「3歳児神話」を信じた夫と姑が私に「仕事を辞めて専業主婦になれ」と言う
ママスタさんから記事の執筆を依頼されました、斗比主閲子と申します。普段は、個人ブログで、身近なトラブルの対処法を解説しています。(斗比主閲子の姑日記)
ママスタセレクトでは、よくあるご近所トラブルや家庭内トラブルとその解決策を紹介していきます。
第2回目に紹介するのは「3歳児神話」となります。
3歳児神話とは
3歳児神話とは、子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念しないとその子の成長に悪影響があるという考え方です。神話という言葉が付いているように、必ずしも科学的に検証されているものではありません。科学的に検証されている部分は、子どもの3歳までの生育環境はその後の成長のために重要であるということぐらいでしょうか。
ただ、神話だけに信じている人はたくさんいます。そうして、これによって、今でも多くの母親が苦しめられています。
夫と姑が3歳児神話を信じていて仕事を辞めろと言う
そういう3歳児神話絡みのトラブルで、非常にいい例がママスタコミュニティにあると編集部さんに紹介されました。こちらです。
義母と旦那が3歳児神話を信じています。
でも、私が働かないと生活が苦しい状態です。
なんども話し合っていますが信条は曲がりません。
オムツ代も ままならないと言ったら布を使えと言われました。
そこまでの状態です。
最初は育休にしていましたが、3歳まで育休が取れない職場だったため、そのまま退職しました。
生活が苦しく、子どもに食べさせることも大変な状態でも母親は子どもが3歳を過ぎるまでは専業主婦で いた方が良いのでしょうか?
ちなみに、家事や育児が疎かになるという理由で内職も反対されています。また、旦那の会社は副業禁止です。
確かに、これはいい例ですね。典型的です。
3歳児神話絡みで苦しむのは基本的に母親です。母親が3歳まで育児に専念しないと子どもに悪影響があるということは、母親は3歳まで育児以外のことはできないということでもありますし、母親以外は育児に関わらないということにもなります。こうなると、この例のように、妻が仕事を半ば強制的に辞めさせられることになり、時には子育ての息抜きをすることも許されなくなります。
子どもの養育環境としてお金がないことも子どもがハンディキャップを負うことになりますから、ここまで経済的に追い詰められているなら、この相談者さんが言うように、夫婦共働きにした方がいい。しかし、姑と夫が強固に3歳児神話を信じているために、これが許されない。
3歳児神話をなぜ信じるのか
この相談のように、経済的に生活が成り立たないようなケースでも、3歳児神話を信奉している姑や夫が登場し、妻を専業主婦に仕立てあげることはよくあります。大体ですね、結婚相談所なんかで結婚相手を探す男性でも結構な数の人が「結婚した場合は女性には家に入って欲しい」なんていう条件を希望しています。男性の所得はここ20年で減少していて、昔のように男手一人で専業主婦と子どもにかかる費用を賄えなくなっているにも関わらず、この傾向は残っています。
では、どうして、3歳児神話を信じている男性が多いかといえば、一番分かりやすいシンプルな理由は、自分がそのように育て上げられたからです。今はバツイチの人も増えましたけど、ほとんどの人が結婚相手は一人目です。そして、自分の親も大体は一組しかいません。そうすると、どんな結婚生活をしてみたいかと言えば、他にケースを知らないから、自分の親をある種モデルケースとするわけです。
子どもが親を尊敬すること自体は悪いことではありませんから、親のような夫婦になりたいという気持ちも分からぬでもありません。ただ、親世代である50代~70代の世代の夫婦というのは、基本的に専業主婦モデルで家庭が出来上がっていました。女性が専業主婦になるという姿ですね。3歳までは妻が子育てをし、それ以降は幼稚園に入れさせる。これをモデルとすると、必然的に妻には家に入って欲しい、子育てに専念して欲しいということになります。そういう意味では、女性の方でも3歳児神話を信じる下地があります。
加えて、男性の場合は、「女を養うのが男の甲斐性」という思想と、「仕事が忙しいから子育てに関与できない」という日本企業特有の勤務形態が重なることがあり、3歳児神話がすんなり信じられるようになります。
3歳児神話の最大の信奉者は姑世代
夫になる男性は、専業主婦モデルの夫婦像を頭の中にイメージしてはいることがあるにせよ、実際、自分の所得がそれほど十分でないということも同時に理解しています。また、今時は夫も家事育児をするべきだというのは教育課程や政策的にもよく言われていることですので、まだ3歳児神話から目覚めさせることができないわけでもありません。
厄介なのが、この相談者さんのケースで言う姑です。50~70代の姑世代は、自分が子育てをしてきたことに自負があります。子育てが主業務だったわけですから、そのやり方にプライドがあるのは当然です。そして、自分の子どもに子どもが生まれれば、同じように女性が(苦労をして)子育てをするべきだという発想も持ちます。こういう考えになるのも分かりやすくて、一つは、それがこの世代の成功体験ということがあります。もう一つは、自分自信で自分の苦労を信じたい、自分がやってきたことは正しいと信じたいという気持ちがあることです。お腹を痛めて産んだ子どものほうが可愛いみたいなものですね。
結果、3歳児神話に限らず、自分の子育て方法を孫の子育て方法にも応用しようと、姑世代はやいのやいのとアドバイスをしてきます。時代が変わったことを受け入れられない。
3歳児神話を崩すのは親離れと夫の育児関与
こういう背景があるので、3歳児神話を突破しようとしたら、まずは、50~70代の祖父母の世代の子育て観から離れることです。自分たちの子どもができたタイミングで、夫婦として親離れを完結するということですね。もう二人の家庭ができたのだから、子どもをどう育てるかについても、夫婦で決めるのが基本にする。そして、夫ができるだけ育児に関与することです。妻だけではなく、仕事忙しさに子育てに関与できなければ、やはり妻に育児を任せることになってしまいますから。
この相談者さんのケースでは、まずは、夫をこちらの味方につけるように動くことです。3歳児神話を否定するより、「今はお父さんも育児に関わるみたいだよ。ほら、○○さんの家でもそうだし」と父親が育児に関与している事例を紹介するほうがいいですかね。
できれば、姑とは別に暮らしたいところですが、経済的事情もあり、夫婦共働きという状況にしようとしているわけですから、姑のことを持ち上げて「やっぱり、お義母さんは凄いなぁ!さすが夫君を育てただけある!!」と姑に育児に携わるように持っていくのが有効的だと思います。
終わりに
3歳児神話の良くないところは、母親を追い詰めるというのもあるのですが、シングルファザーによる子育てを否定しているところもあります。3歳児神話が絶対だったら、父親のみによって3歳まで育てられた子どもはまともに育たないという話になってしまいます。
確かに、乳幼児の子育てにおいて母親が果たす役割は非常に大きいですけどね。でも、それが絶対だとしてしまうと、母乳信仰と同じで、色々な価値観を許容しないことになります。それがどうしても選べないという状況はあるわけですから。
なお、3歳児神話などまだ想像もつかない、未婚の女性には、とりあえず、マザコンの気がある男性を結婚相手に選ばないことを推奨しておきます。あんまりこういうことは言いたくないんですけど、マザコンの夫は、姑とあなたの育児の方針が対立した時に、実母である姑の味方をします。味方だと思った夫が敵になるわけですね。恐ろしい。
文・斗比主閲子