした。なぜなら夕食のとき、あのとき旦那が家族に向けた笑顔を信じたい。だから「ちょっと出かけているだけ。きっとすぐに帰ってくる」そう思ったのです。
しかしいつもなら無断外泊をしても必ず2~3日に1度は帰宅していたのに、今回は1週間経っても帰ってきません。旦那は自分の携帯を持たずにいなくなってしまったので、連絡の取りようがありません。いったいどこに行ってしまったの……?
悩んだ末、意を決して旦那の会社に連絡をしてみました。すると旦那の元上司から
「佐藤さん(旦那)は既に退社されていますよ? ご存じなかったんですか?」
そう聞かされたのです。
会社を辞めている……? 携帯も持っていない……。すっかり混乱してしまった私はあわてて義実家に連絡しました。「もしかしたら実家にいるのかもしれない」と思ったからです。しかし電話に出た義母から「いなくなったって、あなた……いったいどういうことなの? あなたがなにかしたんじゃないの? ちゃんとお金とか十分に渡してあげていたの? そうよ、息子がいなくなったのはあなたのせいよ!」そう一方的に責めたてられただけでした。
お義母さんの言う通りなの? やっぱり私がいけなかったの……? 思わず涙がこぼれそうになります。いや、だめ。泣いている暇なんてない! そう強く自分に言い聞かせて、急いで警察に向かいました。
「主人がいなくなったので、捜索願を出したいのですが」
別室に通され、一通り事情を説明したのですが、担当してくれた警察官からは「うーん……ご自分で出て行かれたんですよね? 警察としては事件性がない場合は、探すことができないんですよ……」
親身に話は聞いてくれるものの、捜査はしてくれそうにもありません。
「どこにいるか……本当に見当はつかないんですか……?」
私は答えることができませんでした。
警察署を出てからも「お巡りさんと話ができた!」と喜ぶ長男と次男の声を聞きながら、私は考えました。生きているか死んでいるかすらも分からない旦那。でももし生きているとすれば……きっとあの女のところに居るだろう。旦那は私と離婚して、あの女と一緒になるつもりなの……? ふと「離婚」の2文字が頭に浮かび、血の気が引くのを感じた私は、急いで子どもたちを連れて役所に行きました。勝手に離婚届を出されないように「離婚届不受理申出書」を出すためです。
届を出し終わると少し不安な気持ちが収まりました。これで私が納得できないままで旦那と別れることはない。
「さぁ、急いで帰らなくちゃ! もしかしたら、パパが帰ってきてるかもしれないし!」
ずっしりと重い三男を背中の抱っこ紐で感じながら、片手で長男の手を引き、次男の乗ったベビーカーを押して、私は小走りで帰路につきました。
「ただいま! …………っているはずないか」
そうやって「今日こそは……」「今日こそは……」と、毎日旦那の帰宅を願い続ける日々が過ぎ……。ある日ふと「もう旦那は戻ってこないんだろうな」そう心の底で覚悟をしはじめたのは、旦那がいなくなってから1ヶ月が過ぎようとしたころでした。
旦那が会社を、仕事を辞めてしまった以上、私は専業主婦なのでわが家には収入がありません。家賃も、子どもの幼稚園代も、食費すらも支払えない。夫婦で貯めた貯金を切り崩すのみでは、いずれ一家が路頭に迷うことは目に見えています。どうしよう……。どこにいるかも分からない旦那、先が見えない家計の負担、育ち盛りの幼い子どもが3人……。私と子どもたちを取り巻く状況に、ようやく思いを巡らすことができて、はじめて”断崖絶壁に立たされているような”気持ちになりました。私の足下には、落ちたらひとたまりもないような闇が待ち受けているのです。
なんで私ばっかりこんな目に合わないといけないの……?
ずっと頑張ってきたし、もう充分頑張ったじゃない……。
もう疲れた……。このまま子どもたちと一緒に、この「絶望」という崖から落ちてしまおうか……。
<編集部コメント>
パパはお金を稼ぎ、ママは家庭を守る……そんな風にママとパパとで協力して家庭を作り上げたゆき。突然、一方的に旦那さんであるサトルから放り出されて、傷つき打ちのめされてしまいます。まだまだ手のかかる3人の子どもを抱え途方に暮れたゆきは、サトルの会社や義実家からも思いがけない言葉を掛けられてしまいます。警察も動けない状況に、八方ふさがりになってしまったゆき。サトルが元気なのか何か事件事故に巻き込まれてしまったのか、そこのところがわからないと動きようもないのかもしれません。こんな追い詰められた状況に、ママたちならどう対処しますか?
文・渡辺多絵 編集・編集部 イラスト・もっちもちふっわふわ
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